51 フラル王国の宰相との再会
話をしている間に、リディアスがやって来たので、何があったのか確認した。さっきの人たちが話していた通り、リディアスはエレスティーナ様に告白されていた。エレスティーナ様はリディアスの返事に納得はしていなかったようだったけど、シイちゃんが助けてくれたそうだ。
レイティン殿下の件はお父様からハピパル王国とフラル王国の国王陛下に連絡してもらえることになった。
「いざこざになった原因もわかったし、私たちももうすぐ帰れるようになると思うが、ミリルとシモンズは先に帰っておいてくれ」
「わかりました!」
「承知いたしました」
お父様からの指示に私とシモンズが頷くと、リディアスは寂しそうな顔になった。
「またしばらく会えなくなるんだな」
「いきなりどうしたの? まさか、寂しいの?」
「うるせぇな。それの何が悪いんだよ」
からかったつもりだったけど、図星だったらしく、リディアスは不機嫌そうな顔になった。
「ごめん。怒らせるつもりじゃなかったの。私たち、ずっと一緒にいたものね。だから、離れ離れになるのは私だって寂しいわ。でも、リディアスだっていつかはお父様の跡を継ぐんだから、今から慣れておかないと駄目よ。今回はそのためもあって、お父様に付いてきているんでしょう?」
「そうだけど……」
「寂しいと思ってくれて嬉しい。だけど、離れ離れになってしまうのは、お父様や自分たちの立場を考えたら仕方のないことだと思うの」
今の私は辺境伯令嬢で、リディアスと結婚すれば辺境伯夫人だ。今も未来もハピパル王国を守らなければいけない立場であることに変わりはない。
「リディアス、ミリルの言う通りだ。戦地に行くのは国王陛下の命令でもある。自分の任務に集中できる精神を身につけなさい」
「わかりました」
お父様の話を聞いて、リディアスは大きく頷いた。その後はシモンズと話し合って、私たちがここを発つ日を決めた。
私は明日の朝からでも出発する気でいたが、付いてきてくれたメイドたちの体調が万全ではないことがわかったので、もう1日だけ延ばすことにした。
本当はもう少し延ばしても良かったけれど、メイドたちから1日だけで十分だと言われたので明後日の朝に帰ることにしたのだ。
というわけで、今日と明日はリディアスとシモンズと一緒に怪我をしたフラル王国の兵士たちの傷の手当てをすることになった。
フラル王国の領内には入らず、ハピパル王国内に逃げてきた人たちを集めているテント内での処置だった。
私には専門知識がないので、傷薬を塗ったり包帯を巻いたりするしかできなかったが、それでも有り難いと言われるほどに救護班の人が少なかった。
レイティン殿下たちのくだらない企みのせいで、怪我人が多く出たと思うと腹立たしい。
「ぐぬぬぬ」
と変な声を出して怒りを抑えていた時、背後から声をかけられた。
「失礼ですが、あなた様は、ミーリ……いえ、ミリル様ですか?」
「あなたは……」
私に話しかけてきたのは、フラル王国の先代の国王の側近であり、現在の宰相であるエイブランだった。