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58   王女の不思議な力 ②

 お父様が聞いた話では、エレスティーナ様に事情を確認しようとしたところ、彼女は自分の国に帰ってしまい、こちらからの問いかけには一切答えようとしないらしい。使いの者を送っても、混乱するお香を焚かれてしまい、意味がないのだと言う。


「混乱するお香の効果はどれくらい続くのでしょうか」

「大体2時間くらいで効果がなくなるらしいが、酷い人は丸一日続くらしい」

「……そうなんですね。解毒剤のようなものはあるんですか?」

「あるのかもしれないが、他国ではそのようなものはない。薬草学に詳しいコニファーなら、もしかすると思いつくことがあるかもしれない。彼女がやって来る日に確認するつもりだ」

「私も一緒に話を聞いてもいいでしょうか。もし、効果がありそうな薬草があるなら、コニファー先生と一緒に薬を作ってみようと思います」


 私には神様の加護があるんだもの。新薬を作るにしてもおかしな薬にはならないはずだわ。ただ、私以外作れない可能性も出てくるけど……。


「それにしても、エレスティーナ様はお香まで作れてしまうのね」


 お母様が驚いた顔で言うと、お父様も渋い顔で頷く。


「ああ。匂いに気がついた時には手遅れなんだから困ったものだ」

「解毒剤は別として、予防の何かを作るとしたら香水がいいかしら。それとも匂い袋? それならお守りみたいに持ち歩けるわよね」


 真剣に考えていると、お父様たちが笑った。


「え? ど、どうして笑うんですか?」

「薬師として、という理由だけとは言い切れないだろうが、予防策を考えようとするのは良いことだと思ったんだよ」

「薬師だからというわけではありません。無効化する薬を作りたいと考えることって当たり前のことではないんですか?」

「そうだな。無効化する薬を作りたいと思えるのは、薬師たちの望みだろう。そして、作ってほしいと思うのも私たちにとっては当たり前だ。でも、そうは思わない人もいるんだよ」


 よくわからないわ。人に害をなすだけのものに対抗したいと思うのは普通じゃないの?

 お父様は暗い表情になって話題を変える。


「今、ロードブル王国はエレスティーナ様が実権を握っている。近い内に現国王は退位し、彼女が新しい女王になるだろう。その時が厄介なことになりそうだ」

「それまでに私は薬師の腕を磨くようにします!」


 受けて立ってやるわ!


 拳を握りしめて言うと、お父様は苦笑する。


「あまり無茶はしないようにな。それから、大事なことを言い忘れていた。ミリルにはレイティン殿下が迷惑をかけたから、シイを貸す時間も延ばすと連絡があったよ」

「わ! 本当ですか!? やったね、シイちゃん!」

 

 シイちゃんと喜び合っていると、お父様が尋ねる。


「陛下たちが気にしていたんだが、レイティン殿下の件は、ミリルといたいがために、シイが引き起こした事件ではないよな?」

「そんな、酷いです! シイちゃんはそんな馬鹿なことしませんよ!」


 私が抗議すると同時に、いつもは白いシイちゃんの体が真っ赤になり『ケシカラン!』と言わんばかりにテーブルの上で跳ねたのだった。

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