以前の婚約者の突撃
さて、話し込んでしまって夜も遅いしそろそろ寝ようというところで、大聖堂内が騒がしくなった。
「…なんだか騒がしいですね?」
「賊が入り込んだか?」
「え、そんなことあるんですか?」
「たまにな。でも、普段なら即座に高位の神官が魔法で取り押さえるんだが。それが出来ない相手というと…政治的な力を持つ貴族、とかか?」
それを聞いて嫌な予感がした。ユルリッシュ様も同じことを考えたようで、顔を見合わせる。
「イザベル。夜も遅い、お前は寝ていろ」
「ユルリッシュ様は?」
「…賊を潰してくる」
「わ、私も行きます!」
ユルリッシュ様は少し困った顔をした。
「イザベルには会わせたくないんだが」
「…それでも付いて行きたいです」
どうしたいとか、そういうのはない。でも、一人だけ逃げるのは嫌。
ユルリッシュ様は自分の思い出したくもない過去を、それでも勇気を出して私に話してくれた。
私もいつまでも逃げたりせず、ユルリッシュ様みたいにちゃんと過去と向き合いたい。
「…俺の後ろにいろ。前には出るな。話はしなくていい。…それでいいか?」
「はい!」
ノエル様がどんな結末になるか、ちゃんと見届けよう。それで、過去と向き合ってユルリッシュ様とちゃんと愛しあえるようになりたい。
ユルリッシュ様に付いて行き、大聖堂の広間に来た。




