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22  怪しむ王家(シエッタ視点)

 突然の腹痛は嘘のようにおさまったけれど、大事があってはいけないということでジャルヌ辺境伯家の医者に診てもらうことになった。

 特に異常はなかったけれど、診察のあとは無理やり宿屋に帰らされた。

 ミリルさんと仲良くなって、リディアス様との橋渡しをお願いしようかと思ったけど無理だった。何のために行ったのかわからないわ。 

 あの二人の様子を見ていると、ミリルさんはリディアス様のことを頼りにしているようだけど、恋をしているようには見えなかった。だけど、リディアス様は……。

 ああ、本当に悔しい! なんであんな子が良いのよ!


「石も見つからないし、リディアス様とも上手くいかない! 本当についていないわ!」


 ベッドの上で叫んでいると、ロブが話しかけてくる。


「ミリルのことなんですけど、どうしてこの僕が婚約を申し込んであげたのに断るんでしょうか。理由がわかりません」


 ロブは部屋の出入り口の近くにある姿見で、自分の姿を見ながら続ける。


「自分で言うのもなんですが、僕の容姿は良いほうだと思うんですよ」


 ロブの言う通り、彼は可愛らしい顔立ちをしているし、体形も年齢のわりには高いし細身で、彼が通っている学園では非公認のファンクラブもあるという。


「悪いけど、あなたよりもリディアス様のほうが素敵だわ。ミリルさんは素敵な人を近くで見ているから、あなたの良さがわからないのよ」

「リディアスとかいう人は、そんなにカッコ良いですかね」


 ロブが鼻を鳴らすと、お姉様たちが食いついてくる。


「ねえ、シエッタ。あなたの好きな人、わたしの婚約者よりも素敵かしら」

「シエッタの好きな人よりも、わたくしの婚約者のほうが素敵に決まっていますわ」

「何よ! わたしの婚約者のほうが素敵よ」


 喧嘩を始めたお姉様たちを無視して、ロブに話しかける。


「あなたはミリルさんのことをどう思ったの?」

「ミーリルの面影はあるのかもと思いましたが、可愛らしい顔立ちでしたし、ミーリルではないでしょう。僕の知っているミーリルは不健康そうでブサイクですから」

「そうね。わたしの知っているミーリルも暗い顔をしているか、病気で苦しそうな顔をしていて顔は可愛くなかったわ」


 ミリルさんがミーリルかと疑ったりもしたけど、わたしが知っているあの子は、かなり病弱だった。そんな子があんなに元気に成長できるはずかないわ。

 ミーリルはどこにいるのかしら。お父様とお母様はわたしの婿選びなんてそっちのけで、ミーリルを捜している。

 石が割れてからは余計にだ。

 半分になってしまったけど、まだ石はある。だから、そんなに焦らなくてもいいはずなのに。

 ため息を吐くと、ロブも大きなため息を吐く。


「もう少しで帰らないといけませんし、どうにかしたいものですね」

「でも、わたしもあなたも短期間で上手くいくとは思えないわ」

「……そういえば、姉上」

「どうしたの?」

「姉上に夢中になっている男性がいるんですよね?」


 わたしに夢中になっている男性は多すぎて数えたこともないくらいだ。


「誰のことを言っているの?」

「ほら、公爵令息ですよ。役に立たないって文句を言っていた」

「……ああ、ミリルさんに婚約破棄された男性ね」


 ノンクードとか言ったかしら。わたしが学園で腹痛を起こした時、医務室に連れていってくれたのよね。そういえば、彼にお礼を言ってなかった気がするわ。お礼をするついでにミリルさんをどうにかできないか相談してみようかしら。

 このまま、リディアス様とサヨナラなんかしたくない。彼はわたしが絶対に手に入れるんだから。どんな手だって使ってやるわ。

 そう思ったわたしは早速、ノンクードに連絡を取ることにした。

 筆を執ろうとした時、出かけていたお父様とお母様が帰ってきた。二人とも疲れ切った顔をしていたけれど、今日の話を知りたがったので、収穫はなかったことと、また腹痛に襲われたことを話した。

 すると、お父様とお母様は顔を見合わせる。


「どうかしましたか?」


 尋ねると、お父様は難しい顔をして言う。


「……ミリルという女に会わなければならない」

「お父様が? どうしてですか?」

「その女と会う度に腹痛が起きるのだろう? 怪しすぎる」

「そうね。わたしも会ってみたいわ」


 頷いたお母様に尋ねる。


「会ってみて、ミーリルかどうかわかるのですか?」

「ええ。だってわたしはミーリルを生んだんだもの。わからないわけがないわ」


 お母様は胸に手を当てて、自信ありげな様子で答えた。



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