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現実の想像(隠された日記)その2

前回の続編です


続きを再開いたします


それでは…

    

   ◇◆◇◆(隠された日記 その2)◆◇◆◇


相談を受けて先ず行うことは、施設によって順番は異なっても

とにかく確かな(情報)の収集と整理!


私は、Sさんが入院中の病院へ行くことにした…


現場で働く看護師と介護士を連れ3名で向かうーー


私に不安があったことは否めないが、他施設も他職種で複数の目で観察することは珍しくない

通常の体制だったが、この時は2人の存在に助けれた


病院の受付に施設名を名乗ると、始まりの電話の声(MSW)が出迎えてくれた。

**病棟へ向かうエレベーターに乗り込む


案内されたのは個室だった

扉が開くとベッドに座っているSさん

見渡さなくてもわかるベッド以外は何もない個室

窓は逆に寂しさを外から取り入れていた…


ベッドに取り付けられたベルト(体幹抑制:身体拘束)が馴染んで見えてしまった。


そしてSさんは私の顔を見るや否や、嗚咽のような咆哮と共に泣き出した…

咆哮のまま、腕を伸ばし私自身を求めるような仕草


伸ばした手に私も手を触れて(こんにちは)と声をかけようと思った瞬間

60Kgは軽く超える私の体を軽々と引き寄せた!


「あーーーあーーーーういーーーあーーー」

言葉にはなっていないが、今度は笑顔で私を凝視している…

(介護現場での経験が、なんとか平静を保つ)


距離が急に近くなり、便臭と尿臭が鼻に突き刺さる…


腰とベッドの付け根は、何周回ったかわからないほど紐が捻れ

私たちが到着するまでのベッド上の行動を想像させた。


私とSさんのやり取りを見て

看護師がMSWに質問を投げかける

「看護師のGです、お世話になります…いつもこんな感じですか?」


「はい…院外に出てしまって医師の判断でベット上の抑制、胃瘻は滴下では無理なのでシリンジを使った注入で職員2名体制で行っています、尿意も便意もおそらくありません、オムツ交換も2名で対応しないと、先ほどのように手を引っ張られてしまったりして対応は困難です…入浴も歩行が可能なので一般浴槽で対応していますが、浴槽を認識できないので、ほとんどシャワーで対応しています」


「内服情報教えていただいても宜しいでしょうか?」

「はい…脳梗塞が2回目と言うことで血液抗凝固剤と排便が出にくいことがあって整腸剤、そして高次脳機能障害に対して、感情失禁と言いましょうか…感情が不安定なので、当院で出せる精神安定剤…昼夜の感覚もない状況だと判断して、眠剤も投与されています」


「ありがとうございます、他に医療処置は行われていますか?」


「たまに便秘になることがあるので3日目で下剤の投与、4日目か5日目で摘便を行うこともあります、もちろん2名体制で、男性職員がいれば2名で大丈夫かと思いますが、女性だけだと3名体制になることもあります」


「そうですか…わかりました…介護士から何かあるかな?」


「はい…介護士のRです、お世話になります、手が出ると…言っていましたが…暴力的?な一面もあるという事ですか?」


「感情が不安定なので、笑顔の時は何も抵抗しない事もあるんですが…泣きながら抵抗することがあります、これはスッタフ同士の意見になりますが、男性職員が対応した方が、比較的温厚でいるような感じがします」


「実際に怪我をされた職員さんはいらっしゃいますか?」

「はい…でも!グーで殴られる訳ではなくて、爪で引っかかれた職員が数名います…」


※実際はもっと詳しく調査しますが、施設の調査はこんな形で行われます

胃瘻:滴下とは点滴のように少しづつ胃に流し込むタイプ、Sさんの場合、この方法だとチューブを抜いてしまう恐れがあるため、シリンジ(注射器の太いもの)を使ってゼリー状の栄養剤を短時間で注入する方法を選択したという事になります…

精神薬:精神科の指定医でないと、処方できない薬が多く存在します。

摘便:看護師が指で肛門から直接指で便を出す行為です(医療従事者のみ行える行為になります)

血液抗凝固剤:血栓が作られないよう血液をサラサラにする薬

(脳梗塞の予防になりますが、出血した場合、血が止まりにくくなるリスクもあります)


こうして私たちの調査は終わり

施設に戻り、医師を含めた他職種で、判定会議(入所の可否を決める)を行うことになった…


                                つづく

次回 完結!!


暴力行為(本人にその意図がなくとも)があると介護施設で受け入れが不可になることが多数あります

退院期限までに行き先を探します!これが本当に難しい!!

高次脳機能障害は精神疾患ではないため精神科病院への入院も困難

病院は治療をする所であり、Sさんは治療は終えている…

このようなケースは少なくありません…

そしてどこの機関にも対象外となる隙間に挟まれてしまいます

Sさんはこの隙間に挟まる代表的な事例


このような現実の中…

果たしてSさんはどうなるのか?


そして娘さんの涙の訳とは?


それではまたお会いしましょう!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 脳梗塞の重度の後遺症があったとしても、どこかで生き続けなければいけない過酷な現実について、文章で表現されているところ。 [一言] 主に麻痺だけという後遺症であれば、いろいろな援助を受けなが…
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