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19  王家の石 ③

読んでいただきありがとうございます!

このお話は途中からメイド視点に切り替わります。

 家に帰ってすぐにロブ殿下との話をお父様にすると、すぐにハピパル王国の王家に連絡をとってもらえることになった。

 私が婚約の申し出を拒否した場合はお兄様の時と同じで、王家側から断ってもらえることになりそうだ。

夕食後、お母様に呼ばれたので部屋に行くと、寝間着姿のお母様が待っていた。明日は学園が休みなので「今日は一晩話しましょう」と言われ、私はすぐに頷いた。

 まず、話題に上がったのは、私はどんな人が好きかということ。

 十五歳にもなって、誰かを好きになるなんて考えたことがなかった。私にとって、お兄様が一番近い異性だったから、それ以上に素敵だと思える人がいなかったというのもある。

 その話をすると、お母様は言った。


「リディアスのことを素敵だとは思うけど、異性として好きというわけではないのね?」

「意識したことがないからわからないんです。でも、養子縁組を解消して、お兄様の婚約者になったあとに、やっぱり妹の時のほうが良かったって言われることが怖いんです」


 心の距離が離れるくらいなら妹のままでいたいという話をすると、お母様は微笑む。


「あなたが決めることだから、私の話は参考程度に聞いてほしいんだけど、あなたの知っているリディアスは簡単に人を好きになって、簡単に人を嫌うような人かしら」

「そんな人ではないことはわかっているんです。だからこそ、お兄様に他に好きな人ができたり、私のことを嫌いになったりしても、私の気持ちを気にして言えないんじゃないかって思うんです」

「嫌いになることはないと思うけれど、好きな人ができたら言うと思うわよ」

「……どうしてですか?」

「だって、あの子はシスコンと噂されるほど、あなたに夢中なのよ。黙っていたら、あなたを傷つけることくらいわかるわ。あなたに悲しい思いをさせるような子じゃない。好きな人ができたら打ち明けると思うわ」


 お母様に言われて、納得できた部分もあった。

 そうよね。お兄様は一番に私のことを考えてくれる人だもの。


「もう一度、考えてみることにします」

「ミリル、あなたやっぱりリディアスの気持ちに気づいているのね」


 クスクス笑うお母様に、私は慌ててしまう。


「えっ⁉ あ、その、あの、自分で気づいたわけじゃなくて、その、キララに言われて……」

「そうだったの。まあ、あんな様子じゃすぐにわかるわよね」


 コニファー先生や、シロウズたちも知ってます。……と言おうとしたところで、ふと、以前のお父様の反応を思い出した。


「そういえば、お父様は気づくのが遅かったんじゃないんですか?」

「あの二人は親子だもの。恋愛に不器用で鈍いところは似ているわ」


 まるで経験談みたいだけど、お父様もお兄様と同じような愛情表現で、お母様と仲良くなったのかしら。

 興味が湧いてきた私は、お父様とお母様の馴れ初め話を教えてもらうことにした。お母様との話は夜中まで続き、この日は久しぶりにお母様と一緒に眠った。

 そして次の日、シイちゃんをどこで磨いてもらうか、お父様に相談してみたところ、良い業者を知っているというので、早速、家に呼んでもらえることになったのだった。


◇◆◇◆◇◆


 本当に散々な目にあったわ! シエッタ殿下の我儘に付き合って、他国まで来た上に泥棒と疑われるなんて最悪!

 シエッタ殿下がピンク色の布の袋を大事にしていたのは知っていた。どうやら、その袋の中身がなくなったらしく、私が盗んだと言ってきたのだから失礼な話だわ。

 中身は何かと聞いたら白い石で、特に高価なものじゃないと言う。 

 高価なものでないのなら、泥棒だって盗んだりしないんじゃないかしら。

 しかも、私を泥棒と疑って、あの石を売りにいこうとするんじゃないかと、三日も監視するんだから馬鹿じゃないの。

 苛立つ気持ちを抑えながら、私は学園内にある事務室に向かった。

 今日は授業はないが、事務室は午前中の間は人がいると聞いたからだ。

 絶対に馬鹿にされるだろうと思いながら「石を探しているんですけど」と言うと、事務員は驚いた顔をして「少し前に拾ったと報告がありました」と教えてくれた。


「その石は今どこにあるんですか⁉」

「申し訳ございませんが、個人情報ですのでお教えすることはできません。拾得物を預かっている施設がありますので、そちらに相談していただけますか」


 そう言われた私は、教えてもらった拾得物預かり所に行って事情を説明した。すると、届け出はあったが保管期限が過ぎていて、拾い主に渡したと言う。

 石を拾う人なんて珍しいと思ったけれど、その石をもらう人なんているのね!

 シエッタ殿下たちが自分たちで何とかしようとせずに、もっと早くに失くしたと言ってくれていれば、もう石は手元に戻って来ていたのに!

 宿屋に戻り、シエッタ殿下にそのことを報告すると彼女は憤怒の形相で叫ぶ。


「誰が持って行ったか調べなさい!」

「で、ですが、個人情報だと言って教えてくれないんです」

「本当に役に立たないわね! それは王家の力で何とかしてみせるわ! 誰かわかったら、その人の所に行って、その石を取り返してきなさい!」

「あの……、私は石を見たことがありません。ですから、その石がシエッタ殿下が探しているものなのかどうかがわからないのですが……」 


 シエッタ殿下は鼻を鳴らすと、小袋を見せて言う。


「この袋の中に入っている石の断面とぴったり合う石を探しているの。相手がわかったら、あなたに貸してあげるわ。それで調べなさい。もし、違っていたら、あなたをまた疑うからね!」


 シエッタ殿下はそう言うと、自分たちの客室の中に入っていった。 

 ああ、もう嫌だ。一緒に来ている両陛下もご姉弟も、ずっと部屋でゴロゴロしているだけ。付いてきた兵士もメイドも内心うんざりしている。

 国に帰ったら新しい仕事を探そう。こんな王女様の世話なんてやっていられないわ!

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