51 第四王女は母国には戻らない ②
次の日の朝、日の出と共にシイちゃんが飛んできて、同じ部屋に眠っていたお母様までも起こして出発を急かしてきた。
私たちが向かう山は山越えができるように道が整備されていて、馬車も通れるので助かった。といっても山道であることは確かなため道が狭いので慎重に馬車を進めたため、山の上に着いた時には朝の十時前になっていた
頂上は展望台が作られていて、私たち家族はフラル王国の王城がよく見える位置に並んで立つ。
シイちゃんのおかげなのか、雲一つない良い天気でフラル王国の王城がはっきりと見えた。
王城は三本の塔がある五階建ての白亜色の城だ。城自体は綺麗だと思うけれど、中に住んでいる人のことを思うと嫌な気分になった。
護衛たちには私たちの話が聞こえない位置まで移動してもらい、シイちゃんをジュエリーボックスから取り出して尋ねる。
「シイちゃん、一体、何をするつもりなの?」
私が尋ねると、突然シイちゃんは眩しい光を放ち始めた。眩しくて目を閉じたあと、ゆっくりと目を開けてシイちゃんを見ると、光が消えて、いつもの白いシイちゃんに戻っていた。
「……どうなっているんだ?」
お父様の呟きが聞こえ、視線の先を追うと、フラル王国の王城の外壁が崩れ始めていくのがわかった。その様子を眺めながら、お兄様が困惑の声を上げる。
「フラル王国の王城の上に何かが大量に降ってきてないか?」
お兄様たちの視線の先を追うと、信じられない光景が目に飛び込んできた。
王城の周りに雨ではない何かが降っていて、それが外壁にぶつかり崩れ始めたのはなんとなくわかった。なぜそんなことになっているのかわからない。
こんなことができるのはシイちゃんくらいしかいないわよね。
「シイちゃん! 一体、何をしたの⁉」
私が尋ねると、シイちゃんは私の手の上でぴょんぴょんと飛び跳ねた。
答えるからいつもの紙を用意しろと言っているのだとわかり、持参していた文字が書かれた紙を広げ、シイちゃんをその上に置くと、こう答えた。
『フサワシクナイカラ、オイダスンダヨ。アイツラ二、シロハヒツヨウナイ。アンシンシテ。オウケノニンゲンイガイハ、キズツケナイカラ。ア、シロハ、ケッコウハカイシチャウケド』
その後、シイちゃんは無数の拳大の石を、フラル王国の王城に降らせているのだと教えてくれた。
私たち家族四人はシイちゃんと一緒に、フラル王国の王城がボロボロになっていくのを見守っていた。
ただ、見つめることしかできなかった私たちは、王城に石が降らなくなって少ししてから、シイちゃんに促され、馬車に乗って下山した。
一日かけて辺境伯家に戻った時には、エイブランからの報告が届いていた。城の被害状況と、この内容は他国にも同じものを送っているとも書かれていた。
城は半壊に近い状態らしく、王族がいた部屋や彼らが逃げるために通った場所は全て破壊されていた。石に攻撃され逃げ惑う王族たちは護衛たちに助けを求めたけれど、助けられないように石が護衛を足止めしていたらしい。
王族が王城から出たところで石の攻撃は止んだけれど、彼らがボロボロになった城に足を踏み入れようとすると、また石が降ってくるため、現在は宿屋で暮らしているとのことだった。
エイブランからの報告書にはフラル王国の王族は神の怒りを買ったのかもしれないという言葉で締めくくられていた。




