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クビになった奴とそれに便乗して辞める奴

 正直、異世界から転移してきたがその特典は死ぬ直前までやり込んだゲームのキャラの能力と武器を寄越せと言うものだ。

 転移してきた5年。3年目でアホのように名前を上げてこのチーム、黄金の方舟にスカウトされた。

 此処は新進気鋭の実力派冒険者チームで最初の頃は楽しかったのだが俺はある時気が付いた。


「所謂ボス戦が死ぬ程だるい」


 と。

 理由はいくつかある。しかし、もっとも高い理由は俺はそこそこの雑魚を撃ちまくってるのが好きなのであって同じ敵に長時間銃をチマチマ撃っては注意を引いて攻撃を避けるのは嫌いなのだ。

 それに気がついたのは一年前。気が付いてからは早かった。ホント、ビックリするぐらい冒険がつまらなくなった。ボスに挑むまでは俺が前衛を務めて露払いをしてボス戦は他の奴らに任せると言う形にして凌いでいたのだが、それも最近なんだかんだで俺もボス戦に参加する羽目になる事が多くなって来た。


 そんな折にチーム内でとある話が持ち上がる。

 このチームには雑務係兼荷物持ちを兼ねた付与術師の奴がいる。名前はポール。彼は特筆すべき能力を持っているのか?と言えば記憶力の良さと器用さだろう。

 探索エリアに入る前に術を付与して貰い、その後はずっと後をついてきて道案内に始まり休憩時の雑務や荷物持ち、探索終了後の書類作成と成果報告等を彼は自主的にやってくれている。

 身体能力もそれ程高くなく、剣技等も平均より少し上程度の力だ。故に黄金の方舟には些か実力も能力も劣る。

 彼より優れた付与術師、ポーターに事務方と其々を雇えば費用は掛かるが充分に穴埋めできる。そしてそれにリーダーや主要メンバーが気が付いてしまった。

 そして、ポールを除いた主要メンバーが集まり彼の話をし始めたのだ。因みに何故か俺もその場にいる。個人的には全く主要メンバーのつもりじゃ無かったし呼ばれた理由もポール以外全員参加だと思ったから出てみたらそんなこと無かった。


「みんなどう思う?」


 そして、リーダーがオレ達を見る。俺的にはお前等で好きにやれよ感しかないし、何なら古参メンバーと呼ばれるメンツの中にも含まれない2年目のペーペーだ。

 俺の中じゃポールは割と先輩として扱ってる。あいつが辞めるなら俺も辞めてゴブリン殺しまくったら猟とかしたい。


「俺はどっちでも良い。

 アンタ等に任せる。俺はポールよりも後に入った身だ。ポールの事でどうこう言える立場じゃねぇ」


 面倒臭いのでそう宣言してから廊下に出る。廊下に出るとポールが顔を真っ青にして立っていた。


「よぉ、ポール」

「う、ぁ……っと、マクミランさん……」


 ポールはなんとか搾り出して俺の名前を告げる。


「話聞いてた?」


 親指で後ろを指す。ポールの顔を見てれば明白だな一応の確認。無反応だが僅かに震えている。多分ビンゴだ。

 まぁ、此処まで聞かれたらしゃーないと思うので腕を掴んで部屋に入れる。


「話聞かれてたぞ」


 部屋に戻る為に扉を開くとポールを嫌っていた魔法使いが高らかにポールを罵倒していたシーンだった。


「ウジウジしてて気持ち悪いのよ!

 私は賛成よ!」


 全員固まってしまう。

 あーあ、やっちゃった。そんな空気。ポールは腕を振り払って逃げようとしたが俺がガッチリ掴んでるので普通に逃げれず腕をグイッと引っ張るだけで終わった。


「あ、あの、その、お、おれ……」

「ポール、その、何というか……

 俺達はお前の安全の為にもお前をパーティーから脱退して欲しいと思う。

 お前は優秀だし、他のパーティーでもやっていける。すまない」


 リーダーは頭を下げる。全員何も言わないので、代わりに俺がポールの肩を叩いてやる。


「まぁ、そういう訳だから。この際ちょうど良いから俺もポールと一緒に行くわ。

 んで序でにポールの退会手続きして来るわ」

「あ、ああ。

 すまないマクミラン」

「気にすんな。

 お前等も元気でやれよ。今までありがとな。

 ポール、別に喧嘩別れじゃねぇんだ。納得しろとは言わねぇが、理解はしろ。みんなお前に死んで欲しい訳じゃねぇ。この前の探索だって危なかったシーンあったろ?」


 ポールの肩を叩きながら廊下に連れて行く。


「は、はい、マクミランさんに助けて頂きました……」

「おう。

 で、最近そう言うのが目に見えて増えて来た。黄金の方舟は高ランクの冒険者チームで今よりも更に上を目指したいってチームなんだ」


 分かるよな?と言うとポールは力無くハイと頷く。

 それからギルドに行って脱会申請をする。俺とポールの分。


「え、お二人とも辞めるのですか!?」


 申請を担当する受付が驚いた顔で俺達を見、ポールも俺を見た。


「おう。

 ポールは今のポールの力じゃいつか死んじまう。俺も正直高ランク舐めてたから暫くは中級程度の依頼するわ」

「ま、マクミランさんも辞めるんですか!?」


 ポールがそこで初めて大きな声を上げた。


「ああ、さっきリーダー達に言ったじゃん。

 ポールと一緒に行くって。そしたらリーダー達も普通に見送ってくれたし。ま、しばらくは2人でやってこうぜ?

 俺とお前の仲だ。俺が依頼こなすからお前は俺の財務とかなんか諸々の担当な。

 取り分はお前が決めて良いぞ。こう言う時はパーティー組んだ方が楽なんだっけ?」


 じゃあパーティー申請しとくか、と新しくマックとポールと言うパーティーを作った。これで食費や寝床等少しは安くなる。

 流石に黄金の方舟みたいな高いランクとチーム歴がないので連中がベースとしている宿屋は使えないがな。


「んじゃ、明日からやってこうぜー

 楽しみだな!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白そうな導入部で続きが楽しみです [気になる点] >因みに何故か私もその場にいる。 ここだけ一人称が私になってます
[一言] お……?おぉ……?センセ、おかえり?
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