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第24話 初恋の相手は




 おみやげの購入で混雑しているショップを横目に出口を抜ける。由実に言ったとおり、車で数分のホテルに到着した。


 チェックインをして部屋に向かう。


 平日の閑散期だったとしても、当日予約という迷惑な条件だったにも関わらず、部屋からはさっきのパークが目の前に広がる。まだライトアップが消えていないから、就寝前というよりも、休憩を終えたらまた出ていきそうな気分だ。


「これじゃ寝られないよ」


「気持ちは分かるけど、明日は早いぞ」


 はしゃいでいる由実を先に入浴させて、荷物を片づけた。


 今回の一時帰国で彼女と一緒にいられるのは今夜が最後だ。



 本当にあっという間だった。けれど、俺の人生を変えるには十分なインパクトのある時間に間違いはなかった。


「祐樹君……、お風呂入ってきちゃって」


 バスローブを纏った由実が部屋の奥から呼ぶ。


「分かったよ」


 今日は1日、由実とよく歩いた。前半と後半では場所も内容も全く違ったけど、あっという間で楽しかった。


 明日は、空港に彼女を送っていかなければならない。


 行きたくないと思っている由実を連れて行くのは、ある意味残酷な話だ。


 後先を考えなくてもいいのなら、さっき彼女が言っていたように、明日の飛行機に乗せなければいい話だが……、現実はそうもいかない。


「由実……」


 お湯に浸かりながら名前を呟いてみる。


 偶然が手伝ってくれたとしても、全く情報が無いところから、手を握れるところまで来たここ数日のことは数ヶ月前には予想すらしていなかったことだ。


 帰国と受験を自ら決めた当時、由実に寂しい想いをさせてしまったのは、間違いなく自分なのだから。そこは謝らねばならないだろう。


「祐樹君、呼んだ?」


 浴室のドアが開き、顔を出す彼女。


「あ、ごめん。昔のことを思い出しちゃってさ」


「昔のこと?」


 急いで体を拭き、同じようにバスローブ姿で部屋に戻ると、湯冷めしないように部屋が暖められていた。


「由実がここにいる。俺さ、今でも夢見てるんじゃないかって思うんだ」


「私も……。夢なら覚めてほしくない」


 窓の外の夜景が見えるように、部屋の明かりを落とした。


「あのね、祐樹君は初恋っていつだった?」


「どうかなぁ……。いわゆる仲の良い女の子ってレベルだと小学生だった気がする。彼女にしたいとか、その先もって思い始めたのは……中学かな」


「そっか。私ね、小学校で全然もてなかったんだ。あの体型だったしね」


 意外だった。あの人懐っこい由実が誰からもアタックされていなかったなんて。


「でも、アメリカ行ってね。優しい男の子に出会ったんだ。話しかけてくれたし、相談にも乗ってくれた」


「それが由実の?」


「うん。でもね、彼とは週に一度しか会えなかったんだよ? しかも授業時間だけ」


 ここまでくると、他の人には入ってこられる情景ではない。


「由実……」


「祐樹君……が、私の初恋だったんだよ。だから、あの2年半は大変だったけど、幸せだった」


「俺は、そんな由実を……。後悔したのは間違ってなかったんだな。初めてずっと一緒にいたいって思ったのは、由実だったよ」


 日本に帰国して、誰とも友人が出来なかった時でも、彼女のことを思い出していたのは間違いなかったのだから。


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