6 ワガママな王子 ①
フラル王国の国王陛下は、シイちゃんのご機嫌な様子を見て、ハピパル王国に滞在している間は、シイちゃんを私たちに預けてくれると言ってくれた。
第二王子殿下の苦しみが長く続くことについては『反省していない息子が悪い』という言葉だけで片付けてしまった。
シイちゃんも『ワルイノハアイツ』と言うだけで、見捨てる気でいるようだ。
「腹痛は罰なんだろ? それなら、シイが許せばいいんじゃないのか?」
シイちゃんがこちらにいる間は、少しでも一緒にいる時間を増やそうと、家族でシイちゃんを囲んで話をしていた時、リディアスが言った。
シイちゃんはローテーブルの上に置かれている紙を使って答える。
『ハンセイシナイヤツハユルセナイ』
今回は代々続いてきた王家の血筋ではなく、新たな血筋になるため、余計に監視が必要なようだ。
「それならシイが誰に継がせるか決められたらいいのにな」
『ソレダトミリルニナルゲド、リディアスハイイノ?』
「良くない」
「フラル王国は女王は存在したことがないから、私の夫になる人が国王になっちゃうから、リディアスと別れなくちゃいけなくなるわ」
即答したリディアスを見て、私は苦笑したあと言った。
辺境伯家の跡継ぎであるリディアスを奪うわけにはいかない。シイちゃんと一緒にいたいけど、リディアスたちと離れたくない。
「ミリルが跡を継ぐなんて断固反対だ。別れるなんて選択肢はない」
「ありがとう、リディアス」
「リディアス、今回の件は別として、あまりミリルを束縛しちゃ駄目よ」
「わかっています」
お母様からの忠告に真剣な表情で頷いたリディアスを見て微笑んだ時、シイちゃんが転がり始めた。
『バカオウジガコノイエニムカッテキテル。ボウガイシヨウカ?』
「気持ちはありがたいが、そんなことをしたら、我々が第二王子殿下に会いたくないからシイに頼んだと思われる可能性があるから良くないんだ」
シイちゃんが『ワカッタ』と返事をすると、お父様は早馬を出してフラル王国の国王陛下に、このことを伝えるように指示をした。
第二王子殿下は一体、何をしに来るのかしら。腹痛が辛いから、シイちゃんを返せと言いに来ているのならどうしよう。
「大丈夫だって」
「……うん。ありがとう」
リディアスが手を握ってきたので私はその手を握り返した。
シイちゃんと再会したばかりなんだもの。国王陛下にも許可をもらったんだからすぐに返すのは嫌。
シイちゃんとの暮らしのためにも、ちょうどいい機会だし、反省してもらえるようにお声がけしてみましょう!
読んでくださり本当にありがとうございます。
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イラストがとても綺麗ですので手にとってやっていただけますと幸いです。




