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「つまり、もう空は飛べないってことだよね」
にっこりと笑いながら、いつもの明るい調子でジラは言った。
『はい。その通りです』
みちびきが答える。
「OK。じゃあ、とりあえず、自分の目でもUFOの状態をチェックしておこうかな? みちびき。UFOの外には、なんの装備もなしで出られる?」
『大丈夫です。地下の世界は地上の世界となんら変わりはありません。なんの装備もしなくても、問題はないはずです』みちびきは言う。
「OK。なんの問題もない。なんの問題もない」
ふふっと笑いながら、ジラはまるで自分自身にそう言い聞かせるようにして、UFOの銀色の床の上を軽くスキップして歩きながら、言う。
『ジラ』
「なに?」
操縦室を出て行こうとするジラに、ドアが開いたところでみちびきが言う。
『装備は必要ないのですが、そのまま『武器』も持たずに外にでるのですか?』
みちびきの声を聞いてジラは壁にかかっている『自分の銀色のレーザー電気銃』(可愛らしいうさぎのシールが貼ってある)に目を向けた。
そして数秒後に、「うん。武器はいらない」と言ってまたにっこりと笑うと、そのまま「じゃあ、またあとで」とみちびきに言って、ジラは操縦室をあとにした。
みちびきはジラに返事をせずに沈黙している。
やがて操縦室の明かりは自然に消えて真っ暗になった。それはエネルギーを節約するための処置だった。
みちびきの映っていたパネルも消えて、ジラのいた操縦室の中には、生命の存在を感じさせるものはなにもなくなった。