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出産

「イザベルが産気づいた！別室待機している助産師を今すぐ呼べ！」

「はい！」

ユルリッシュ様の言葉に、侍従が反応する。ユルリッシュ様がベッドの上で呻く私の手をとり握ってくれる。

「イザベル、すぐ助産師が来るから大丈夫だぞ」

「う、うう…」

優しく声をかけてくれるユルリッシュ様。しかし私はそれどころではない。

「ユルリッシュ様っ…」

「大丈夫、大丈夫だ…」

「助産師様をお連れしました！」

「聖妃様、お待たせしました。お手伝いさせていただきますね」

助産師さんが来てくれて、出産を手伝ってくれる。魔法で介助する。しかし、初めての出産は思った以上に苦戦した。なかなか子供が生まれて来ない。

「…ま、まだ生まれないのか」

「出産は一日かかることもあるのですよ、聖王猊下」

「それは知っている！だが、イザベルの体力が…」

「そこで私の出番です」

助産師さんが魔法で私の体力を少し回復してくれる。体がすごく楽になった。

「さあ、もうひと頑張りですよ！」

「うううー…」

そのもうひと頑張りが辛いが、子供のためには頑張るしかない。

そして、産気づいてから結局丸一日が過ぎた。

「おぎゃー！」

「や、やっと生まれた…」

「イザベル、よくやった！ありがとう、よく頑張ったな！」

「聖妃様、ご立派です。元気な男の子ですよ」

「よ、よかった…」

我が子を抱く。穏やかな気持ちになって、なんだかとても満たされる。ユルリッシュ様はボロボロ涙を溢れさせて私と我が子を見つめる。

「ユルリッシュ様。ユルリッシュ様も抱いてあげてください」

「い、いいのか？じゃあ…」

涙をハンカチで拭いて、我が子をそぅっと抱きしめるユルリッシュ様。まるで壊れ物を扱うかのように優しく優しく抱えている。

「ユルリッシュ様、私達の子は可愛いですね」

「可愛い。本当に可愛い…ありがとう。生まれてきてくれて、本当にありがとう…」

「あうー」

我が子の耳は、ユルリッシュ様と同じ。エルフの特徴である長い尖った耳だ。この子もまた、かなり珍しいハーフエルフとして生まれてきたらしい。立て続けにハーフエルフが生まれるなんて、確率が低すぎる。奇跡と言っていい。

そんな奇跡と共に生まれたこの子がとても愛おしい。そして、私とユルリッシュ様ならきっとこの子を幸せに出来る。そう信じている。