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短編エッセイ集

ガバ設定多数のランキング作品に対しての所感 ~ご都合主義は良いが、ご都合主義『感』が強いのはダメだろう。という視点~

作者: レルクス

 ご都合主義。


 作者にとっての防衛手段ともいえるタグである。


 パパッと日間ハイファンタジーランキングを見てきたら、10位までの内3つにこのタグが含まれていた。


 要するに、『この作品は、作者の都合により物語が構築されています』という宣言でもある。


 このタグを使用は『多少のガバがあるかもしれないけど、物語のためにそうしてるだけだからスルーしてね』という主張が見え隠れする。

 ただ、『作者本人が、無意識下では、自分に文才がない。もしくは低いものであるということを自覚している』ともいえる。


 ランキングにだって様々な作品があり、この『ご都合主義』のタグがあったりなかったりする。

 その上で、少なくとも、ランキングに載っているだけで無料で読める作品……要するに『書籍化前』であれば、このタグが存在する限り、作品の『ガバ』に対して、ツッコミを入れる気はない。


 もちろん、金をとっている書籍の方で同じガバがあれば、筆者もフォローする気はない。だってご都合主義というタグは書籍にはないから。

 ただ、作品タイトルに『ご都合主義』という言葉が含まれているのならツッコミは入れない。そんなところだ。面白くなさそうだったら買わないけど。


 例えば……

『俺の種族が『人間』から『ご都合主義主人公』に進化したので、欲望を解放してハーレムを作ります』

というタイトルの作品があったとして、ちゃんとリミッターが外れていたら、多少のガバなんぞどうでもいいと心の準備をして読むだろうが、リミッターがかかっていたら冷めるし萎えるので読まない。そんなところである。



 ……筆者の『ご都合主義』という言葉に対する付き合い方に対して、ある程度わかって頂けたと思うが、最近、とある『そもそも』が頭に思い浮かんだのである。



 なろうレビューをするYouTuberの動画を見ていて、設定のガバ……特に、『主人公にやらせたいことが先にあって、そのために世界の設定を作っている』ような作品に対して、動画主は『ご都合主義』という言葉を使っていた。


 まあ、総合日間ランキングで上位を狙おうとする場合、手軽さや気軽さ……要するに、本当に何も考えずに読むことができて、それでいてカタルシスを得られる作品というものが求められるので、『主人公全振り』みたいな感じになるのだろう。


 ただ、このあたりの動画主が選んでいる言葉を聞いていて思う。




 そもそもだけどさ。異世界があるっていうこと自体、ご都合主義でしょ。




 言い換えれば、『ご都合主義を減らせ』という指摘が飛び交う中、『いや、そもそも原則として、小説って全部ご都合主義では?』という視点を筆者は持ったわけだ。

 作中世界が魔法ありの地球だろうと、そんなパラレルワールドがあるということ自体、ご都合主義なわけだ。


 このそもそも論は、盤面そのものをぶっ壊す意味合いが強いので、この指摘に対して賛否両論があることは筆者も認める。


 そのため、『では読者は何を作品に対して思っているのか』という点をここで挙げよう。


 本エッセイにおけるある意味でのタイトル回収にもなるが、要するに、【ご都合主義『感』が強いのが嫌】なのである。


 ★


 没入よりも没入感。

 臨場よりも臨場感。

 緊張よりも緊張感。

 リアルよりもリアリティ。


 読者が『作品』に対して上げてほしい、高めてほしいと思っているのは、後者の『感覚』に対するものだろう。


 これらを支えているのは、筆者は『魅力的な世界』だと考えている。


 上記の四つの感覚が強く引き出される作品に対して、多くの読者が思うのは、



 『こんな世界に入ってみたい』



 というものではないだろうか。

 主人公の隣であのモンスターをぶっ倒したい。魅力的なヒロインキャラに関わってイチャイチャしてみたい。

 といった場合はキャラクター性に魅力があるという話だが、世界観に魅了されるというパターンもあるわけだ。


 わかりやすい例を挙げれば、キリトもアスナもリーファもシノンもユウキもアリスもいなくたって、『SAO』の二次小説は書けるのだ。ナーヴギアがあればデスゲームスタートである。

 本質的に言えば単なる高校生でしかないキリトやアスナがあそこまで人気なのは、キャラクター性に加えて、『SAO』という小説の【世界】で生きて、成長して強くなったからだ。


 だからこそ、『魅力的な世界』が必要だと言いたいのである。


 ……まあ、『とある魔術の禁書目録』みたいな、ヒロイン一人のスピンオフだけで一大ジャンルを築くようなリアルチートはちょっと除外……というか殿堂入りとさせてもらうが。


 ただ、もう一度言う。



 『こんな世界に入ってみたい』



 そんな小説を読んでみたいし、なんだか、最近出会えていないように思う。


 だから、魅力的な世界が必要なのだと、何度でも言いたい。


 ★


 主人公のためだけに用意された世界。


 まだ、『好きな明晰夢を見られるアイテム』を使ってそれらの世界を体感するとか、そういう設定ならまだいい。主人公と読者がそういう心構えで『世界』に入れるからだ。


 筆者は読者ニーズを取り入れるということに対して反論はないし、物語の『表面』を読者ニーズで組み上げようとする手法は大変適していると思う。


 ただ、読者ニーズは読者ニーズであって、『世界』との因果関係はないのである。


 読者ニーズだって、突き詰めていくと『一つのシーン』でしかないわけだ。


 それをただ何も考えずに連ねたところで、『唐突』にしかならないのである。



 ……いやそもそも、追放ざまぁを読んでいると、【その作中世界に、主人公とその仲間が最初からいなかったら、何も問題が起こっていないんじゃないか?】と思うことがある。


 昨今だと、『主人公がどこかに行くと、そこで偶然何かが発生する』というシチュエーションがある。

 このフレーズの中で一番ヤバいのは、『発生する』という点。

 『問題の発生』の因果関係が『主人公』と直結しているのだ。

 これじゃ単なる疫病神だよ。


 主人公が町に来たから、近くの森でドラゴンが目覚めるのか?そんな疫病神のマッチポンプなんていらないんだよ。



 問題を抱えていない世界などない。

 だからこそ、作者に気に入られるという過酷な運命を背負った主人公が、それらの問題をどのように関わっていくのかが重要なのだ。

 主人公が到着したら問題が起こる。だとダメなんだよ。

 主人公が持つ何らかのスキルが原因で問題が発生する。というパターンもあるけど、それなら、主人公はそのスキルとどのように向き合うのか。というのがそもそものテーマになってるわけで、あちこちに移動しまくるわけない。



 主人公に一貫性がない。という指摘をよく聞くが、そもそも世界に安定性がないのだ。

 ……いや、『安定性がない世界』という設定で、いかに主人公が柔軟な行動をとるのかというテーマもなくはないので全否定はしないけど、作者がそれを理解していないのは、読んでいてつまらない。

 厳密に言えばつまらないというとちょっと違うか。『バイトの休憩中に読むには適してるけど、金を払おうとは思わない』と言う方が適している。



 結局のところ、ちゃんとした設定がないと、没入感がなくなって作品をしっかり読む気がなくなるのだ。


 あと、どうせイチャイチャするのなら、素敵な世界で生きているヒロインの方が良い。凄くも強くもない、ただ可愛いだけのヒロインなんて見飽きました。


 ★


 内容が散らかってきた。


 閑話休題を兼ねて、最後に、筆者が作者に求めたいことを一つ言おう。


 『なんでもいいから、一つ、【壮大な何か】を設定してほしい』


 ということだ。


 邪神だろうが至上主義だろうが、なんでもいい。

 その概念が物語に存在し、関わっていくというだけで、物語には一つのテーマが生まれるのだ。

 あとは、そのテーマが持つ壮大さと、主人公たちキャラクターの性能のバランスが取れてさえいれば、物語にはなる。


 読者ニーズは読者ニーズでしかない。それは物語を作ることはあっても、世界を作ることはない。作中の『世界』には全く関係のない話なのである。



 『こんな世界に入ってみたい』



 そう思える世界を、もう一度、妄想してほしい。


 そしてあなたは、その素晴らしい世界で、どんな主人公になってみたいか、もう一度、妄想してほしい。

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― 新着の感想 ―
[一言] そんなメジャーな作品なら知ってるけど、まぁ、そゆことね。(笑 紹介ありがとうございました。 ってか色々…勝手に『』の中を追加妄想して会話が成り立ってない気がするんだけど大丈夫? 単純に…
[一言] 「こんな世界に入ってみたい」と思える壮大な作品を書けるド素人、もしくはなろう発のラノベ作家、もしくは小説家志望…ねぇ。 何回も聞いたことあるような話をちょっとアレンジした風のエッセイの内容…
[一言] 中途半端に壮大さというか作り込まれてる作品が一番飽きられてるのか、見かけ上少なくなってる感は有りますね。 なんでもいいから、といっても、そんな簡単に出てくるものをずっと軸にし続けてモチベー…
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