自然の摂理と先入観 その4 (玄関の向こう側)
皆様…お疲れ様です…
それでは、玄関の向こう側にご案内いたします…
ケアマネが玄関のチャイムを押す…
1回目のチャイムがゆっくり鳴らされてから、中の物音を探り3人は沈黙する。
2回目…3回目…とチャイムを鳴らす感覚は段々と早くなり…沈黙は終わり、近所の目を気にしながらWさんを呼び掛け続けた。
5回目のチャイムの後、また沈黙になり改めて玄関の向こう側の人の気配を探る…
「足音とか…物音…何も聞こえませんよね?」
デイケア職員の確認が入り、それが合図だったかのように、それぞれが鍵のかかっていない窓を探し始めた。
家の中が見えやすそうな窓はカーテンで遮られ、他の窓を探す。
「あの…すみません…こっち…」
デイ職員が台所の窓があいている事に気がつき私達を呼んだ…
私の身長だけが、車椅子に乗っているだろうWさんの足元を視界にとらえた!…更に背伸びをしながら中の様子を探ろうとするが、もどかしい…
「Wさん!……Wさん!!」
(呼び掛けと同時に反応があるのか?足先だけを頼りに注視するが、ピクリとも動かない)
「見えるですか!?」ケアマネが私の肩に触れるほど同じ景色を求めようとする…
「足先だけね…」
(足先から生気が感じられなかった事は口に出せなかった」
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その後…………………
大家を呼んだ…
4人で中に入る…
1番最初に目に入ってきたのは…
見慣れた車椅子に乗る変わり果てた夫のWさん…
通常の車椅子とは違い…リクライニングされた車椅子は…
生気を失ったWさんの体が落ちることを防いでいた…
奥さんを探す…
寝室にはいない…
それを後ろから見ていたデイ職員が浴室へ向かって行く…
“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”
「あああああああ!!……あぁ…ぁ…」
大きな悲鳴と落胆の声とは言い難い、掠れていく音…
デイ職員を1人にはしておけないという感覚だけで浴室に足を向かせた…
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その後、警察が介入
奥さんには
検視作業が入り、死亡推定は金曜と聞いた…
浴槽内で心筋梗塞をおこし、そのまま亡くなったそうだ…
第一発見者として様子を何時間にも渡り質問された…
ハッキリ言って覚えていない…
突然の不幸…これも良くあることだ…
受け入れ難い現実…こんなもの世の中に転がっている…
警察の質問が頭に入らなかった理由はそこではなかった…
それは………
夫の死亡推定が日曜だったと聞いたからだ!
浴槽内で心筋梗塞が発症した瞬間、奥さんは何を考えたのだろうか…
そして夫のWさんは、口から言葉が出ないだけで、周囲の状況と相手の言葉は理解できる…
いつまで経っても…お風呂から出てこない奥さん…
最初は(長いな…)くらいだったのかな………
それが不安に変わった先…その先は想像ができない……
(2日間……夏でなければ助かったのか……?)
そんなことを私達が考えても意味がない
でも…(どのような気持ちで2日間を過ごしたのか?)
この想いの考察が頭から離れない…
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警察から聞かれた…
「発見時の奥さんの状況は?」
(状況?)
(あんただって長風呂の経験あるだろ?あれだけで指先はどうなった?)
…まぁ…警察だって何度も見ているんだろうけど…
答える気にならなかった………
職務義務なんだろうが…そのようには聞けない私は、ただ機械的に返答していた。
ケアマネは、月に一度は自宅へ訪問する義務があります
コロナ禍では、(オンラインでも可)なんてこともありましたが…
高齢者世帯が増加傾向、このシステムが社会に浸透するのはいつになるのでしょうか?
Wさん宅にはケアマネとして月に最低3回は訪問していました
自然の摂理…(人間の意思や努力では変えられないもの)
そんなものに先入観など混ぜてしまったら…
自然の摂理の中に…あなたもいるという事…お忘れなく…
次回に備えるため、お伝えしておきます!
あなたの(普通)ってなんですか?
(普通だったら…)言った事…ありませんか?
はい!!
それではまた
お会いしましょう♪




