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第14話 突然の質問




 夕方、この間と同じ大宮駅で佐藤と待ち合わせた。


 この日だけはどうしても休むことが出来ず、相談をしたところ、夕方まで外出をしてくれるとのこと。


 定時の時間が来て、すぐに会社を飛び出す。本当はダメだと分かってはいたけれど、この日は時間内の休憩は一切取らずに、黙々と仕事をやっつけた。


『親戚と夕方待ち合わせるので』


 一番波風が立たない理由だ。まさか女性と待ち合わせるとも言えないし。


 先日と同じように彼女は先に着いて待っていてくれた。約束の時間に遅れたわけでもないのに。


「私、心配性だから早めに動いちゃうんだよね」


 前回と同じように一緒に帰り、二人で部屋に戻って夕食を食べる。


 これまでは電子レンジに頼った食生活だったのに、冷蔵庫の中の食材で作るなんて数ヶ月前には想像もしていなかったことだ。


「今日は1日ごめんな」


「ううん。午前中は病院に行って、午後はあちこち電車で移動してたから。久しぶりだったぁ」


 佐藤の声がどことなく無理をしているように聞こえてしまう。


 鍵を渡してでも家で休んでもらっていた方がよかったのかもしれない。


「なぁ、佐藤……」


「ん?」


「ここまできて、今さらとやかく言うつもりはないんだけど、体、どっか悪いのか?」


「えっ?」


「いや、帰国してまで病院に行くって、やっぱりなんかあるのかなって。ずいぶん疲れていそうなときもあるし」


「…………」


 最初は顔をこわばらせていた彼女。


「波江君、ずるいよぉ。でも、昔からそうだったよね。私が風邪気味の時も、のど飴買ってくれたりしたもんね」


「まあ……。そんなこともあったよな……」


 突然、涙の筋が彼女の頬に流れた。


「あんまり……、調子はよくないよ。生理も不調になっちゃったし。この前ね、その検査してもらってたんだよ。今日はその結果を聞いてきたの」


「そうだったのか」


 それまで大きく体調を崩したことがなければ、些細なことでも気になってしまうだろう。


「でもね、特に悪いところは無いって。その代わりストレスとか疲れが溜まってるから、少し休みなさいって言われちゃった」


「そうか、よかった。佐藤も頑張りすぎたんだ」


「きっと、そろそろ落ち着きなさいって神様が言ってるのかも」


 それは正直俺にだって当てはまる。今年26歳になる。最近の晩婚化の流れからすれば早いのかもしれないけれど。


「本当にね、生理不順は怖かったよ……。ねぇ、波江君は今でも子供好き?」


 補習校の当時、同じ会社の子どもたちの中でも年上だった俺はよく面倒を見させられていた。俺も彼らと遊ぶのは好きだったから、自然とその流れは出来ていたのかもしれないが。


「そうだなぁ。子供は好きだな」


「そっか。もし、それが私との子供だったら?」


「えっ?」


 飲んでいたビールを思わず吹き出しそうになる。


 咳込んでいると佐藤が背中をさすってくれた。


「ごめん。変なこと言っちゃって。あるわけ無いよね」


 ようやく落ち着いて、再び佐藤の顔を見ると、申しわけなさそうな表情をしながら視線が揺れていた。

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