60 帰ってきたリディアス
「おかえりなさい、リディアス!」
馬車が走り出したところで、隣に座るリディアスにまずはそう声をかけた。
「ただいま、ミリル。シイ」
会いに行った時は気づかなかったけれど、日に焼けたリディアスは以前よりも逞しくなった気がしてドキドキする。シイちゃんがポーチの中でピョンピョンと飛び跳ねて我に返った私は、シイちゃんを外に出してあげた。
シイちゃんは嬉しそうにリディアスに飛びつき、彼の手のひらの上で撫でられてご機嫌そうだ。
「特に変わりはなかったか?」
「うん。お母様にはもう会って来たの?」
「ああ。だから、馬車に乗って迎えに来たんだよ」
リディアスは一度家に帰り、荷物を置いて体を洗って小綺麗にしてから迎えに来てくれたらしい。そう言われてみれば、石鹸の良い匂いがする。
「疲れているだろうし、家で待ってくれていても良かったのに」
「少しでも早くミリルたちに会いたかったんだよ」
「私もシイちゃんもリディアスに会いたかったから嬉しいわ!」
「そ、そっか」
笑顔で言うと、リディアスは照れたのか、私から視線を逸らした。
あとでゆっくり聞けば良いのかもしれないけど、やっぱり気になってしまい尋ねてみる。
「私たちが帰ってからエレスティーナ様は何も言ってこなかった?」
「彼女も自分自身のことに必死みたいで、特に何もなかった。俺の前に現れることもなかった」
「そうなのね。それにしても、本当に人騒がせな人だわ」
「ワガママが今まで許されてきたんだろうな」
「だけど、このままお咎めなしだなんてありえないわ」
憤慨していると、シイちゃんも同意するように飛び跳ねた。
「まあ、その話は改めてするとして」
リディアスはコホンも咳払いしてから続ける。
「で、さっきのあいつ、誰だよ」
そう聞いてきたリディアスの顔は笑っているけれど、目は笑っていないことに気がついた。
お読みいただきありがとうございます!
嬉しいことに書籍の2巻の発売が決定しております。
これも読んでくださった皆さまのおかげです!
本当にありがとうございます!
次の話から三部になりますが、二部の話を整理するため、開始は9月の中頃からと考えておったのですが、申し訳ございません。
他の書籍化作業と重なり遅くなっております。
目標は10月の中頃となります。
誠に申し訳ございません。