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第26話 答えは当時から出ていた




 右手をそのまま残して、左腕を徐々に下ろして再び彼女を腕で抱く。


「祐樹君……。私ね、一人でだんだん痩せてきて、このまま死んじゃうんかなって思った。それで、お部屋の掃除を始めたの。その時に祐樹君の手紙を見つけたの」


 それを覚悟しながらの身辺整理とは、どれだけの勇気が必要だったのだろう。


「経験不足って怖いね。今なら祐樹君の気持ちがちゃんと分かる。あの頃から私のこと心配してくれていたんだね」


「そうだったか?」


 もう10年前の話だ。手元を離れた手紙1通1通の内容までは残念ながら忘れてしまっている。


「本当にわがままだったけれど、会いたくなったの。私のことを心配して想ってくれた人は10年前に現れていたって。私の初恋、間違ってなかったんだって。私こそ、本当に遅れてごめんなさい」


 彼女の手が俺の手を胸元に引き寄せる。


 柔らかい感触に触れたときに、ふと気がついた。先日よりも弾力と柔らかさが増している。戻ったという方が彼女的には正しいのだろうが。


「分かっちゃった? 本当に10日くらいでここまで戻ったんだよ」


 導かれるように、当時は触れることすらできなかった膨らみを感じる。


 少しずつ、立ち直りかけている由実。激しいことはまだ無理だけど、彼女の願いは叶えてやりたかった。それが、現実から逃避するための快楽を求める刹那的なものであっても。


 枕もとで二人の顔が同じ高さに揃えられた。


 最初は唇同士が触れ合うだけのキス。当然のようにすぐにそれだけでは我慢出来なくなる。


 互いの荒い鼻息を感じながら、もっと互いを感じていたい欲望をより一層高めていく。


「あの頃が信じられないくらい強気だなぁ」


「もぉ。それは言わないで……」


 強がっていながらも、顔は真っ赤に染まっている。


「分かってるって。俺たちもう大人だもんな。でも、アメリカで15歳って言ったら、みんなガールフレンドがいるとか言われてた。『おまえは遅い』って言われたこともあったけど、仕方ねぇよ。週に1回しか会えないんだ。しかも同級生で付き合っているのを隠し通すのは大変だと思うから」


「そうだったね。でも、あの頃のお願い叶っちゃったよ」


 考えてみれば、今日のデートにしたって、由実にとってはそれなりにしんどかったのではないだろうか。


 昔の記憶からすれば、すっかり痩せてしまった足を両手で撫でてやる。


「祐樹君……」


「俺も同じだ。一度は諦めた……。諦めた……はずで、新しい付き合いもした……けど……」


「けど?」


 こちらを焦らせない彼女の話し方は当時から独特で、いつもそれに助けられていたっけ。


「お互いに社会人になって、このあとどうするか話し合ったときがあった」


「うん」


「ただ、返ってきた答えは『これからもいろいろなところに一緒に遊びに行ける関係でいたい』ってものでさ。俺から別れを決めたんだ……」


 その「いろいろなところ」に、今日のテーマパークも入っている。


 だから、それ以来俺は近づかないでいた。


「祐樹君、ありがとう……。私のために、今日一緒に来てくれたんだよね。辛い思い出があるところなのに……。でも、祐樹君はそこで私のことを幸せな言葉で包んでくれたよ。凄いよ」


 もし、今日のようなことがあったとして、由実でなかったら、果たして同じことができただろうか……。


 いや、たぶん無理だったと思う。


 彼女でなければ俺はいつまでもウジウジしながらすべての過去から抜け出すことはできなかったと思うから。


 由実の言葉に声で返すことはせず、抱きしめている腕に力を入れる。


 それだけで分かってくれたようだ。



 ベッドサイドの時計は日が変わったことを知らせていた。


 お互いの体温を感じながら存在を確かめることをやめなかった俺たち。


 こんな由実とも、あと半日もすれば遠く離れてしまう。


 少しずつ気持ちが落ち着いてからは、俺の胸に顔をすり寄せている由実を抱きながら、何がベストなのかを考え続けた。


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