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第23話 過去と未来の変換点




 あとは、いつ現地に飛ぶか……。


 頭の中のカレンダーを開いて、毎年恒例にある仕事と照らし合わせようとしたときだった。


「お待たせ」


 夜で冷えてきた俺の頬に暖かいカップが触れた。


「これから夜のショーでしょ。ここで見ようよ。はいこれ」


 カップのふたを開けてみると、ホットココアだった。俺も由実もあまりコーヒーは飲まない。そんなところも覚えていてくれた。


 水上ショーがメインで行われている場所からは離れているから、音楽もBGM程度にしか聞こえない。でもかえってそれがよかった。


「祐樹君……。私、明日行かなきゃダメかな……」


 言いたいことも分かる。せっかく居場所を見つけられたのに、離れてしまう運命は確かに気の毒だ。


「俺さ、必ず会いに行く。それと、由実が帰って来られる場所を作っておくから、いつでも帰っておいで」


 ショーが終わって、俺たちは水辺のレストランに場所を移した。


「もうね、今の何もかもを捨てて、祐樹君と一緒にいられれば、それもありかなって思って」


 もっと若くて、学生の頃だったら、そんなやり直しもありだろう。


「由実、俺たちももう大人になっちまった。きちんと一つずつやっていこう。俺も、急いでやることがある」


「なぁに?」


「由実が家族になってくれるための部屋掃除だ」


 不安そうに表情が固くなった顔が崩れて吹き出す。


「もぉ、不安になっちゃったよ。そうだね、周りに迷惑をかけちゃいけないね」


 ピザとパスタがメインの夕食をとって、園内を再び散歩する。


「このあと、どこに泊まるの?」


「さっき、ホテルの予約取っておいたよ。すぐ近くだから安心して」


「もう、段取りいいなぁ。前の人ともけっこう来てたんでしょ?」


「ん……、まぁな。どうして」


「だって、さっきお手洗いの場所とか地図を見ないで教えてくれたし、慣れてるかなって思って」


「そうだな……、回数だけなら来ていたかもしれない。でも、それだけだ……」


「私と来て、大丈夫だった? いろいろ思い出しちゃったかなって」


 俺はワゴンの前で足を止める。昼間はスナックを出してくれる店なのだけど、閉園時間も近いからすでに閉店していて人気もない。


「由実……。ありがとうな。由実のおかげで俺の中にもハッキリ区切りが付いたよ。俺の隣で歩いてくれるのは由実なんだって教えてくれた」


「祐樹君……、頑張っていたんだね。私が役に立てたなら嬉しい」


 二人の唇が再び触れた。どうせ誰も見ていないし。見られたって、ここはそれも許される特別な空間だから。


「由実……、オーランドも二人で行けるかな?」


「うん。遊びに来たときに連れて行ってあげる」


 閉園のアナウンスが流れはじめ、彼女の手をしっかりと握ってゲートを出た。


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