弟7話 彷徨う姉妹と災厄の原因 俺って外道だぜ!
私の名前はターラ。
魔獣の森から半日ほど離れたタリアの村に住んでいる。
今は妹のミーナの手を引いてその魔獣の森をさ迷っている。
・・・・・・やっぱり来るんじゃなかった。
たとえ妹に産土神様のお告げがあったからって、こんなとこに・・・・・・・・・
いつ魔獣に出くわして襲われるか判らない。
もう見つかってどっかから私達のことを窺っているかもしれない。
だって、さっきからずぅーと何かの視線を感じるし・・・・・・
「ギュッ」と妹が私の手を強く握ってくる。
どうやらこの子も異様な気配に気づいているようだ。
私も妹の手を握りかえす。
妹を安心させる為ではなく自分を安心させる為に・・・・・・・・・
「お姉ちゃん大丈夫だよ、きっと見つかるよ、そしたらお父さんとお母さんや他の村の人たちも助かるから・・・・・・」
「!」
この子は・・・・・・
こんな時でも姉の私を気遣い、励まし、希望を持っている。
そんな妹だからこそ村の守神様のお告げが下ったんだろう。
お告げにあった『神の創りし器を持つ全てを知るもの』
それが者なのか物なのか解らないけど、必ず探し出さなきゃ!
そして、お父さんとお母さんと村の人たちを助けなきゃ!
私は萎えそうになる心を叱咤しながら、そう誓った。
魔獣の森に来るまでの事を思い出しながら………
異変は二ヶ月ほど前から始まった。
最初は風邪が流行りはじめたのかと思っていた。
でもすぐに風邪ではないことに気づいた。
最初は突然の高熱、その十日ほど後に手足の痺れが始まり、それが激しい痙攣に代わり、発病そて半月後に吐血………。
村にただ一人いる薬師のロスタムさんにも手の施しようがなかった。
この病はあっという間に村中に拡がり、私達の両親を含む村の半数が倒れてしまった。
真っ先にこの病に罹った人のなかで体力の弱い子供や老人から何人か死者も出始めていた。
私にできる事は両親の痙攣する体を摩ることと、吐いた血をぬぐってやる事ぐらいだった。
病に倒れた人も、まだ倒れていない人も等しく絶望していた。
もうどうにもならないと………
これから死の人はどんどん増えていくだろう、あとはあっという間に死の翼が村を覆うだろうと………
そんな時だった。
妹が村を守る産土神様からご神託を受けたのは。
妹は両親が倒れてから毎日、産土神様の祠へお参りに行っていたらしい。
『魔獣の森に人でもなく神でもなく、この世の全てを知る者がいる。病を癒したくばその者を訪なうべし。』
このご神託を受けた妹はまず最初に姉である私にその事を話してくれた。
最初は信じられなかったけど………
だって結構いるんだもん、神様のお告げを受けたって言って人を騙す連中って。
もちろん妹をそんな連中と一緒にしてる訳じゃないけど、父さんと母さんが得体に知れない病で死に掛けてるときだから、妹も神様に縋ってお告げを聞いたと思い込んじゃったんだ………
きっと妹は何かに縋り付きたかったんだろう。
私には解る……、だって私もそうしたかったから。
結局、私は妹と『魔獣の森』へ行くことにした。
お告げが真実だろうと、妹の思い込みだろうと、もう構わなかった。
この森で魔獣に襲われて死んでしまっても良いとさえ思った。
………先に創生の女神様の下へ行こう、どうせ父さんや母さんも直ぐに後を追って来てくれる。
そう思っていた。
そして出会ってしまった。
銀の毛で覆われ、金の鬣をもった巨大な獅子。
その瞳は深い青玉の色で魔獣とは思えない程、美しく神々しかった。
「主様、どうします~」
と、サティーが指示を仰いでくる。
「このまま森を歩き回られて、七柱神に捧げた泉を見つけられても困るしなぁ」
そんでもって噂が広まり一攫千金を狙う冒険者や、力を求める法術士がワンサカ押しかけて来るのはハタ迷惑極まりないし、この辺りを支配するエイラート王国が乗り出して来たりしたら面倒な事になるだろうし。
「ハーフェズに神域まで連れてこさせて」
「了解です~」
ハーフェズとは魔獣改め神獣の長の役割を与えるために一番強い神獣に色々と手を加えて創り出した所謂、ハイパー神獣で下手な産土神より強力、上級の精霊に匹敵する力を持っている。
もちろん、創り主の俺には絶対服従ってよりも、よく懐いている。
「ハーちゃんが戻ってきましたぁ。人間の姉妹を背中に乗せてますよぉ~」
………戻ってきたか、どれどれ、人様の庭先をうろついていた訳でも聞き出しますか。
姉と思われる方は年の頃13か14ってところか。
顔にまだ幼さが残っている。
だが……うーむ、イカン、イカンぞぉ~、なんだその胸は? あの大きさ違法だろう。
少しロリ顔にユサユサと揺れるチョモランマが二つ………
な、なんて怪しからん発育をしているんだ!!
オジサンは思わず欣喜雀躍してまうやろー!!
ハッ…、いかん! 思わず桃色妄想に支配されるトコだった。
で、ロリ顔巨乳の後ろから隠れるように俺を見つめているのが妹か。
5、6才ってところかな。
こっちも将来が楽しみな美幼女だよなぁ~。
いづれは姉のようなタワワタワワした胸になるのかね~。
って、ずーっと俺をみつめてるよ、妹ちゃん。
なに? なに? そんなに見つめないでよ。
俺のなかには真正ロリ紳士の鉱脈は無いんだよ。
無いはずだ……
だからそんなに見つめないでよ!
萌えてくるでしょ!!
………なんか鉱脈が見つかったぽいね。
やっぱ、成熟する前の青い果実もなかなか・・・げふん!げふん!
と、とりあえず、なんでこんな所まで来たのか事情を聞こうかね。
ふん、ふん、村で奇病が流行ってて何人か死人も出てるのか。
っで、姉妹の両親も奇病に倒れたと。
そりゃお気の毒に。
っで、村の産土神のお告げで俺を探しに来たと。
……丸投げする気かよ、村の産土神!!
とりあえず神智の図書館で調べてみようかね………
ツツーっと俺のコメカミから頬に流れる一筋の汗。
えー、えーとですね、目の前にいる姉妹の村を襲った奇病について、その全貌がわかりました。
以下の事情でコトが起こりました。
①俺が『魔獣の森』を乗っ取った。
②魔獣を神獣に強制変換した。
③七柱神に泉を献上、その泉の聖別化。
④結果、『魔獣の森』が神の力に満ちた『神獣の森』になりましたとさ。
⑤さてここからが問題、魔と化した生物は獣以外に虫もいました。
それも目に見えないくらいちっこいヤツ。
⑥不覚にも俺はその存在を見落としていました。 だってちっこいんだもん!!
⑦神の力が満ちている森に居づらくなった『魔虫』は大挙して近隣の村、なかんずく
その村に住んでいる村人の体内に引越しました。
⑧結果、奇病発生。
再びツツーっと、コメカミから頬に流れる一筋の汗。
俺の所為ですね。
ええ、俺のポカですよね。
死人まで出ちゃいました。
寝覚め悪すぎやろ!!
さて、どーしようか?
なんか助けを求めるようにジーィッと見つめてくる姉妹。
やーめーてー、そんなつぶらな瞳で見つめないでー。
助けを求めて決死の覚悟で此処まで来たんだろうけど。
目の前に居るのは救世主じゃなくて原因作った極悪人ですから!!
だ・か・ら、そんなウルウルした目でみないでぇ~。
ここはアレだな、原因には頬っかむりして善意の助け手を演じよう。
所謂、偽善者ってヤツ。
偽善者………、フッ…今の俺にはピッタリの立ち位置だぜ。
「事情は解った、村人達の命を救いたいのか? ……良かろう、お前達の望みを叶えてやろう」
うわっ、言っちゃったよ俺。
思いっきり上から目線、しかも恩着せがましく。
原因作ったの俺なのに。
なんか俺って外道まっしぐらって感じだな。