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12  婚約者の暴走 ③

「先日、シエッタ殿下から婚約の申し込みがあったことを、ハピパル王国の国王陛下に早馬を使って手紙で相談していたんです。その返事がきまして、シエッタ殿下たちが強制的に婚約させようとしても、ハピパル王国の国王陛下の権限でそれを拒否できるとのことです」


 ハピパル王国の両陛下は、私を捨てたことに怒っていたし、元姉たちからの仕打ちも聞いている。お兄様と結婚させるなんてありえないと思ってくれているみたい。

 本当にありがたいわ。

 感謝していると、ノンクード様はお兄様を睨みつけながら呟く。


「どうしてだよ」

「……何ですか?」

「どうして、シエッタ殿下の良さがわからないんですか!」


 ノンクード様が叫ぶと、お兄様はため息を吐いて答える。


「わかるわけがないでしょう。俺はミリルのような子が好きなんです」


 私のような子⁉

 驚いてお兄様を見つめたけれど、こちらを見ようとはしない。


「なんだと⁉ このクソシスコン兄めが! 絶対に後悔するぞ!」


 ノンクード様は暴言を吐くと、テーブルを蹴り上げて部屋から出て行った。

 クソシスコン兄なんて酷くない? 兄が妹を可愛がることって悪いことじゃないと思うんだけど!


「後悔するのはお前だよ」


 呆れた顔で言うお兄様に頭を下げる。


「あの……、お兄様、助けてくれてありがとうございます。私、お兄様に迷惑をかけてばかりだわ」

「兄が妹を守るのは当然のことなんだから気にするな」

「……でも、このままじゃ駄目よね」


 守られることが当たり前と思っては駄目。二度とこんなことにならないようにしなくちゃ。

 それにしても、どうしてノンクード様はあそこまでお姉様に心酔しているの? あんなにもお姉様のことが好きなのに、私との婚約を解消してくれない意味もわからないわ。


「一体、何があったんだ?」


 お兄様に尋ねられ、私は先ほど起こった出来事をすべてお兄様に話した。 

 話を聞いたお兄様は、すぐに私をお父様の所へ連れて行った。話を聞いたお父様は、ビサイズ公爵閣下に連絡を入れると言ってくれた。もし、ノンクード様が暴力をふるったことを否定したとしても、状況証拠を伝えれば、ビサイズ公爵閣下はわかってくれるだろうとも言っていた。

 無事に婚約を解消、もしくは破棄できるということは喜ばしいことだし、私の心も軽くなった。それと同時に、お兄様の機嫌が少し良くなった。

 私に暴力をふるったノンクード様のことを今からでも殺しに行くんじゃないかと思うくらいに怒っていたのに、婚約が解消できるとわかると、機嫌が良くなるんだから本当にシスコンだなあと思う。

 妹としては、そんな風に大事に思ってくれて嬉しい気持ちと、新たな婚約者が見つかるのかという不安な気持ちも湧いてきた。

 ノンクード様の来訪をお父様たちに知らせようとしなかったメイドは、彼にお金をもらって協力していたとわかり、その日のうちに解雇となった。

 今は学園が長期休みに入っていて、友人にノンクード様の話をしたくても、連絡して事前に約束しなければならない。

 手紙を書こうかと迷っていると、向こうから連絡がきた。急だけど、明日はどうかと書かれていたので、予定のなかった私はすぐに承諾の返事をした。

 次の日、待ち合わせをしたカフェで友人の伯爵令嬢であるキララ・エノウは、私の話を聞いて、お兄様の私への可愛がり方は異常だと言った。


「あなたたちの場合は血がつながっていないから、シスコンという言葉では片付けられないと思うわ」

「どういうこと?」

「リディアス様はあなたのことを異性として見ているんじゃないかということ」

「そ、そんな……。お兄様が私を好きだなんてないわ。優しいけど、あれは恋愛というよりも家族愛だもの」

「それは、あなたがそう思っているからよ。あのね、あなたたちは結婚しようと思えばできるのよ。養子縁組を解消すれば、あなたたちは他人になるんだから」


 私が養女だということは、みんなが知っている。もしかして、他の人はお兄様が私を異性として好きだと思っているから、婚約者が見つからないの?


「わ、私、お兄様のためにも独り立ちするわ!」

「……無理だと思うわ」

「どうして⁉」

「ミリル、あなた、私に連絡しようとしていたと手紙に書いてくれていたわよね?」

「う……うん」

「私がどうしてタイミング良く連絡したと思う?」


 キララはお茶を一口飲んで、私を見つめた。


「も、もしかして、お兄様が?」

「私の婚約者のソーマとリディアス様は仲が良いでしょう? ソーマのほうに、私にミリルに連絡しやってほしいって連絡があったのよ」

「ご、ごめんなさい。ソーマ様にもキララにも迷惑をかけてしまったわよね」

「迷惑なんかじゃないわ。あなたはすぐに一人で抱え込もうとするから、リディアス様に連絡をもらえて良かったと思っているくらいよ」 


笑ってくれるキララに私は宣言する。


「ありがとう! でも、私、お兄様に頼らないようにする! 自分ひとりで頑張っていこうと思うけど、キララ、愚痴は聞いてくれる⁉」

「もちろんよ! 頑張るのはいいことだけど、無理にリディアス様から離れるようにするのはやめたほうがいいわ」

「そうね。ノンクード様が何をしてくるかわからないものね」 


 私との婚約を解消したくないみたいだったし、婚約破棄なんてしたら逆恨みされるかもしれない。

 自分で自分の身を守るすべを身につけない限り、人に頼らないのは危険だわ。逆に迷惑をかけてしまう恐れがあるものね。でも、私にできる護身術って何があるのかしら。



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