(3)
僕の仕事は営業。
『営業』は嫌いじゃないし、正直楽しんでるタイプだ。ただ、そんな僕でもいよいよ落ちる時が来た。短いながら、僕は人生にストレスを感じたことがあまりない。むしろプレッシャーやら緊張感、出来ないけどやりたい事に対して非常にポジティブに楽しんでいた。そんな僕が初めてストレスを溜めた。全てが嫌で仕事を投げ出したかった。同期や会社の先輩方にも言えず、ただただ疲れていった。そんな時に浮かんだのは、彼女でも修司さんでもなく愛さんだった。
『ピンチです』
たったそれだけのメール。だけど異変を感じてくれた。その週末に僕らはまた夜景を見に出かけることにした。
仕事を早くに切り上げ、僕は愛さんの元へ向かった。
「お疲れ様。大丈夫?」
「ヤバい」
「どうしたの?」
「なんか疲れて」
「まぁ、亮は大変だし、頑張ってるもんね」
「自分なりにはやってるけど…」
「亮が社会人としてスーツ着て仕事頑張ってるのがウチには驚きだよ」
「ははっ。一番似合わないかんね」
「beachboysだから?」
「うん。もちろん」
そんな会話を続けながら僕は車を走らせた。
着いたところは星と夜景の両方が輝く山。
「ヤッバイね!めちゃすげぇ!愛さん!あれ見て」
僕はストレス極限状態ヤバメなモードを忘れていた。
「亮、なんか元気出た?」
「うん!なんか元気出た!めちゃsmileできる」
「よかった。やっぱり亮はそういう顔してる方がいいよ」
「そう?」
「うん!亮らしい」
「ありがとう」
僕はめちゃめちゃ嬉しかった。
「あっ、そういえばウチこの近くのキレイな公園知ってるんだけど行かない?」
「いいねぇ!何てとこ?」
「名前がわからない」
「マジ?どう探そう?」
「う〜ん…近づいたらわかるんだけど…」
「そっかぁ!じゃ、適当に走ってみる?」
「そうだね!公園めぐりだぁ!」
「だねぇ!方向音痴2人のアテの無い公園探しも悪くないね」
そうして僕らはアバウトに車で走っていった。
「なかなか無いねぇ」
「だなぁ。愛さんどんな名前か朧気でも覚えてない?」
「確か…何とか南公園かな。美術館があった」
「なるほど!じゃ美術館で検索しよう」
「そうだね!ナビは偉大だ」
しばらく走ると、
「あっ、亮!あれだ!あれっ!あれだった気がする」
愛さんが指差した先へ向かった。そして車を停めて外へ出た。
「さむっ!風強いし!」
「ヤバいね!愛さん大丈夫?」
「うん。とりあえずこの階段を登ると…あれっ?」
「どうしたの?」
「いや〜音楽がなるハズなんだけど…」
「でもキレイだよ」
「うん…あっ、10時までだった」
「あはは〜そっかぁ!じゃ、アウトか」
「残念。また来よう?」
「うん。愛さんが合う時に」
「亮こそね」
「だね!」
「でももうすぐ犬飼うじゃん?車大丈夫かなぁ?」
「徐々に慣らしてあげよう?犬も連れていこう。今から犬用ドライブに入るわ」
「あはは〜何それ」
「優しいドライブ」
「なるほど!嬉しいね」
「今度俺のオススメスポット行かない?」
「亮のオススメ?今度?」
「今日の方がいい?」
「う〜ん…いこう?」
珍しかった。大半そういう時は解散になるのだが…また1つ何か変わった。その頃になると僕は完全にストレスは忘れていた。
「じゃ、いこう!風景とかってより空気が美味しいんだ」
「いいねぇ!マイナスイオン」
「でしょ?」