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07 令嬢はご本家へ到着です

 帝都の一角にあるそこはご本家のお屋敷はいつみても圧巻です。

 こんな一等地の二丁目、そのほぼ全域がご本家の敷地になっているとか信じられますか?

 塀がどこまでもどこまでも続いてる感じですね。

 そして牛車は立派な門構えへとたどり着きます。

 しかしながらスグにはお屋敷に入れません。


「検分があるんだよ、ちょっとまっててね」


 ふむ、御曹司でもわざわざ検分を受けるんですか。


「……道孝様、そちらの方は?」


「僕の婚約者になった智子さんだよ、そのまま入っていいよね?」


 さすがは御曹司のパワーで検分も形だけで済む、そう思っていたのですが。


「お待ちください道孝様。そちらの方にも私達の検分を受けてもらいます」


 あら、意外と職務には忠実のようです。

 でも、その言葉を聞いた道孝はというと。


「……おや?婚約者の前で僕に恥をかかせるきかい?」


 そう言って今まで私に見せた事がないような冷徹な視線を相手に向けます。


「し、しかしご当主様からは……」


「……職務に忠実なのは感心だが、融通が効かないのは困りものだね。大丈夫、父には僕からは良く言っておくよ。だから良いよね?」


 その時、道孝の発する霊力によって牛車の中の温度が数度、下がったような感じがしました。

 ちょっ、この人、こんな事で霊力の威圧をかけるの?

 私は慌てて道孝の手を握って声を掛けます。


「道孝さん、落ち着いてください。その方もお仕事で仕方なくなのです。私は気にしませんから」


 そうでしょう?と私はニッコリと検分役の方に微笑みました。


「ふむ、悪い悪い、つい取り乱してしまった。見ての通り、僕の婚約者は出来た人でね。特に気にしないようだけど、どうする?そのまま通してくれる?」


「……はい、お通りください」


 検分役はそう言って、私はキチンとした検分を受けずに中に入る事になりました。

 牛車はそのまま門へと入ります

 って道孝の口調と雰囲気がまるで合ってませんね。

 一瞬、殺気まで漂わせてませんでしたか?


「あ、あれで良かったのですか?」


「うん、君が気にする必要はないよ。彼等も仕事だから仕方なくやってるだけだからね。仕事が減って喜んでいるんじゃないかな?」


 いや、絶対そんな事はないと思うけど……。

 どう見ても、職務を無理やり邪魔されて、不満に思っている感じだったよね?


 などと私が思っている間にも、ゆっくりと動き出した牛車と共に、道孝はそう言って笑みを浮かべます。

 そして私が添えた軽く手をポンポンと軽く叩くと、


「でも意外だね。君からそんな積極的なアプローチを取ってくれるなんて、ね」


 嬉しいよ、とわざとらしく耳元で囁きます。

 その言葉に、添えたままになっていた手に気が付いた私は慌てて手を離しました。


「べ、別に私はそんなつもりでは――」


「分かっているよ。あの場を収める為だろう?……でもとっさの事とはいえ、君の方から触れ合ってくれるとはね。夜の方も期待しても良いのかな?」


 道孝はそう言って私に底意地の悪い視線を向け、嗜虐的な笑みを向けてきます。


「な――」


 その時です。

 牛車が不意に止まりました。


「さぁ、ついたよ」


 そう言って道孝は先に降りると、


「どうぞお手を取ってください、我が姫君」


 と、恭しく私に手を差し伸べます。

 私は一瞬、その手を取ってよいか躊躇しましたが、結局のところ取らざるを得ませんでした。

 無言で道孝の手を取ります。

 すると思いのほか、優しく引き寄せられて地面へと降りました。


「……ありがとうございます」


「なーに、婚約者として当然の事をしただけだよ。ん――!」


「えっ!?」


 次の瞬間、大きな霊力のうねりを感じ、そちらを振り返りました。

 そこで目にしたのは――。


「うそ……なにこれ!?」


 突然の事に足がすくんでしまう私でしたが、道孝は素早く私をかばうように前に出ると、接近してくるモノを自らの拳で振り払います。

 振り払われたソレは地面に叩きつけられるように激突し、私はその時始めてその姿をちゃんと見る事が出来ました。


「蒼い……龍……?」


 地面に横たわるソレは全身を瑠璃のような美しい鱗で覆われた、蛇にも似た生き物でした。

 しかしその顔の部分から垂れ下がる同じように蒼い髭と、頭部のから生えている二本の蒼い角は蛇などでは絶対にありません。

 龍、初めてみる本物の龍です。


「智子、大丈夫かい?……おい、なぜ蒼龍を野放しにしている?」


「ハハハハ、悪いね。一寸した歓迎をするつもりだったのだが驚かせ過ぎてしまったかな?」


 私は驚きの余り声を出せないでいると、そんな何処かで聞いたことがあるような声が響いてきました。


「……お前はまだ会わないはずだろ?」


 道孝は顔を顰めながら舌打ちをし、怒気を含んだ声でそんな事を言いました。

 そして私はゆっくりと、その声がした方角に目を向けると――。


 私は声をあげそうになるのを寸での所でかみ殺しました。

 だって、だってそこにいたのは――。


 そこにいたのは道孝と同じ顔をしたもう一人の道孝でした。

 私は振り返って、今まで私と一緒にいた道孝をみます。

 そこには先程と同じように顔を顰めた道孝がいます。


 ……ちょっと、これ。どーなってるの?

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