ショタジジイに懇願されて、皇族の秘薬である寿命を延ばす薬を飲む
出産から早数日。私は産後しばらくは安静にしているよう言われているのでまだベッドの上での生活だ。
ただ、夜は必ず子供姿のユルリッシュ様が添い寝してくれるし、昼間も仕事の合間を縫って会いにきてくれるので、寂しくはない。
それに、愛するユベールも側にいる。面倒は乳母が見てくれるので、私は安心してユベールを見守ることが出来る。
「イザベル、調子はどうだ?」
「ユルリッシュ様!はい、ユベールも私も大丈夫です!」
「それは良かった」
今日もこうして、ユルリッシュ様が来てくれる。こまめに顔を見にきてくれるユルリッシュ様に、なんとなくすごく幸せな気持ちになる。
「それでな、イザベル…その…」
「どうしました?ユルリッシュ様」
なんだか、ユルリッシュ様が少し迷うような表情をしている。
ユルリッシュ様はしばらく逡巡して、ようやく口を開いた。
「イザベル。皇族の秘薬の存在を聞いたことがあるか?」
「不老長寿のお薬ですよね。皇宮の中庭に生えた世界樹の葉から取れる朝露を一滴ずつ集めたかなり貴重なお薬とか」
「ああ。今も五人分くらいしか保存されていない」
それがどうしたんだろう?
「…このお願いをするかは本当に迷った。けれど、ユベールがハーフエルフならやはり…お願いしたい」
「?」
「イザベル。不老長寿の秘薬を一本分飲んでくれ」
「え」
「そうすれば、俺たち親子はいつまでも共に居られる。それでもいつかは終わりが来るが、早い別れを嘆くことはない」
言われて戸惑う。そんな貴重な秘薬を私なんかが使っていいのか。
「もちろん、イザベルには辛い思いもさせると思う。大事なご実家の面々にも、先立たれることになる。…それでも、俺とユベールと共に生きることを選んでくれないか」
悲痛な表情でそんなことを言うユルリッシュ様。
そんな風に言われて、断れるわけがない。
「…もちろんです。ユルリッシュ様とユベールと共に生きることができるなら、これ以上の喜びはありませんから!」
「イザベル…!」
「ただ、そんな貴重な秘薬を貰っていいのでしょうか?」
「許可はきちんと得る。大丈夫だ。そうと決まれば早速許可と現物を貰いにいってくる。ちょっと待っていてくれ」
浮き足立った様子のユルリッシュ様に、少し微笑ましくなる。…不老長寿か。ちょっと怖いけれど、それでユルリッシュ様を一人遺していくことを避けられるのなら、私はそれでいい。




