表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中・コミカライズ連載開始】捨てられた第四王女は母国には戻らない WEB版  作者: 風見ゆうみ
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/114

47 不幸の始まり(シエッタ視点)

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

この話はシエッタ視点になります。

「ああ、もう! あの男がいなかったら全て上手くいっていたはずなのに!」


 わたしはベッドの近くにある壁を枕で何度も叩いて叫んだ。

 森林公園で久しぶりにリディアス様たちと会った時、ノンクードが勝手にしたことにカッとなってしまって、リディアス様の前だというのにはしたない姿を見せてしまった。 

 嫌われてしまっていたらどうしよう。

 しかも、派手に転んだ時に歯が欠けてしまい、その歯を見たお姉様たちに馬鹿にされてしまった。この歯を治さないとリディアス様の所へ行けないわ。

 ただでさえ、ミーリルに出遅れているのに、これ以上、距離を置くことになってしまったら取り返しのつかないことになる。

 久しぶりに会ったミーリルは美人になっていた気がするし、もしかして、恋でもしているんじゃない?

 相手がリディアス様だったりしたら最悪だわ!

 鏡で自分の姿を確認してみる。プロポーションは悪くないし、顔だって美人だわ。リディアス様が私に振り向かないのは、きっとミーリルが私を不幸にさせているからよ!

 最近、王家の石の効力が弱まっているみたいだし、本当に嫌なことばかり! やっぱり半分の状態では力が発揮できないのね! 石から少し離れると体調が悪くなるのは相変わらずだし、また部屋に戻らなくちゃいけない。こんな生活はもううんざり。

 とっとと、ミーリルが帰ってきて、わたしたちの不幸を全部受け止めてくれたらいいのに!

 壁に向かって枕を放り投げた時、庭のほうからロブの怒る声が聞こえてきた。


「お前が石を半分なくさなければ、こんなことにならなかったんだ!」


 二階の窓から見下ろしてみると、ロブが私の侍女を叱責していた。あの侍女が私に付いていた時に石が半分に割れて、どこかへいってしまった。ロブは彼女のせいで自分たちが不幸になったと思っているみたいね。

 今は夜なので、勤務後に帰ろうとしている彼女を見つけて呼び止めたみたい。二人はちょうど外灯の下で話をしていたから表情は見えないけれど、動きはよく見えるし、静かなこともあり声もはっきりとわたしの耳に届いた。


「申し訳ございません! で、ですがわたくしはっ」

「うるさい! 口答えするな!」


 ロブが侍女の頬を叩いた時、突然、ロブの動きが止まったかと思うと、お腹を押さえながら地面に膝をついた。近くにいた騎士たちが彼に駆け寄り「しっかりしてください!」と声をかけている。

 一体、ロブに何が起こったの⁉ 侍女は殴られただけで、何かしているようには見えなかったわ。

 様子を見に行こうと廊下に出た時、お母様の悲鳴が聞こえた。


「大変! 大変だわ!」

「どうしてこんなことに⁉」


 困惑した様子のお父様の声も聞こえてきたので、急いで寝室に向かう。扉をノックしながら、扉の前にいた兵士たちと共に呼びかける。


「両陛下! 何かございましたか⁉」

「お父様、お母様! 一体何があったのです⁉」


 私の声が聞こえたからか、部屋の扉がゆっくりと開き、真っ青な顔をしたお父様が姿を現した。


「お父様! 悲鳴が聞こえてきたのですが、何があったのですか?」

「……シエッタ。中に入りなさい」

「は、はい」


 暗い表情のお父様に促されて部屋に入ると、お姉様たちは泣きそうな顔になって寄り添いあっていた。


「何があったんです?」


 三人でお父様に問いかけると、お父様はお母様に目を向けた。


 「どうしたら、どうしたら良いの⁉」


 泣き叫ぶお母様の視線の先には木目調のサイドテーブルがあり、その上には白い砂が山の形のように置かれている。


「……お母様、この砂はどうされたのですか?」

「石よ! 大事にしていた石! さっきまで石だったのに、突然、砂に変わってしまったのよ!」


 お姉様の質問に答えたお母様の顔は、夕食時に見た時よりも一気に老けており、まるで老婆のようになっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ