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ゴブリンに襲われる奴とゴブリンを襲う奴

 村に着いたのは日も暮れてからだった。


「あのクソ共のせいで真っ暗になっちまったな」

「そ、そうだね。

 でも、たった1日で着いちゃったよ」

「本当なら夕暮れ前に着いたのに」


 取り敢えず、依頼人の家を探す。


「村外れに続く道から行った先の少し大きめの家とか言ってましたね」

「おう。

 村外れに続く道は……」


 紫色の空は後に10分も持たずに黒に塗りつぶされるだろう。目を細めて視界を確保。


「あ、あそこに道ありますよ」


 ポールが指差す先を見ると確かに道らしきものが造られている。一応、暗視眼鏡を用意する。PSQ-20とか言うアメリカ軍が使う単眼型の暗視装置。それを頭に付けて道を確かめる。


「あー、ココだ。

 すげーなお前。この道見えんのかよ」


 この時間帯1番物見えないのに。


「ええ、魔術でブーストしてるので」


 エヘヘと愛想笑いを浮かべるポール。コイツは褒めるといつもこう言う笑い方をする。それが魔術師にキモがられる要因の一つになるのが、きっとこの卑屈そうな笑い方は生来のものなのだろう。可哀想な奴め。きっと童貞なんだろう。俺もだけど。

 いや、今は処女か。


「取り敢えず、この道行ってみっか」

「はい」


 二人して夜道を歩くと一軒の家が見えてきた。

 確かに、周りの家よりデカい家がある。


「アレだな」

「はい」


 ポールが扉をノックする。暫くすると一人の若者が出て来た。


「何だあんたら?」

「ゴブリン退治に来た冒険者だよ。

 依頼人はアンタか?」

「やっと来てくれたか!

 おいオヤジ!」


 若者が奥に声をかけると奥からおっさんがやって来た。


「良く来てくれました!

 どうぞ中へ!」


 おっさんに促され中に入る。中には若者が10人近くおり、全員俺たちを見ると軽く睨みつけてくる。


「こりゃ、何の集会だ?」

「ああ、彼等は村の青年団で私の農園を警護してくれてるんです」

「お前達が来るのが遅いから既に3回もゴブリンどもの襲撃を撃退してやったぞ」

「お前等の仕事はねーかもな!」


 あー?

 ポールを見るとポールも同じようにこちらを見ていた。


「最初の襲撃は3匹で周りの柵の所でうろうろしてたろ?」

「ああ、柵を壊そうとしてたから弓矢で追い払ってやった」

「次は棍棒とか持ったゴブリン3匹だろ?」

「何で知ってんだ?

 そうだよ。柵を壊して中に入って来たから全員で弓矢と鎌を持って追いかけたら逃げていった」


 馬鹿だなコイツ等。


「どーするポール?」

「3回目いつ来ましたか?」


 ポールが青年団に尋ねた。


「あ?昨日だよ。

 5匹来て、2回目より暴れてこっちも一人怪我したけど向こうも1匹殺してやったんだ」

「俺がフォークで突き殺してやったんだぜ!」


 自慢げに話す馬鹿。


「あーあ、こりゃやべーな」


 結果から言うとゴブリンは近いうちにその勢力を持って全力で襲いに来る。

 何故ゴブリンに手を出してはいけないのか理解してない。ゴブリンを軽んじている。


「結論だけ言うと、近いうちに30匹以上のゴブリンが襲いに来るぞ。

 この村全員を殺しに来る。理由は仲間を1匹殺されたから。5匹を全滅させずに、たった1匹しか殺していないから。お前等何で手を出すんだよ。馬鹿が。

 ギルドから何も言われてないのか?依頼出した時に、どんなに少数でも決して殺すな。殺すのは冒険者が行うから、と」


 オッサンを見るとそう言えば、みたいな顔をした。

 あーあ、こりゃもう、知らねーわ。


「黒猫亭の親父にゃ別のところから野菜仕入れろって言うか」

「え、帰るの?」


 ポールが驚いた顔をしていた。


「あ?この農園を襲うゴブリンの駆除だぞ?村まで面倒見切れるか」


 アホくさい。


「どう言うことだよ!」

「どうもこうも、ゴブリン怒らせたお前等のせいでこの村はゴブリンに滅ぼされるんだよ。

 ゴブリンに滅ぼされる村の殆どがお前等みたいな中途半端な知識と中途半端な力しかないボケがゴブリンの偵察や斥候を中途半端に片付けた為に起こるんだよ。

 此処が軍の駐屯地ならそれでも良い。30匹前後のゴブリンなんか統率の取れた一個分隊程度の歩兵でも殺せるからな。

 でも、お前等はそうじゃない。ただの農民だ。号令で戦闘もできなければ統一した武器も防具もない。

 何故、ギルドが殺すなと言うか分かったか?

 この農園だけなら俺とポールで守れるが依頼は倍もらう。出来ないなら俺達は今すぐ帰る。

 選べ」


 ポールは見ない。コイツは変な所で優しい奴だからきっと助けようとか抜かす。箱舟の時もそうだった。そして、リーダーはいい奴だしチームもその実力があるからやってしまう。


「ま、マクミランさん」

「答えはノーだ、ポール。

 俺達は二人だ。俺は確かに30匹程度のゴブリンなら簡単にぶち殺せる。だが、その前に俺達は冒険者でこれはビジネスだ。

 危険を犯す事はしない。冒険者が冒険して良いのは自分の技量内までだ。

 もう一度言うぞポール。答えは、ノー、だ」


 ポールに向き直って告げる。

 ポールはひどく落ち込んだ顔をする。


「俺達を見捨てるのか!?」

「嫌なら今からでも村中の連中を集めて話し合うんだな」


 言うと若者の一人が走り出ていく。


「まぁ、一晩くらいなら待ってやるよ」


 椅子を壁際に置いて腰掛ける。


「外で誰か見張ってんのか?」

「あ?」

「だから、見張りは立ててるのかって聞いてんだよ。

 ゴブリン共がお前等を殺しに来るんだぞ?」


 言うと青年団は大慌てで農具と松明を片手に外に飛び出ていく。


「ゆっくりできると思ったのになぁ」


 決まったら起こせと告げて寝てるフリ。目を閉じて、武器をどうするか考える。

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