悪夢を見た
「愛してるよ、ジュリー」
「本当?ノエル様」
「当たり前じゃないか」
ああ、これはあの日の記憶だ。
「でも、イザベル様とは別れてくれないの?」
「…ごめんよ。きっとなんとかするから」
「そうは言うけれど、結婚まであと五ヶ月よ?」
「うん。そうだね」
「私を選んでくれないの?」
この時。少しでも迷うそぶりを見せてくれたら、それだけでよかったのだ。でも。
「もちろんジュリーを選ぶよ」
「嬉しい!絶対よ?約束よ?」
「うん、約束だ」
彼は迷うそぶりも見せず、彼女を選んだ。
ショックだった。
苦しかった。
悲しかった。
悔しかった。
けど。
「お嬢様、ここを離れましょう」
リリーに手を引かれて、その場を離れて。やっと息ができるようになって。
そうして思ったのだ。私に魅力がないのがいけなかったのだと。
私の取り柄は光魔法と星辰語の翻訳くらい。だけどそれは、家庭に入ったら使うことはほとんどない。貴族の娘として、魅力にはなり得ない。
私は容姿も平凡で、センスも普通。貴族の娘として、突出した魅力がなかった。そんな私が選ばれるわけなかったのだ。
「…なんで、どうして」
涙が溢れてしまう。せめて、夢の中でよかった。
「どうして、私を愛してくださらなかったのですか、ノエル様…」
ぽつりと溢れた本音は、誰に届くこともなく消えた。




