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ジラは最初、ロープで真っ暗な穴の中に降りてきたときに、ある程度注意してみていたのだけど、その入り口を見つけることができなかった。(そんな秘密の入り口のようなものがもしかしたらどこかにあるかもと思ってはいたのだけど、穴の底のあの地獄のような風景があまりにも衝撃的だったので、その確認はまだちゃんとはしていなかった)
暗い穴の底で、ジラに語りかけてきた不思議な声は、そのまま『こっちです。こっちにきてください』と言ったような感じで、ジラをこの場所まで導いた。
一応、警戒はしていたのだけど、ジラはその不思議な声に従うことにした。(その声の人物の正体に興味があったからだ)そしてジラはその不思議な声に素直にしたがって、この場所までやってきたのだった。
その地下世界にある幽霊の街に侵入した地上世界のスパイであるマゼンタ・Q・ジラをこの瓦礫の山にまで導いた不思議な声の主だと思われる人物が今、ジラのいるところに小さなランプの明かりを持って近づいてきたのだった。
『コード、『unknown』がきます。ジラ。気をつけてください』みちびきが言う。
「大丈夫だよ。わかってる。ちゃんと準備しているから、安心して、みちびき」片目でウインクをしながら、耳につけている銀色のイヤリングに向かってジラは言う。
そんなジラの右手は、いつの間にか、腰のバックの中に入っている特殊な捕獲用電気ロープの鞭の持ち手に伸びていた。(ジラが相手に見つからないように、背中の後ろで、スイッチを入れると、電気ロープの鞭は一瞬だけ青白い光を放った)
小さなランプの明かりは、ジラのいる場所の少し手前の場所で、ぴたっと止まった。
「……あの、どなた、ですか?」
手に持っている古風な古いランプの放つオレンジ色のぼんやりとした光の中で、その人物はそう言った。その声は、『小さな女の子の声』だった。
……明らかに、か細くて、怯えていて、そして、震えている声。
でも、その声はまちがいなく、ジラの頭の中に聞こえてきたあの不思議な声と、まったく同じ声だった。




