プロローグ
「悪役令嬢に転生したけど、家族と友情の方が大事だからシナリオぶっ壊すことにした!」のスピンオフ始めました。
のんびりペースでの更新になりますが、お付き合いいただけたら幸いです。
続けて第1話も更新します。
~プロローグ~
こんなはずじゃなかった。
こんな風に、悲しい結末にせざるを得なくなるなんて思ってもいなかった。
我儘で。
子どもっぽくて。
気を惹きたくて意地悪をしては失敗して落ち込み、肝心なところでなぜか素直になれない、絵に描いたような俺様な王子様と。
気が強くて。
プライドが高くて。
本心に触れられることを恐れるあまり、トゲトゲの言葉という名の鎧を身に纏い必死に己の心を守ろうとする意地っ張りなお嬢様。
互いに互いが好きなくせに。
素直に好きだとは言えなくて。
でも気づいてほしくて。
それなのに『好き』という本心に直に触れられることに恐怖してしまうというこの矛盾。
顔を合わせれば、なぜかいつも喧嘩ばかりの二人。
だけど、本当はとても仲良し。
ただ、そこに恋が絡むとダメダメになってしまう。
そんなぐだぐだで未熟な、幼い二人。
俗に言う『喧嘩ップル』という関係みたいなものかな。
喧嘩して。
仲直りして。
それを、繰り返し、繰り返し、幾度も、幾度も、ただただひたすらに繰り返し。
二人で協力して試練を乗り越え、共有する時間が長くなればなるほどに、お互いのことがよく見えるようになって。
そうして。
少しずつ、素直になって、意地を張らなくなって、まぁるくなって。
互いの『好き』の気持ちを受け入れられるよう成長していく。
長い時間をかけてハッピーエンドに。
幸せな未来を迎える二人になる……はずだった。
……なのに。
結局、二人のこの物語をハッピーエンドで終わらせることは、叶わなかった。
このささやかな二人の恋物語の、登場人物だけをピックアップして『乙女ゲーム』なるものを作ろう、という流れになってしまったことで。
二人が幸せになるはずだった物語の結末は、永遠に失われてしまったのだ。
望まない結末を突きつけられ。
望まないシナリオを書かされ。
納得できない出来のまま、ゲームは世へと解き放たれてしまった。
あれも。
これも。
二人の物語のために登場していた人物たちにも、望まないストーリーを作らされる羽目になってしまった。
物語の主役ではないけれど、主役を見守る立場にある重要な人物たちにも幸せになってほしくて、そのための理想的な結末を用意していたというのに。
それさえもが、一緒くたに奪われて、失う羽目になってしまった。
世の誰も知らない物語。
私と、彼女だけが知っている物語。
いつか。
いつか、きっと。
どこかで、二人の幸せな結末を発表しよう。
その願いもまた、終ぞ叶えられることはなかった。
愛しい愛しい二人の物語は未完成のまま。
あれから一筆も書き足すことのできないまま。
私たちの人生は、終わりを迎えてしまったのだから……─────