55 フラル王国の第二王子への処罰 ②(レイティンside)
ミリルたちが帰途についている頃、レイティンは王城に戻り、父である国王に自分が持ち帰った王家の石について報告した。
「王家の石を紛失するなど許されない行為です! 私が取り返さなければ大変なことになっていました」
レイティンはすっかりミリルを気に入っており、この件で責任を問い、彼女を自分のものにしようとしていた。
国王はどこか冷めた目で、レイティンに尋ねる。
「王家の石が何者かに盗まれたわけだな? で、盗んだ人間はどうした?」
「……処分いたしました」
「なぜ、勝手に処分した?」
「なぜ、と言いますと?」
「王家の石のことは関係者しか知らないのだぞ? それに見た目はただの石だ。それなのに、どうして盗んだのか確認しなければならなかった」
レイティンはまだ若いということもあるが、後先を考えられる人間ではなかった。この矛盾を指摘されることなど考えておらず、思いついた言葉を返す。
「ミリルは高級店に出入りしていたそうです。彼女の持っている石なので、高価だと思ったのでしょう」
「なぜ、ミリルを狙ったのかは確認したのか?」
「いいえ」
(なんで、そんなに質問してくるんだ? すんなり褒めてくれたらいいじゃないか!)
レイティンは苛立つ気持ちを抑えて、国王に訴える。
「父上! 王家の石を盗まれるなんて許されないことです! ミリルに罰を与えるべきです!」
「確認するが、奪い返したものは本当に王家の石なんだろうな?」
「も、もちろんです!」
レイティンは頷くと、上着のポケットから袋を取り出し、石を外へ出した。
「確認してください。本当に王家の石……、え?」
レイティンが石を手のひらに載せて、国王に差し出した時、石は形を崩して白い砂と化したのだった。