表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

親の自慢話がつまらない

天文8年10月10日

今日、親父と家臣たちが戦から帰ってきた。手伝い戦だったからそんなに戦をしていないらしい。軍勢が帰ってくるところを見たけど足軽にもそんなにけがをした人は見当たらなかった。たぶん影響力を示すために名前を貸すぐらいの感覚で今回の戦に参加したんだろうな。親父は戦場での働きを自慢してきたけど周りの家臣たちが苦笑いしていた。


分かるよ、子供にいい格好したいのは。でもさ、話を盛るのにも限度ってものがあるだろ。一人で何十人もの兵を倒したとか。子供でも分かるようなうそをつくんじゃないよ。だいたい援軍の総大将が自ら武器を取って敵と戦う状況ってほぼ負け戦じゃねーか。


今回の戦は壱岐守が那須氏の居城である烏山城を修理大夫から奪い取ろうとしたのだが、それには失敗した。烏山城を奪って自分が那須氏の当主であると示したかったんだけど、できなかったから敵を消耗させることが狙いだったと言いまわるみたいだ。戦の勝ち負けなんて声がでかい方が決めるのかな。いつの時代も声がでかい方が有利ってことだな。


その自慢話の中で元服して初陣をするかという話が出た。すぐに親父の初陣の時の自慢話になったけど、あと4・5年もすれば元服だって言われた。戦かぁ、いやだなあ。怪我したくないし、もちろん死にたくもない。今日、城から帰ってくる軍勢を見ていたら片腕を失った兵やめっちゃ怪我をした兵がいた。そうだよな、戦をすれば怪我をする奴も死ぬやつも出てくるよな。かと言ってこっちから戦をする気が無くても相手がそうだとは限らない。また、したくなくてもしなければならない状況に追い込まれることもある。あーやだやだ。


親父が戦に出ている間は名目上の最高責任者は俺になった。もちろん傍から見たら俺はただの餓鬼。実質的に指揮していたのは重臣たちの合議。もっともやることなんてあんまりないんだけどな。当主がいないのに重要な決断はできない。したとしてもうまくいかないか、当主が帰ってきたときに潰されるだけ。場合によっては家臣の誰かが何らかの責任を負わされて処分を受けて俺が恨まれる。そこに異母兄がいるせいでそっちを当主にという勢力も出てきかねないわけだ。あるいは北条や佐竹とかに寝返るとかかな。


というわけで戦の最中はたいして生活が変わることもなかった。しいて言うなら左衛門大夫がいつも戦に出たかった、戦に出たかったって言ってたぐらいだな。そういうの見ているとやっぱ現代人と戦国時代の人は価値観が違うなーって思った。適当に話を合わせていたけど、どうも理解できないわ。何で戦に出たがるかね。


そういえばさっき声が大きい方がって書いたけど、最近になって北条が将軍に巣鷂をもらったっていろんなところに言いまわっているらしい。うちの親父はその話をすると妙に機嫌が悪くなるわけよ。というのも親父は養子で小田家を継いだ。親父の本当の祖父、つまり俺のひいじいさんは信長より先に延暦寺を焼いたことで有名な室町幕府6代目将軍足利義教、大叔父は銀閣寺を建てた8代目将軍足利義政、叔父には11代目将軍足利義澄、そして今回巣鷂を送った足利義晴は従兄弟にあたる。


親父からしたら従兄弟が北条の支配を認めたような形だと考えたわけだ。この間の戦で足利一族と敵対したのにだ。足利の血を引く親父としてみれば不愉快な話だろう。北条が大きくなるきっかけも兄弟が殺されてだから嫌いなのかもしれないな。だから北条がでかくなってきたときに北条と手を結んでともに大きくなる道ではなく、佐竹と手を結んで北条に対抗する道を選んだのかもしれない。


どっちにせよ、迷惑な話だ。俺からすれば見たこともないじいさんの話なんてどうでもいい。親父がその路線を先々まで敷いて北条と敵対せざるを得ないような状況にしてほしくないんだけど。もしかしたら那須の親子喧嘩もそういったのが原因で起きたのかもしれないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ