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第27話 次に会う日までに!




「忘れ物はないか?」


「うん。みんな持ったよ」


「パスポートと財布と鍵だけあれば何とかなるか?」


「ロストバゲッジしたとしても、それだけあればなんとかなるかなぁ」


 車を駐車場に停めて、成田空港第2ターミナル出発ロビーのフロアまで移動する。


 荷物は来たときと同じ、スーツケースが一つと、身の回りの品を入れているハンドバッグ。


「一つ聞いてもいいか?」


「なぁに?」


 駐車場からスーツケースを俺が押しながら、大したことでは無いけど聞きたかった問いをぶつけてみた。



「もう、羽田便もあるのに、なんで成田便を使うの?」


 そう。この一時帰国で、由実は往復とも成田空港を使っている。


 彼女の実家がある横浜からすれば羽田空港の便の方がアクセスも楽なのは間違いないのに。


「うーん、私のポリシーかな。私たちが子供だったとき、まだ羽田はなくて、成田空港から出発したでしょ?」


「そうだったなぁ」


 もう都合13年も前の話だ。小6で初めて出国のため来て、中3で帰国したのも成田空港だ。


「なんかね……、落ち着くの。それに、空港までの時間が長いから、これから行くとか、帰ってきたとか考える時間がたくさんあるのが魅力?」


 何となくその気持ちが分かる。この空港は、まだ海外赴任がこれほど一般的でなかった時代の名残を俺たちに送ってくれているのかもしれない。


 チェックインカウンターで荷物を預けて、手続きを済ませてしまえば、夕方の出発まではしばらく時間がある。


「お昼、おごるよ」


 今朝、ホテルの朝食は混雑のためにバイキングを諦め、部屋でパンを食べただけで終わらせていた。


「なんでも好きなもの食べていいぞ」


「そんな、悪いよ」


 これからしばらくの間は日本食も減ってしまう。


 二人で見ているうちに、腹の虫が鳴ったので、笑いながら目の前の和食の定食店で空腹を満たすことになった。


「祐樹君……、ありがとう。本当に、こんな気持ちで今日を迎えるなんて思ってなかった」


 そのあとで、展望デッキに上がってベンチに並んだ。


「俺はなんにもしてないよ。由実のことが忘れられなくて、偶然会えたから図々しく彼女になってもらったってだけさ」


 本当にそんな感じだ。偶然見つけた由実の名前。これがなかったら、俺の人生がこんなに急に変わることはなかっただろう。


「両親にもね、祐樹君とお付き合いすることを報告したよ。『いい人を見つけたなら、早く結婚しなさい』って、笑ってた」


 きっと、同じセリフはずっと言われていたのだろう。


 それでも、実際に先が見えてきた時とそうでないときでは、受け取る側の感性も全く変わる。


「由実、こんどの夏休みに絶対に遊びに行くからな。それまで頑張ろうぜ」


 これは俺の中でずっと決めていた。


 アメリカの夏休みは日本のお盆とは性格が違う。本当の休暇のための期間だ。期間も長さも個人差があるけれど、家族や恋人とゆっくり過ごして鋭気を養うという文化だ。


 だから、それまでの時間で二人のこの先を考えようと決めていた。


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