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【書籍発売中・コミカライズ連載開始】捨てられた第四王女は母国には戻らない WEB版  作者: 風見ゆうみ
第一部

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34 元親友の体調不良

 ソーマ様と話し合った次の日、学園に登校するとキララはしばらくの間、休むことになるかもしれないと先生から発表があった。 

 こんなことを言うと冷たい人間だと思われるかもしれないから口にはしないけれど、キララが学園に来なくなったことで、気持ちが楽になった。

 いつかはまた登校してくるとは思うけれど、日にちが経っていれば、今よりも冷静にキララへの対応がとれる気がしたのだ。


 薬を作って五日が経った頃には私の薬が効いて、ご主人が元気になったとコニファー先生から手紙が届いた。

 今回は粉状にするタイプの薬だったので、恐ろしい色合いの液体の薬にはならなかった。でも、液体の時と同じく口に含むとその人の好きな味になっているとのことだった。

 あまった薬を薬だと聞いて嫌がって飲まない子どもに飲ませると、美味しいと言ってとても喜んでくれたらしい。そのせいで同じ薬をほしいと言ってくる人もいるそうだけど、コニファー先生もどうしてこんな薬が作れたのかはわからないと言って、お断りしてくれている。

 その薬を作ったのは私だと知っているのは、コニファー先生とご主人、そして私の家族と屋敷の使用人や騎士だけなので、世間の人たちはコニファー先生が作ったと思い込んでいるらしい。私が作ったと知られないようにしてくれていることは本当に助かった。でも、コニファー先生と私がつながっていることを知っている人はいる。

 その中の一人にキララがいた。

 キララが学園に来なくなってから、十日が経った頃、キララから手紙が届いた。

 手紙にはゼカヨダ病という流行病にかかってしまい、高熱が続いている。あなたの薬学の先生であるコニファー先生が良い薬を作ると聞いたので分けてもらえないかという内容だった。

 キララは私が彼女と縁を切りたがっていることに気づいていないのかしら。それとも、気づいてはいるけれど、頼めば助けてくれると思っているの?

 そうだとしたらなんだか悔しい。

 助けを求めている人を助けないのは、ジャルヌ辺境伯家の人間としては、やってはいけないことだとわかっている。でも、ゼカヨダ病は重い病気ではなく、若い貴族の場合は症状が軽いことが多いし、体力があるから日にち薬でもある。本当に薬を必要としている人は他にたくさんいるから、コニファー先生にそんな話をすることはできないと伝えようか。

 そう考えた私は、キララにお断りの手紙を書いた。するとすぐに返事が届いた。苦しくて仕方がないから、何とかして手に入れてほしいと書かれていた。


『私たち、親友よね?』


 この言葉を見た時、胸がチクリと痛むと同時に怒りの感情が湧き上がった。

 もう、私たちは親友なんかじゃない。彼女の気持ちに気づけなかった私も悪いかもしれない。でも、親友だと言うのなら、ノンクード様や自分の都合を優先する前に相談してほしかった。

 返事をする気にもならなくて手紙を封筒の中に戻した時、お父様が部屋にやってきた。


「エノウ伯爵から娘を助けてほしいという連絡がきた。普通の薬は手に入るようだが、飲みやすい薬がほしいなど勝手なことを書いてきていた。断りの返事と一緒に先日のパーティーでなぜわざとミリルを一人にしようとしたのかの説明を求めるつもりだ」

「ありがとうございます」

「……それから、ジーノス様が動き出したようだ」

「一体、何をしようとしているんですか?」

「フラル王国の王家に手紙を出した。先日のパーティーの時から侍女のことを疑っているようで、自分で手紙の配達人にチップと一緒に手紙を渡したそうだ」


 ハピパル王国の国王陛下に相談したところ、国王陛下のほうからビサイズ公爵に『ジャルヌ辺境伯に協力するように』と伝えてくれているとのことだった。それで今回のジーノス様の動きがわかったそうだ。

 離婚理由を固いものにするために好き勝手させつつも監視はしているらしい。

 直接的なことは言っていないけれど、ビサイズ公爵はジーノス様の考えを知って、私がミーリルだということに気づいている。だけど、それには触れずにジーノス様の動きを報告してくれていた。


「それから、エノウ伯爵令嬢も気持ちを隠す気はなくなったようで、ノンクード様に手紙を送っているようだ。そのことをビサイズ公爵が彼女の婚約者の家に連絡を入れた」

「……ということは」

「婚約の解消を正式に決めたそうだ。エノウ伯爵家と近いうちに話し合いをすると言っている」

「そうなんですね。あと、ビサイズ公爵はノンクード様のことはどうするつもりなのでしょうか」 

「詳しくは聞いていないからわからないが、彼が希望するなら成人するまでは家に置いておくつもりだろう。でも、ノンクード様はジーノス様に付いていくと言うだろうな」

「……そうですか」


 たしか、ジーノス様のご両親は亡くなっていて、家督はお兄様が継いでいるはず。離婚されたらジーノス様は平民扱いになるから、フラル王国の王家と連絡を取ることは難しくなるでしょうね。

 でも、私がミーリルかもしれないということをフラル王国の王家は知ることになる。シイちゃんが邪魔をしていないということは、私がミーリルだと彼らに知らせて希望を持たせ、そこから落とすつもりかしら。


「フラル王国の王家宛の手紙には検閲がかかりますよね。ということは、ジーノス様が送った手紙の内容は誰かが読むのでしょうか」

「……そうだな。危険物が入っていないか調べるのは下っ端の人間だろうが、手紙の内容を読むのは陛下宛なら陛下の側近だろう」


 陛下の側近はエイブランと言っていたわね。私があの場所にいた時から、彼は国王陛下の側近だった。

 彼は私に連絡してくるだろうか。


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