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ビニール袋とスプーンの有料化

 小売店で商品を入れる為のビニール袋がまずは有料化され、その後、弁当などを買う際に付いてくるプラスチック製のスプーンの有料化が決まった。

 世界的にプラスチックゴミの海洋生物への悪影響の懸念が高まっており、それに対応する為の動きの一つだ。

 だから、それを「無意味だ!」と反論したいのなら、当然ながら、ビニール袋やプラスチック製のスプーンを減らしても海洋生物への悪影響は減らないという事を根拠や証拠と共に訴えるのが筋だろう。または、「海洋生物など、どうなっても構わない」と訴えるか。

 

 ……が、まぁ、こうはならない。

 

 この有料化に対して、何故か「ビニール袋やプラスチック製のスプーンを減らしても、CO2削減効果はほとんどない」という反論がなされた。それらがプラスチック製品全体の占める割合はとても低いから、と。つまり、論点のすげ替えだ。それまでテレビ番組などで紹介されていた海洋生物への悪影響の問題は、ほとんど話題に上らなかった。

 詳しい調査結果があるかどうかは分からない。が、海に流れ、生物が間違って食べてしまうプラスチック製品の割合ならば、ビニール袋もプラスチック製のスプーンもそれなりに高いのかもしれない。もし、そうなら無意味とは言えないだろう。

 

 また、「有料化」と表現されているが、この表現も実はおかしい。

 

 ビニール袋もスプーンも店側は無料で仕入れている訳ではない。当然ながら、お金を支払っている。店は売り上げを出さなくてはならないのだから、それは商品原価に上乗せされている。原価が高くなれば、商品の価格も高くなる。

 つまり、確りと明記されていないだけで、本当は我々はこれまでもビニール袋やスプーンに対して代金を支払っていたのだ。しかも、ほぼ強制的に支払わされていた。それが「払うか払わないか選択できるようになった」というのが今回の変更の本質だ。

 短期間では、商品の価格は変わらないだろうが、正常に市場原理が働いているのなら、いずれ有料化された分、商品は安くなる事になる(因みに、弁当屋などでは直ぐにその分、値が下げられた所もあった)。

 ただし、ビニール袋やスプーンの需要が減った事によって、スケールメリットが失われ、その分、価格が高くなるという要因はあるかもしれない。

 公平にこの事の是非を問うのであれば、当然、このような内容も伝えなくてはならない。

 

 ……が、まぁ、こうはならない。

 

 少し会計の知識があれば誰でも分かるこういった知識を、報道機関の多くは説明しなかった。まるで消費者が一方的に損をするかのような伝え方。

 

 更に言うのなら、これは資源の有効活用にも通じる話である。

 

 ビニール袋もプラスチック製のスプーンも原料は石油だ。もちろん、石油は有限だ。使えば減ってしまう。必要もないビニール袋やプラスチック製のスプーンの為に消費されるのはだから「資源の無駄遣い」だ。

 もしも、もっと他の有益な事に使われたなら、社会はより豊かになるだろう。仮に使われなかっとしても、石油の価格が安くなる。わずかながらではあるが、石油を利用している全商品の価格が安くなるのだ。

 資源の有効利用を考えるのであれば、この点も考慮しなくてはならない。

 

 ……が、まぁ、こうはならない。

 

 普段なら資源が貴重である事を訴えるニュース番組などの報道機関の多くは、何故かこの事を無視した。伝えている場合でも一言二言添えるだけだ。

 

 “資源”と一言で言っても色々あるが、労働力も資源の一つだ。

 

 ビニール袋やプラスチック製のスプーンの全体の需要が減ると、それらを製造している企業に悪影響があるという主張がある。だから「有料化は経済に悪影響だ」と。

 しかし、無駄な生産に“労働力”が使われるのは貴重な労働力の無駄遣いでもある。他のもっと有益な生産物を生産すれば、社会は豊かになる。

 例えば、もしそれで労働力が余ったのなら、その余った労働力を、実験的に分解可能なプラスチックの製造に充てても良い。その際の金の流れは考えなくてはならないが、その方がより価値のある労働力の使い方であるのは間違いない。

 

 ……が、まぁ、こうはならない。

 

 保守的な考えが支配的で、失業者と聞くと直ぐにそれをネガティブに捉え、それが余った貴重な労働力である事を忘れてしまう。社会の発展の為に活かそうとは考えない。ビジネスにとって重要であるのに。

 

 ビジネスにとって重要という意味では、プラスチックゴミを減らす試みのイメージ戦略における価値も捨て置けない。

 

 世界的に、環境への影響を考慮しない国は批判されるという傾向が高まっている。

 「環境問題に無関心だから、あの国の製品を買うのは止めよう」

 そのような声が大きくなっているのだ。

 だから、プラスチックゴミを減らす努力をしなければ、今後の日本社会全体のマイナスに繋がりかねない。逆に熱心に取り組む姿勢をアピールすれば、日本の輸出力にプラスの影響を与えるだろう。

 もちろん、このイメージ戦略は、ビジネス以外の外交にとっても有効である。当然ながら、その価値も考えなくてはらない。

 

 ……が、まぁ、こうはならない。

 

 日本の経済大国の地位はもう随分前から揺らいでいるのに、いつまでも安泰だと現実逃避しているかのようだ。

 

 自然保護に対する取り組みには、思想的な側面もある。

 

 「国益を重視するべきだ」と主張する団体の中には「日本の伝統を守るべきだ」と考えるところも多い。

 日本固有の宗教である神道は、自然崇拝をその最大の特徴にしている。その自然崇拝が、古来より「持続可能な社会」を実現する大きな力になって来た。

 つまり、自然破壊は神道を穢す事であり、そのまま日本の伝統を軽んじる事でもあるのだ。

 ならば、「日本の伝統を守るべきだ」と考える団体は、自然保護に大いに関心を抱かなければ筋が通らないはずだ

 

 ……が、まぁ、こうはならない。

 

 一部の団体を除いて、軍事力にばかり拘り、自然を保護するどころか原子力推進に賛成をし、むしろ積極的に破壊をしている。自然保護を訴える団体や個人などを逆に攻撃する場合すらある。

 

 もし、人間達の信念が強固で芯の通ったものであったのなら、それがどんな団体の利益になるか否かではなく、その政策を判断できなくてはならない。

 

 ……が、まぁ、こうはならない。

 

 通常時は環境問題の重要性を訴え、その解決を訴えている報道機関が、政権側がそれに対して行動をし始めた途端、手の平を返して攻撃をし始める場合がある。

 その有効性を正しく判断しようとはせず、ただただ政権批判をしたいが為の報道内容。

 

 もしも、立場の違いを乗り越えて、公平に物事を判断するように努められたなら、日本社会は…… 否、人間社会は随分と良くなるだろう。

 有効に資源を活用し、数多にある問題を乗り越えられる。

 

 ……が、まぁ、こうはならない。

指摘を受けたので、注釈を入れます。「石油製品全般」は言い過ぎでした。石油を原料とする一部製品ですね。


ただし、一応、↓のサイトでは全般に影響があるような表現が用いられています。

https://gooddo.jp/magazine/oceans/marine_pollution/plastic_garbage/plastic_bag/10739/

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