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くだらない私の日常 新人なろう作家の日常妄想系エッセイ

意外と知らない『九尾の狐』~殺生石が割れたのです~

 

 こんにちは~!! ひだまりのねこですにゃあ!!


 ご存知の方も多いとは思いますが、先日、栃木県那須町の国指定名勝史跡「殺生石せっしょうせき」が二つに割れたことで、日本国内はこれが吉兆なのか凶兆なのかで大騒ぎとなり、世界中のメディアも一斉に報じるほどの大ニュースとなりました。


 なぜ石が割れたことでここまで大騒ぎになるのでしょうか?


 それは、この殺生石には、大昔から伝わる妖怪「九尾きゅうびきつね」の伝説が言い伝えられているからです。


 世界中で話題となったのは、おそらくナルトや鬼滅の刃などのアニメや漫画、ゲーム文化の影響とウクライナ侵攻やコロナに端を発した世界的な不安な情勢と相まって様々な憶測を呼んだことが原因だと思います。



 那須町のHPに掲載されている九尾の狐伝説を見てみましょう。


“九尾の狐

平安の昔、(みかど)の愛する妃に「玉藻の前」という美人がいたが、これは天竺インド、唐(中国)から飛来してきた九尾の狐の化身でした。帝は日に日に衰弱し床に伏せるようになり、やがて、陰陽師の阿倍泰成がこれを見破り、上総介広常と三浦介義純が狐を追いつめ退治したところ、狐は巨大な石に化身し毒気をふりまき、ここを通る人や家畜、鳥や獣に被害を及ぼしました。やがて、源翁和尚が一喝すると石は三つに割れて飛び散り、一つがここに残ったと言われています。その石が「殺生石」と伝えられています。”

 那須町HPより引用 https://www.town.nasu.lg.jp/0224/info-0000000398-1.html



 はい、というわけで、「殺生石」に封じられていた「九尾きゅうびきつね」が解き放たれたのではないかと騒いでいるんですね。


 騒ぎになる理由としては、九尾の狐がとても強力な力を持っているからということがあります。


 中世から伝わる三大妖怪、「大嶽丸」「酒呑童子」「玉藻前」の一角でもありますしね。



 それにしても実に壮大なスケールの物語です。


 殷代から平安時代まで、中国、インド、日本の三国を舞台に二千年以上に及んでいるわけですから、これはたしかにロマンがあります。


 様々な物語のネタになってきたのも無理はないですよね。



 ちなみに、この伝説ですが、実際にあった史実がベースになっていて、お話の中に出てくる人物は実在の人物もしくはモデルになった人物がいます。


 たとえば源翁和尚について見てみましょう。


“源翁和尚は,南北朝期の曹洞宗の僧で,室町時代の応安4(1371)年には,結城家8代直光の招きで結城を訪れ,奈良時代に律宗の寺として創建されたといわれる安穏寺を禅宗の寺に改めて開山しました。

 この源翁和尚は,那須で悪い煙をふきあげて人や鳥たちに害を与えていた殺生石を二つに割り,石の中にいた悪霊を成仏させた人物として知られており,このことから石を砕いたりする槌を「げんのう」と呼ぶようになったというエピソードを持つほど親しまれた僧侶です。

 また,源翁和尚が使用したと伝わる 数珠と 払子(ともに県指定文化財)が今も安穏寺に残されています。”

 茨城県結城市HPより引用:https://www.city.yuki.lg.jp/page/page003220.html



 この源翁和尚の逸話に関しても、槌を使って砕いたとするものから、お経を唱えて鎮めたとするものまで、幅広くバリエーションがあります。


 そもそも今回引用したHPの記述ですら、割れた数が三つと二つで違っていますよね?


 九尾の狐と関係ないので深追いはしませんが、伝説の元になった史実を考えてみたり、変化を辿ってゆくというのは、とても面白いものなのです。


 

 ところで九尾の狐って、そんなに恐ろしい存在なのでしょうか?



 元々、九尾の狐は西王母に仕える霊獣、または神獣です。


 西王母は、日本で言えば天照大神のポジションとなる女神、もしくは仙女、聖女のことです。


 九尾の狐は、天下泰平の時代に姿を現すとされ、麒麟や鳳凰などと並び称される瑞獣で、漢皇室の守り神でもありました。しかも徳の無い悪い君主が現れると革命へと導くとされる素晴らしい力を持っています。


 つまり、九尾の狐は本来善き存在だったのです。 


 え……じゃあなんで恐ろしい妖怪の代表格みたいになっちゃったの? って思いますよね。


 これを語りだすとたぶん10万字では終わらないので、簡単にまとめます。



 古代中国だけではなくて、日本を含むアジアには、昔から長生きした生き物は特別な力を持つようになるという信仰がありました。


 狐に関しては、1000年生きた狐は全てを見通す力を持った天狐になるという伝承が有名ですが、なぜかこの狐、美女に化けて男性から精を集めることでパワーアップするんですね。


 なんかサキュバスっぽいですけど、男性は歓喜しそうですけど。


 天狐まで昇り詰めるとそういうことはしなくなるそうなんですが、下級の時は頑張って男性を誘惑するのです。


 別に殺されたりするわけではないので、お互いにウィンウィンだとは思うのですが、まあ悪さをする妖怪扱いされるようになってゆくわけです。


 おそらく、九尾の狐が元々子孫繁栄という地母神的な性格を持っていたことも手伝って、天狐と九尾の狐が同一視されるようになったのでしょう。


 九尾の狐=天狐=男を惑わすエロ狐のボスで超絶美女という感じでしょうか。


 時代を下るごとに、次第に九尾の狐は善と悪の両方の属性を持つようになっていったのです。

 


 ちなみに、九尾の狐=悪のイメージを植え付けた代表作と言えば、明代の「封神演義」が有名です。

 

 殷の紂王の妃であった妲己(だっき)の正体が千年狐狸精、つまり千年生きた狐の化け物だという設定ですね。


 妲己のように、後世九尾の狐認定された美女は他にもいて、周の褒姒、唐の楊貴妃などもそうですが、面白いことに、元々そんな噂や話が存在したわけではありません。


 むしろ、唐代の詩人白居易が詠んだように、妲己や褒姒の美しさは、狐が化けた紛い物ではなく本物だという真逆の使われ方をしていたのです。


 一方で中国南北朝時代の「千字文」には、妲己が九尾の狐が化けた妖怪という注釈がされているので、たぶん男を惑わす美女=狐というイメージは、広く定着していたのかもしれません。



 傾国の美女が九尾の狐と広く認知されるようになった背景としては、唐の玄宗が安史の乱で都を追われる最中、楊貴妃を泣く泣く殺すことで、味方の不満を抑え込み、都を奪還したことがあるでしょう。


 色情に惑わされず、覚悟を示したからこそ、殷の紂王や、周の霊王のように国を失わずに済んだという教訓として、後世に伝わったのだと思います。



 ちなみに、このとき殺されたとされる楊貴妃ですが、実際には極秘裏に逃がされて日本に亡命していたとする説があります。というか、中国ではそれが常識レベルで根強く信じられています。


 日本では当時の国際問題となるので、表向きな資料は残っていませんが、その裏付けとなる痕跡は日本全国に残されているので、私は強くこの説を推しているのです。


 

 ところで、九尾の狐伝説のなかで登場するインドと中国ですが、日本、中国、インドと言えば仏教ですよね?


 空海が日本に持ち込み広く信仰された仏教神荼枳尼(だきに)の名前が妲己と似ていたことが原因で混同されたのだと個人的には思っています。


 もちろん名前だけではありません。


 荼枳尼はインドの人喰い夜叉であったダーキニーが大日如来の化身である大黒天によって仏教神荼枳尼(だきに)となったわけですが、大日如来といえば、中国の西王母、日本の天照大神と同一視される神さまです。


 西王母に仕えた九尾の狐と大日如来に仕えた荼枳尼という関係性、荼枳尼はインドでは元々性を司る神さまでもありましたから、妲己との名前の相似性もあいまって、荼枳尼は日本では狐に乗った姿で描かれるようになっています。ちなみに元の荼枳尼には狐要素はありません。


 また、荼枳尼は稲荷神・お稲荷様でもあります。稲荷神の使いがなぜ狐なのか、不明とされていますが、もしかしたら、こういう事情があったのかもしれませんね。



 私はゲームをやらないので詳しくは知らないのですが、九尾の狐の正体が天照大神だという設定のキャラクターを見つけました。


 このキャラを考えた人が知っていたのかは不明ですが、実はマイナーながらそういう説もあるのです。

 

 これもおそらく大日如来=西王母=天照大神という流れから生じたものでしょう。


 ちなみに西王母には、九尾の狐だけではなく、三本足の烏も仕えているのですが、三本足の烏といえば八咫烏ですよね?


 実は八咫烏の足が三本になったのも、西王母との混同だと考えられます。元々の八咫烏の足は二本なのです。ちなみに九尾といわれる「玉藻前」も元々は二本の尾だったりします。



 時代が下るにしたがって様々なものが混同され、微妙に姿を変えながら、殺生石の伝説が現在の形で完成したのは江戸時代だと言われています。「玉藻前」の尾が九本になるのもこの頃です。



 現在、世界に目を向ければ、徳の無い暴君が暴れています。


 私には、このタイミングで殺生石が割れたのは偶然とは思えないのです。


 

 九尾の狐は、徳の無い悪い君主が現れると革命を起こす神獣。


 平和を願う日本国民の、いいえ、世界中の祈りが願いが届いたのだと、私は信じています。

 



 最後に、九尾の狐扱いされた美女たちですが、残された記録を見る限り、操られたというよりも彼女たちを喜ばせたい一心で皇帝や王たちが頑張り過ぎただけのように感じます。


 後世の創作によって脚色された悪女というイメージではなく、聡明で誰からも好かれる、そんな素敵な女性だったのでしょう。


 少なくとも国が滅んだことを彼女たちのせいにするのは、あまりにも酷と言わざるを得ませんし、格好悪いのでやめた方が良いんじゃないかなと思うのです。



 まあ、年をとらないもふもふな狐美女とか最高だと思いますので、彼らが夢中になるのは痛いほどわかるんですけどね。


挿絵(By みてみん)

 九尾のねこ (本文とは関係ありません)

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i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
[良い点] 読み応えがありました! ひだにゃんってば、博識~♪ 七生もいつか、こんなエッセイ書きたいな~。 七生も七尾なら、ひだにゃんとしまにゃん加えて九尾の猫?!(笑) これからも宜しくね~♪
[一言] 九尻の狐って、中国の殷王朝時代に暴れたあの狐と同一人物である。とされる説と、全くの別人などとささやかれていますね。昔すぎてどれが正しいのかはわかりませんが(汗) それはさておき、あの石の話…
[良い点] 荼吉尼天に言及がありましたが、日本では稲荷大明神に習合されてもいて、お使いが狐。つまり、稲を運んでくる五穀豊穣の神が、ネズミを取る益獣としての狐に同一視されるという繋がりがあるですよね。神…
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