狂愛~キョウアイ~
それは一目惚れだった。
貴女を見た瞬間、恋に落ちたのだ。
ぬばたまの闇を称えた黒髪。
黒曜石のような漆黒の瞳。
ああ、これを『運命』と呼ばず、何という?
私はすぐに彼女を閉じ込めた。
監禁? 何とでもいえばいい。
彼女は笑っていた。
『私も閉じ込められることがあるのですね』
貴女を閉じ込めずに、誰を閉じ込めるというのだろう?
貴女は至高の存在。
誰よりも気高く、美しい。
貴女はいつも余裕だった。
髪の毛を透きながら『毛髪を切ろうかしら?』と笑う。
そんなことはさせない。
皮膚のひとかけらから毛髪の1本まで私のものだ。
そういえば、貴女は笑って『そうですか』という。
彼女の言葉はいつも聞こえていた。
私は彼女に夢中だった。
やがて彼女から『声』がしなくなった。
どうしたのだろう?
問いかけても答えはない。
私の貢ぎ物が足りないのか?
私は真っ赤なバラをささげた。
しかし彼女は微笑んだまま。
貴女の声が聞きたいのに。
どうしたら応えてくれるのだろう?
その日から貢ぎ物が増えた。
着物・宝石・花束……なんでも貢いだ。
しかし彼女は微笑んだまま何も言わない。
なぜだ?
何が悪い?
私は彼女に詰め寄った。
すると傾く彼女の身体。
知った。
気付いてしまった。
彼女は息をしていないことに。
最後に食事を与えたのはいつだ?
水を与えたのはいつだ?
このほほえみはいつからだ?
ああ、あゝ、嗚呼。
私は知ってしまった。
彼女を殺した事実に。
私は最も愛しい人を殺めた。
誰かこの咎を与えてくれ。
ミイラになった彼女はほほえむ。
止めろ、やめてくれ。
私は『それ』を望んでいない。
私はただ彼女が幸せならよかった。
いつ、彼女が『幸せ』だといった?
そこで気付く。
全ては私の幻想だと。
彼女の躯を抱きながら、私は泣き叫ぶ。
愛していたのです。
心の底から。
もう少しの隙間さえないくらいに。
私の望みは彼女とともにあること。
それさえ叶えばよかったのです。
どうか、誰でもいい。
彼女を生き返らせていくれ。
なんでも差し出す。
私の望みが叶うなら……。
『なら、私と心中しましょう』
聞きたかった言葉。
彼女の声だった。
彼女の躯の前に、彼女が立っている。
何でもいい。
彼女とともにあるなら。
いっそのこと心中でもなんでもする。
『行きましょう』
差し出された手に触れる。
冷たい感触。
堕ちる先は天国が地獄か。
どちらでもかまわない。
彼女とともにいられるのなら。
私はどこへともお供しよう。
最愛の人。
最高の人。
私が求めた、唯一の天使。
両肩に生えた黒い翼は貴女に似合わない。
私が白く染め上げよう。
愛している。




