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第4話 走馬灯

「うっ……く……あぁ……」


 ゴーレムの身体がクッションになったとはいえあの高さから落下したんだ、

 ボクが受けたダメージは甚大。

 これは流石に、もうダメだろうなぁ……

 だけど、これで奴は……


 霞んでいく視界の中、倒したと思ったはずのケラウノスがゆっくりと立ち上がった。

 身体じゅうヒビが入っているがまだ動けている。


「こ、この女。クソッ!我の、我のボディが……こうなったらお前の身体を切り刻んでぶちまけてやる!我の崇高な使命を理解せず、この生きるに値しない世界で……ゆ、許せん!!」


 ケラウノスが腕を振り上げる。

 ああ、ダメだった。倒し切れなかった……ごめん、みんな。

 その瞬間、乾いた音と共にケラウノスの頭部が弾けた。

 頭を飛ばされたケラウノスはそのまま仰向けに倒れていき視界から消えた。


 誰かが……止めを刺してくれたんだ。

 じゃあこれで、もうこいつによる被害は出ないんだ。

 それなら後はボクが死んでいくだけ……それで幕引き……


 赤ん坊を抱いているお母さんが見える。

 隣にはアンママとメイママも居てやっぱり赤ん坊を抱いている。

 お父さんが順番に赤ん坊に額を当てていったりして……これってまさか


 次に浮かんできたのは床を這っている3人の赤ん坊。

 何か競争してる感じだ。


『ええと、おじいさんとおばあさんと孫娘とベヒーモスとリッチーは力を合わせてラプラムを引きます……どんぶらこっこ、どんぶらこっこ』


 そして次はお母さんにお話を聞かせて貰っている小さな女の子達。

 ああ、やっぱりこれってボク達だ。

 ボクとケイト姉とリリィ姉。

 それにしてもこのお話。お母さんがお父さんから聞いてリメイクしたらしいけど……今思うと無茶苦茶だなぁ。



『もう、3人ともドロドロになって!一体どこのお父様に似たんでしょうね……』


 野山を駆け回って服をドロドロにして帰ってきてメイママがボク達をお風呂でわしゃわしゃ洗って……ていうか誰に似てるかガッツリ言ってるよ。


『こら、嫌いなものもちゃんと食べなさい!!』


 嫌いな食べ物を3人でこっそりと交換し合ってたらアンママに見つかって怒られた。

 

 その後も段々成長していくボク達の姿が浮かんでは消えていった。

 そういえば、死ぬ前って今までの人生がフラシュバックするって聞いた事があるな……


 弟が生まれ、妹達が生まれ。

 学校に行くようになって。

 リリィ姉が酷い目に遭って引きこもって。


 その後、3人で他所の学校に転校してそこでリリィ姉はユリウスと出会ったんだ。

 あいつのせいでリリィ姉は異世界に家出して行方不明になっちゃって……


『もしリリィの身に何かあったら……その時は絶対にお前を許さないから、覚えておいて!それとケイトにも近づくな!!』


 そう言ってあいつの胸倉を掴んだっけ……

 だけど段々ともしリリィ姉が人生を取り戻せるとしたらあいつだって思って託したんだ。


『覚えておいて。リリィを泣かせたり裏切ったりしたらその時は斬るから』


 ボクの判断は間違ってなかった。

 あいつのおかげでリリィ姉はまた人を愛することが出来る様になって……子供も生まれた。


 学校を卒業後はルイス猟団に入って色んなところに行って。

 悪い奴らを斬っていって。お酒に溺れて……

 それからエミールに出会って……


 リリィ姉に酷い事をした男を見つけたけど結局殺せなくて。

 そうしてエミールと付き合いだして……

 

 ああ、振り返りももうすぐ終わりに近づいている。

 これでボクは死んじゃうんだなぁ……

 仕方ないよね。沢山殺してきたんだから、これは当然の報い。


『一緒に住まないかな?』


 これは……エミールの声だ。

 ごめん、結局返事はちゃんとできないままに……


『大切なの事は一緒に居て楽しいんじゃなくて『離れたくない』か』


 リリィ姉の言葉だ。

 離れたくない……エミール。

 本当はボク、怖かったんだ。

 酔った一夜の過ちから始まった関係だったけど、君はボクにとって……大切な場所だった。

 仕事で戦いに出た時に帰って来れる大事な……


 でも人を殺してきたボクだから。 

 進んだ結果もしダメになったらどうしようって怖くて……

 だから、ごめん。このままボクは……

 

『あんたも前に進んでくれよ。姉さん!もう自分を赦せ!!』


 これは確か……リリィ姉を再び傷つけようとしたあの男を殺そうとして止めに来た弟の言葉だ。

 自分を……赦す……

 

「エミ……ール……」


 声が漏れる。

 死は覚悟していた。これは罰だって思っていた。

 だけど……だけど本当は………

 

「死に……たくない…離れたく……な……い。エミール……」


 天に向けて伸ばした左腕を誰かが取る。

 ほとんど見えなくなってきていたけど感触で分かった。

 その人はボクにとって大事な……


「エミー………ル……………………あり……が………………………………」

最終話は19時あたりに更新予定です。

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