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46  シイの怒り ②

「……ミリル! おい! ……開けてくれ!」

 

 扉が優しく叩かれる音と、リディアスの声が聞こえた気がした。昨日は色々とあったからか、とても疲れていて、もう少しだけ寝ていたい。きっと夢だ。だって、今は家にいるんじゃないもの。リディアスの声が聞こえるはずがない。

 ……なんて、現実逃避したけれど、シイちゃんが私の上で何度も飛び跳ねて起こしてくれたので無理だった。


「夢の中の出来事じゃなかったのね」


 ゆっくりと体を起こして、リディアスに声をかける。


「ごめん、リディアス。今起きたの。もう少しだけ待って」

「わかった。起こしてごめん」

「気にしないで。こっちこそ寝坊しててごめん」


 時計を見てみると朝の8時前なので、いつもなら起きている時間だ。普段の私の生活を知っているリディアスなら、この時間に来てもおかしくはない。

 ぼんやりしつつ姿見で今の状態を確認してみると、今の私はノーメイクで髪はボサボサ。令嬢がこんな状態で恋人に会うなんてありえない。そうは思ったけれど、廊下で待たせているのもなんなので、部屋の中で待ってもらうことにした。

 寝起き姿の状態で、私が扉を開けると、リディアスはなぜか微笑んだ。


「おはよう、ミリル」

「おはよう、リディアス。昨日はお疲れ様でした」

「ミリルもな。部屋に入れてもらってもいいか?」

「もちろん。ただ、着替えるから、その間は向こうを向いててね」

「……着替えるまで外で待つ」

「ごめんね。早く着替える!」

「ゆっくりでいいぞ」


 昔のリディアスなら、兄妹だからと妹が着替える姿を見ても気にならないとか言って、中に入っていたと思う。そうしないのは、女性として見てくれているのだなあと、改めて意識してしまった。

 顔を洗って素早く服に着替えたあと、リディアスを部屋に招き入れた。ベッドの上に鎮座していたシイちゃんは、リディアスに飛びついて喜んでいる。そんなシイちゃんを撫でながら、リディアスが話しかけてくる。


「シモンズから話は聞いた。今回の件はレイティン殿下たちが絡んでいるんだよな」

「そうなの。だからシイちゃんはかなりご立腹よ」

 

 答えながらベッドの上に文字が書かれた紙を置くと、シイちゃんはその上に飛び乗って転がる。


『レイティンノコトハ、ゼッタイニユルセナイ。アンナヤツガ、フラルオウコクノオウケニイルコトハ、ユルサレルコトジャナイ』

 

 声を発しているわけじゃないし、石だから表情もないんだけど、かなり怒っていることは伝わってきた。

 フラル王国の王家の石として、このまま黙っているわけにはいかないみたい。


「シイちゃんはどうしようと思っているの?」

『レイティンヲ、フラルオウコクノオウケカラ、ハイジョスル』


 迷いなく答えたシイちゃんを見た、私とリディアスは、驚きですぐに言葉を発することができなかった。

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