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30 親友の裏切り ②

 廊下に出ると、キララがジーノス様の侍女らしき女性と話をしていた。


「何をしているの?」


 話しかけると、キララはびくりと体を震わせ、焦った顔をしてこちらを振り返った。


「廊下で待っていただけよ。ジーノス様の侍女が中に入ろうとするから止めていたの。プライバシーは重視してほしいでしょう?」

「ミリル様、わたくしは個室の中まで付いていくつもりはなく、メイク直しができる場所で待つつもりでしたが、この方に止められたのです」


 訴えてくる侍女に微笑みかける。


「別にあなたを責めているわけではありません。どうぞ中に入ってください」

「ありがとうございます」


 侍女は一礼すると、急いで中に入っていった。侍女の背中を見送り歩き出すと、キララが後をついてきたので尋ねる。


「廊下で待ってくれていることはおかしいことじゃないわ。でも、誰かが入ったなら中に戻って来てくれても良いんじゃない?」

「あなたはノンクード様と話をしたくないから、一人になるのが怖いと教えてくれたわよね。今日はノンクード様は来ていないから一人にしても大丈夫かなと思ったの。ビサイズ公爵夫人と二人きりになりたくないとは聞いていないわ」


 キララは不機嫌そうな顔をして言った。

 私の正体を知っている人は限られている。そして、キララには私の正体は伝えていない。だから、キララにはノンクード様と話をしたくないとしか伝えていない。ビサイズ公爵夫人が中に入っても気にならなかったというのはわからないでもない。

 彼女はノンクード様の母親ではあるが、ノンクード様本人じゃないものね。

 気になったのは、侍女を中に入らせようとしなかったことだ。侍女はきっと公爵閣下から私とジーノス様を接触させるな、もしくは二人きりにさせるなと命令されているはずだ。それなのに私とジーノス様が二人きりになったのは、キララが邪魔をしたからでしょう。

 ジーノス様とはどうせ話はしておきたかったし、二人きりになっても良いと言えば良かった。でも、キララが関係していることが気になる。

 以前、ノンクード様が教室で話しかけてきた時に、キララは私が彼と話したくないことをわかっていたのに私を置いて帰っていった。

 もしかして、キララは学園内でノンクード様とひそかに連絡を取り合っていたのかしら。だから、邪魔するなと言われて知らないふりをして帰ったとか?

 ノンクード様が学園に来なくなったのは私のせいだと思っているから、よそよそしい態度を取るようになったけど、今日、機嫌が良かったのはノンクード様に会えると思ったから?

 それとも、ノンクード様の役に立てると思った?


 聞いたら、話をしてくれるだろうか。そうだわ。それ以外にも聞いておきたいことがあった。


「ねえ、キララ。最近、ソーマ様の話を聞かないけれど、お元気にしているの?」


 キララの婚約者のソーマ様は今日のパーティーは欠席している。だから、こんな質問をしてもおかしくないはず。それなのに、キララは不機嫌そうな顔になって答える。


「別にあなたに関係ないでしょう」

「……そうね。関係ないわね」


 お兄様とソーマ様は仲が良い。こんなことはしたくないけれど、お兄様からソーマ様にキララとの仲を確認してもらいましょう。

 リボンの上からシイちゃんに触れてみると、特に警戒している様子はないから、今すぐにキララが私に何かしようとしているわけじゃないみたい。

 これからはキララとの付き合い方を考えないといけない。

 彼女のことを一番の友人だと思っていたから、この時の私は怒りよりもショックのほうが大きかった。




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