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ゴミ屋敷が修行先

 ゴミの山を避け、散らばるゴミたちを踏まない様にゆっくりと廊下を進む。

 もう既に後悔しかない。私の弟子入り先を選んだのは母だ。

「大丈夫、最高の師匠やけん!!」

 そう威勢よく私を送り出した母。どこか抜けたところがあり、その時のノリと勢いに身を任せる母を信じた私がバカだった。

 ゴミ、ゴミ、ゴミ…ゴミしかない汚部屋に涙が出てくる。

 どんな魔女がいるのか…そんな不安よりも、ここに住むことになっていることへの不安が勝るのだ。


「おー、よく来たな~。」

 ゴミの山から聞こえる声。

 声の方へ近づくと、ゴミの山から金色の頭が起き上がって来た。

「光乃緋音だな。よろしく。」

 ゴミの中で出会ったのは、輝きを放つ絶世の美女。

 あまりにも場違いな美女は…

「…ふ、服を…服を着て下さい!!」

 何故かパンツ一丁で眠そうな瞳でタバコを咥えていた。

「別にいいだろ?女同士なんだし?」

 面倒臭そうに頭を掻くこの人が、私の師匠となる人らしい。



−−−−−−−−−−−−−−−−−


「まあ、適当に座りな。」

 ボリボリとお腹を掻きながら言う師匠だが…

「ど、どこに座れと…」

 一面ゴミの山の汚部屋に腰を下ろすスペースなど存在しない。

「どこでも座れんだろ?全部ソファーみてぇなもんだよ。」

 そう言ってボスッ、とゴミ袋の山に腰を下ろした師匠。

「ダメだ…人間がダメになる…」

 あまりにもショッキングな現実に頭を抱え蹲る。

「バカだなオメェ。私たちは人間じゃねぇ、魔女だろ?」

 そんな私に笑いながらそんなことを言う師匠。

「そういう問題じゃなかったい!!こげな所に女の子が住むとか…ダメやろが!!」

 思わず叫ぶ私。

「お、ブラあった。」

 そんな私の怒鳴り声など何処吹く風。師匠はゴミの山からド派手で巨大なブラジャーを発掘していた。

「こげな所で修行なんて…」

 そんな師匠を睨み更に言葉を続けようとした私に、

「んじゃぁ、お前の最初の修行は片付けな。」

 ブラジャーを着けながら言う師匠。

「は?」

「だから、修行。先ずは片付け。んじゃよろしく〜。」

 バスン、とゴミの山にダイブし、寝息を立て始めた。


「嘘でしょ…」

 全てを覆うゴミの山と、そんなゴミの中で寝る師匠に絶望的な感想しかなかった。



−−−−−−−−−−−−−−−−−



「あーもぉっ!!なんねこれ!!汚なかぁ!!」

 ゴミを拾い、袋に詰めていく。雑誌にお惣菜のパック、ビールの空き缶に空の酒瓶、靴下にシャツ、パンツにブラジャー…

「派手かぁ…それに…」

 ド派手な下着に思わず顔が赤くなる。なにより、そのブラジャーの大きさに驚く。

 私も一応、同年代の子たちと比べれば大きい方だが、これは桁が違う。

 ゴミの山でだらしなく寝息を立てるその人物を見る。

「信じられんたい…こん人がゴミ屋敷ん主…」 

 光を放つ金色の髪に透き通る様に真っ白な肌。出るとこは出て締まるところはキュッと引き締まったバツグンのスタイル。顔立ちは整い過ぎて怖くなる程に美しい。

 そんな絶世の美女がゴミ屋敷の主。

「これで最高の魔女…」

 母から伝えられた情報、『不死の魔女』として、現存する魔女で最も古く、そして最も強く、最も叡智に富んだ魔女が私の師匠らしい。

 その片鱗は全く見えないが…


「自己紹介も終わってなかとけ…」

 寝息を立てる師匠に悪態をつきながら、私はゴミの山と戦い続けた。






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