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【書籍発売中・コミカライズ連載開始】捨てられた第四王女は母国には戻らない WEB版  作者: 風見ゆうみ
第一部

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37 ミリルの考えた罠

「ミリル、何かよくわからないけれど、これだけお願いしているんだから助けてあげても良いんじゃない?」


 友人の一人から言われ、私はキララを見下ろしながら話す。


「どうしてもほしいと言うのであれば、コニファー先生に頼んで薬を作ってもらうわ」

「本当に⁉ ありがとう!」

「まだ話は終わっていないわよ」


 話は終わっていないと言っているのにキララは嬉しそうに顔を上げて、希望に満ちた目で私を見つめている。そんな彼女に私は冷たい口調で話を続ける。


「薬を渡す前に、あなたの正直な気持ちを、あなたの口から聞きたいの」

「私の正直な気持ち?」

「ええ。あなたのご両親から聞いた話よ」

「そ……それは……」

「ご両親が謝ってくれたから、私がもうあなたのことを許したと思ったの?」

「べ、別に大して悪いことはしていないわ! だから、そんなに怒らなくてもいいじゃない!」


 キララは立ち上がって訴える。


「それに、その話は今ここでする必要はないでしょう?」

「それはそうかもしれないけれど、話をする機会なんて、この機を逃したらないかもしれない」

「そ、そんなことはないわよ。病気が治れば学園に来るわ」


 他の人に自分の本心を聞かれたくないのか、キララは焦った顔をしている。


「あなたがノンクード様のことばかりではなく、私のことも大事に思ってくれているのならば、薬を迷うことなく渡したと思う。だけど、あなたはノンクード様への思いが大きくなって、私のことが嫌になったんでしょう!」

「や、やめて! 馬鹿なことを言わないで!」

 

 図星のようでキララは焦った顔をして叫んだ。


「あなたはノンクード様が幸せなら、私が不幸になってもいいと思っているんでしょう?」

「そ……そんなこと!」


 はっきり否定できないということは、評価するわけではないけれど、正直な性格なのかもしれない。

 その時予鈴が鳴ったので、私たちの会話はそこで途切れた。先生に知られては困るのか、キララは私を睨んだあと教室を出ていった。


「ミリル、一体、キララと何があったの?」


 心配そうな表情で尋ねてくる友人に答える。


「悪いけど、先にキララに確認してもらえる? それからでしか私は話したくない」


 キララが嘘をつくのか、もしくは本当のことを話すのか知りたかった。本当に自分が悪いと思っていないのであれば、きっと友人たちに話すでしょう。 

 友人たちはその日一日はキララの話をしなかった。そして、次の日の朝、友人二人は私のところにきて言った。


「昨日、彼女の家に行ってきたの。キララの言いたいことはわかるんだけど、私たちは納得できない。キララの言っていることが本当のことなら、ミリルが友人関係を切りたくなってもおかしくないと思う」

「ありがとう」


 キララがどんな話をしていたのか聞いてみると、ノンクード様のことや、ノンクード様絡みのことで私を悪く言っていたと話してくれた。友人たちはキララの意見には賛同できないと言い、縁を切っても良いのではとも言った。

 その言葉を聞いて勇気づけられた私は、考えていた話をキララに提案することにした。

 家に帰り、お父様たちに相談して許可を得たあと、私はキララに手紙を書いた。内容は薬を無償で渡しても良いが、学園を転校してもらうというものだ。

 すぐにキララからの返事がきて『転校するにはお金が必要だわ。その分のお金は出してもらえるのかしら。もしくは薬を多めにくれない? それを売って転校費用にするわ』というものだった。

 こうなることは予想していたので『薬を多めに渡すから、それ以降の追加請求はできないことを承諾し、二度と私の前に現れないということも約束してほしい』と送り返した。キララから承諾の手紙がきたので、お父様にお願いして正式に書類を作ってもらった。お互いが未成年だということで、お父様とエノウ伯爵で話を進めてもらうことになり、誓約書も作った。

 それと同時に、私はコニファー先生と一緒にキララに渡す分以上に多くの薬を作ることを開始した。辺境伯家の新しいビジネスとして、薬を販売することを決めたのだ。一度に大量生産することはできないけれど、欲している貴族の需要には間に合う程度の薬は確保できる。

 貴族は辺境伯家から直接買うほうが仲介業者から買うよりも格段に安く買える上に、よっぽどのことがあれば辺境伯家の保証も受けられる。そうなれば薬の値段は今までのものに戻り、キララに渡す薬はどんなに数が多くても、転校費用を賄うことも難しくなるはずだ。

 キララに薬を渡したと同時に、ビジネスを開始するから彼女が気づいた時にはもう遅い。

 そう考えていた時、お兄様が部屋にやってきて、お父様からの伝言を伝えてくれた。


「エノウ伯爵令嬢がノンクード様に会いにきたって連絡があった」

「今ってノンクード様はどうされているんだっけ。追い出されてから、もう十日以上経つわよね」


 ジーノス様は離婚を承諾しなかったけれど、公爵家から追い出された。彼女と一緒にノンクード様も出ていき、二人は現在、フラル王国で暮らしている。何をするかわからないので、ビサイズ公爵閣下が彼女に監視を付けているから、それで彼女たちの動きがわかるのだ。


「ノンクード様たちは金に困っているみたいだから、金が入ったら渡すとでも言いにいったのかもしれないな」

「薬を売っても大してもらえないのにね」


 ジーノス様たちは今、フラル王国にいる浮気相手の男性のところにいる。ジーノス様からお金をもらって裕福に暮らしていた男性だけど、お金が入ってこなくなった上に、ジーノス様とノンクード様が家に転がり込んできたものだから生活がかなり苦しいそうだ。

 きっと、ノンクード様たちはキララの話に飛びつくのでしょうね。


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