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8 愛は記憶である。

 とても怖い夢を見るときがある。

 ……深い、とても深いそこが見えない真っ暗な闇の中に落ちていく夢。

 そんな夢を見るときがある。

 そんなときは決まって、私が私自身のことを、大嫌いだと思っている夜のことだ。

 目が覚めると、私は真っ暗な夜の中にいる。

 ……目覚めたとき、私は必ず泣いていた。

 怖くて、悲しくて、情けなくって、たった一人で泣いている。

 まるで小さな子供みたいに。

 怖くて怖くて、それからずっと眠れなくなる夜がある。


 愛は記憶である。

 

 幽霊 ホロウ 一人目 竹田かげろう(いらない子)


 朝起きると、かげろうの頭のねじが外れていた。


 その日、幽霊ホロウの一人である竹田かげろうがいつもよりも少し早くにベットの中で目を覚ますと、枕元に『青白く光る小さなねじ』が落ちていた。それは、かげろうの頭から外れた、『かげろうの頭の中に入っていたネジ』だった。

 それが自分の部品の一つであることに、かげろうはすぐに気がついた。

「……ど、どうしよう?」

 かげろうは焦った。

 もし、自分の頭からネジが一本、外れているという事実が『浮雲ひまわり先生』にばれてしまったら、きっとかげろうはこの『地下の浮雲ひまわり実験施設』(みんなが『幽霊ホロウの学校』という名前で呼んでいる場所)から追放されて、街の外にある真っ赤に燃えるマグマの海(いわゆるゴミ捨て場だ)の中に、『いらない子』として捨てられてしまうだろう。

 だからかげろうは、どうしても、この『自然に頭のネジが外れてしまった』という事実を隠さなければならなくなった。

「……とりあえず、ポケットの中に、隠しておこう」

 かげろうはその薄暗い闇の中でぼんやりと青白い光を放っている小さなネジを手に取ると、それを壁にかけてある自分の学校指定の黄色いコート(黄色はひまわり先生の一番好きな色であり、それから黄色い色は目立つので幽霊たちの監視や管理にも都合が良いらしい)の裏ポケットの中にしまいこんで、隠すことにした。

「……ふう。まあ、とりあえず今はこれでいいかな?」

 かげろうは額の汗を拭った。

 それから「あ」と気がついて、自分の部屋にある丸い大きな鏡を見て、自分の容姿を確認した。髪の毛をあげて額を見てみたり、背中や足の裏とか、いろんなところを確認したけど、どこにもおかしいところはなかった。

 それを確認してから、安心したかげろうはなんとなく、ふと部屋の窓を開けて、『永遠の夜の世界』と呼ばれるいつも真っ暗な星と月のない夜空を見上げた。

 それは新しい風を部屋の中に入れるための行為だったのだけど、すると、いつもならどこにも星の光っているはずのない真っ暗な空の中に光る一つの星を見つけた。

 そのきらきらと光る美しい星を見て、思わずかげろうはその動きを止めた。

 ……かげろうの大きな二つの黒い目は、その『奇跡と呼べるような輝き』に、釘付けになった。

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