我が子がお腹にいる幸せ
妊娠して始めの方は、嘔吐と食欲不振が酷かった。けれどなんとか果実とか食べられるものは食べるようにしてしのいで、睡眠をよくとり安静にしていた。ただ、体力が落ちるのも怖いのでユルリッシュ様と一緒に日の光を浴びながら短めのお散歩もしている。
「イザベル、見てみろ。あそこに鳥が巣を作ったようだ。雛鳥が生まれるのが楽しみだな」
「あ、本当ですね!雛鳥もこの辺りまで離れていれば見られるでしょうか?」
「これ以上近寄れば親鳥に攻撃されるだろうが、ここからなら見られるだろう」
「楽しみですね!」
「そうだな」
もはや日課となったユルリッシュ様とのお散歩。なんだか、プチデートみたいでとても楽しい。ユルリッシュ様も楽しんでくれている様子なので、嬉しい。
「お腹もだいぶ大きくなってきたな」
「はい、成長してくれている証拠ですね」
「こうなると、なんだか親になるのだと実感が湧くな」
「そうですね…大切に育てましょうね」
「もちろんだ」
最近ではお腹が次第に大きくなってきた。そこでやっと、ここにユルリッシュ様との子がいるのだと実感が持てた。ユルリッシュ様も同じなようで、私のお腹をたまに優しく撫でては幸せそうな顔をする。
「俺が付いているから、安心して子供を産んでくれ」
「はい、ユルリッシュ様」
「ただ…出産は、かなりの苦痛を伴うと聞く。俺が代わってやれればいいんだが」
心配そうなユルリッシュ様に微笑む。
「大丈夫ですよ。私は結構、体力には自信があるんです!」
「イザベル…」
「ユルリッシュ様との子を授かれるだけで幸せですから。出産はすごく大変だと聞きますが、それでもきっと。私は大丈夫です!」
ユルリッシュ様はそっと優しく、私を抱きしめる。
「イザベルだけに負担をかけるのは忍びないが、それでもイザベルにしか頼めないことだ。…どうか、無事に子供を産んでくれ。俺はイザベルとこの子がいないともうダメだ」
「ふふ、分かっています。大丈夫、必ず無事に。でも、まずはもっとお腹が大きくならないとですね」
「そうか、そうだな。出産予定日もまだ先だからな。…今から不安になっていては、身がもたないな。よし、イザベル。今日は帰ろうか」
「はい、ユルリッシュ様」
まだ気は早い。けれど刻々と、その時が近づいている。




