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男を奪ってやったのに

私は侯爵家の末っ子長女で、すごく甘やかされて育ってきたと思う。


そんな私には悪癖がある。相手のいる男性を落として奪ってしまうのだ。


相手の女性の悔しそうな悲しそうな顔が面白くて、ついやめられない。


それによって起きる問題は全部親や兄が解決してくれる。だから私にとっては何の問題もない。


「今回も上手くいってたのに…どうして…」


なのに、今回奪った男の相手は…なんと、聖王猊下の婚約者になってしまった。


悔しそうな顔を嘲笑って楽しんでいたのに。引きこもりになったのを笑っていたのに。


私より上の立場になるというの…?


「…ムカつく」


でも、さすがにこの状況で手を出したらヤバイのはわかる。ぐっと堪えるしかない。


そして時はあっという間に過ぎて結婚式当日。大聖堂に多くの貴族が集められた。私も、あの女から奪った婚約者も。


そして会場の聖王猊下を見てびっくりした。大人姿だったから。滅多にこの姿にはならないのに。


あの女も兄らしき人に連れられて幸せそうにバージンロードを歩く。


「…なによあれ」


この私が、嫉妬する側に回るなんて。…屈辱感に、吐き気すら覚えた。


「ユルリッシュ様…」


「イザベル。俺が世界一幸せにするから。指輪をはめてもいいか?」


「…はい!今私、もう世界一幸せですっ…!」


「…本当に可愛い」


まだ誓いのキスには早いのに、あの女の額にキスをする聖王猊下。そして二人は指輪をお互いにつけて、誓いのキスを交わした。


ムカつくムカつくムカつく!!!なによ!私に男を奪われる程度の女のくせに!


でも、万雷の拍手が聞こえて、私は我に帰る。仕方なく拍手を送る。


ふと、あの女と聖王猊下がこちらを見た。こそこそと何か話している。


…馬鹿にされているような、そんな気がした。さすがに被害妄想だろうけど。


「…」


嫌な感情が頭を支配していて、すごく苦しい。


その後は、大聖堂内の別の部屋に移動して披露宴に移る。結婚式の厳かな雰囲気と違い、和やかなムードで祝福が飛び交う。


「おめでとうございます」


「ありがとうございます」


みんな口々にあの女と聖王猊下を祝福している。


嫌だけど、私も行かないと。


「…イザベル」


「…」


私の婚約者を前に、少し身体が強張ったあの女を見て少し安心する。


なによ、やっぱり気にしてるんじゃないの。


「おっと、俺の愛おしい妻を勝手に呼び捨てにしないでもらおうか」


でも、聖王猊下があの女を庇った。


「…っ!も、申し訳ありません、聖王猊下。…ご結婚、おめでとうございます」


「ああ、ありがとう。お前がこの素晴らしい女性に〝捨てられてくれた〟おかげで、俺はこんなにも幸せだ」


捨てられたのはあの女の方。でも、聖王猊下がそう言ったら誤解する人もいるだろう。この人、なんてことしてくれるのよ!?


「イザベルは凄いんだぞ?光魔法をそれはもう素晴らしく使いこなすし、星辰語の翻訳の腕も相当だ。俺はプロポーズを受けてもらえなければ、聖女として認定してもいいと思ったくらいの実力者だ」


大きな声であの女を自慢する聖王猊下。その言葉に他の人達はざわざわと騒ぎ始めた。すごいとか、それで結婚したのかとか。女が星辰語の翻訳なんか出来たって、だからなんだっていうのよ!そういうのは男の仕事でしょ!?


「ああ、勘違いしてくれるなよ?それだけで結婚するんじゃない。みてくれ、我が妻は美しいだろう。見た目に違わず心も綺麗だ。羨ましいだろう?」


たしかに、お美しいのは間違いない、そんな声も聞こえてきた。私の方が百倍綺麗なのに!!!


「ま、そういうわけで、俺は妻を愛しているからお前はもう妻に近寄るなよ。しっしっ」


その聖王猊下の扱いに、怒りで気が狂いそうになった。


その後は残念ながら問題も起こらず、穏やかに時間が過ぎてしまった。無事披露宴も終了してしまって、私はモヤモヤを抱えて会場を後にした。

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