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00 プロローグ

 私、藤原智子(ふじわらとしこ)は某国公爵家末端の一人である。

 上にも下にも兄弟姉妹はおらず一人っ子ゆえに父母からは愛情を持って育てられていた、と思う。


 そして我が一族の長たる現公爵家当主様といえば父親である前公爵が死ぬや否や、長年温めていた計画を実行し、兄を殺して自らが公爵の座についた、ぶっちゃけていえばトンデモない悪党である。

 権力大好き、お金も大好き、そして女性も大好き。

 おまけに悪知恵も大層働くらしく、どんな手段を使ったのか兄を殺して公爵の座を奪ったというのに、罪に問われた様子もなかった。


 そんな極悪非道を絵に書いたような現公爵家当主様も寄る年波には勝てないらしく、もう永くないと言われて久しい。

 幸いにして、次期公爵様と言われている人は、父親とはうって変わって人格者らしく、その点では安心です。

 私の一族の話はこんな所ですね。


 そしてその私はというと、現在とある舞踏会に参加しているのでした。

 主催者は一族とは関係のない貴族様です。

 まぁ私も?末端ながら公爵家一族の半ば義務としてこのような舞踏会には機会があれば参加しています。

 目的はというと、踊るのが好き、などと言う事ではなく、その、アレですね。

 ぶっちゃけていうと、将来のお相手探し婚活パーティーなのです、はい。


 言い訳させて貰うと、このような目的で参加しているのは私だけではありません。

 参加している令嬢の殆どは……、いえ、令嬢だけではありませんね。

 男性も大半はそれが目的のはずです。

 だってみんな獲物を狙うハンターのようなギラついた目をしていますからね。

 間違いありません。


 そしてそのような多くの方が集まれば、自然と派閥同士で固まるものです。

 あっちにいるのは松方家の派閥ですね、そしてそっちは西園寺家の派閥、桂家の派閥もありますね。

 そして我が藤原家の派閥はというと……。

 そんなものは無かったりします。


 可笑しいですね?

 私、自身は兎も角として、我が藤原家は国内でも有数な一族です。

 それなのになぜ派閥みたいなものが無いのでしょうかね?

 それはわが一族の生業に関係があります。

 退魔師、そう呼ばれる職業を生業にしているわが一族は、あまり他の方々とは交流がありません。

 ……全くないわけではありませんよ?

 当主様やそれに近い人達は、当然のように神社仏閣を初め、大商人や他の貴族当主達とも交流はあります。

 所詮は利権目的ですけど。


 しかし、それとは違う、この場の婚活パーティーに集まっている当主その物ではない令嬢や紳士達からは、夜な夜なあやかしの血を啜っているだの、人をいけにえにしてぁゃしぃ呪術を行っているだのの根拠のない噂話を信じている方も多いのです。


 私も幼少の頃より、いわれのない差別をうけてきました。

 曰く、なんとなく陰気な感じがする。

 曰く、関係を持つとあやかしに目を付けられそう。

 曰く、不仲の娘を呪っていそう。

 などなどです。


 ……思い出しただけでもむかっ腹が立ってきますね……。

 そんな風評被害にあって、思い人にあっさり振られ、婚期を逃した一族の娘達が、泣く泣く一族が用意した好きでも何でもない男性と結婚した姿を見て来ています。

 中には喪女をこじらせてしまい、一族からも結婚相手が見付からず、カップルに対して呪いの言葉を呟きながら一生を終える、なんて女性もいるとかいないとか。


 そんな一族の女性たちを間近でみる機会が多かった私は、絶対そんな人生は送りたくないと固く決意してたのでした。

 少ないながらも友達を作り、その伝手で漸く入手したこの舞踏会の招待状を握り閉め、この場所に訪れたのです。

 舞踏会の招待状を入手出来るチャンスは限られています。

 数少ない機会を生かさなくてはいけません。

 そうしないと、次はいつ参加出来る事か……。


 私の両親は一族では数少ない、恋愛結婚です。

 お父様は藤原の一族ですが、お母様はそうではありません。

 お母様の母、つまり私の母方の祖母に当たる方は異国の出身で、つまり、お母様も私も異国の血を引いています。

 そして出は貴族でもありません。

 昔はどこぞの商会の看板娘だったと聞いています。

 そしてお父様と出会い、一目で恋に落ちてついにゴールされたとか。

 ……その代償としてお父様は、一族にどこの馬の骨ともしらぬ異国の血を入れたとして、多くの者から顰蹙をかってしまったとかなんとか。


 そうまでして一緒になった二人は、その、私の目からみてもいまだにラブラブです。

 幾ら家族だからと言って、年頃の娘の前でイチャつかないでください。

 つまりツマルこと詰まれば、そうした両親の日常をみて育った私は、私も絶対恋愛結婚してみせる、そう誓ったのでした。


 両親のように一目で恋に落ちる男性……、とはいかなくても、何かしら心に感じるような男性を見つけないと。

 チャンスには限りがあるのですからね。


 でも婚活というのはやはり甘いものでは無いようです。

 両親から引き継いだ容姿がちょっとした自慢の私ですが、名前を名乗ったとたん何のかんの理由を付けて離れていく男性がなんと多い事か。


 ……やっぱり恋愛結婚は私には難しいのでしょうか?

 いえ、簡単に諦めるわけにはいきません!

 こんなに男性がいるんだもの、一人ぐらい私でも良い、いえ私だから良いんだ!

 そう言ってくれる将来の旦那様候補がいる事信じます。


 信じる者は救われると言いますし、信じて大丈夫ですよね?

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