第一章 ありがとう(1)
今まで僕は多くの人に支えられた。きっとこれからもそうだろう。今僕の隣にいる人もそう。これから始まる僕のステージはあなたがいたからだよ。ありがとう。今になって思い出す。たくさん思い出はある。どれくらい覚えてるだろうか・・・
今日僕は大学の卒業を迎えた。思えば4年はとても短くて、意外に充実していたと思う。きっとかなり恵まれていたのではないかと感じた。その夜に僕は仲間と、僕のバイト先で最後の晩餐ならぬ晩酌をした。お店の店長が気を利かせて出されたシャンパンがとても嬉しかった。自分で言うのも変な話だが、バイトは相当頑張っていたと思う。その甲斐あって店長とは仲がよかった。異性でありながら、異性として意識せずに話や仕事ができるのはとても嬉しいことであり、かなり好きな店長だった。
それから2週間して、僕は社会人への道を歩き始めた。
僕には大切な人がいた。もう4年付き合っている。なんやかんや大きな喧嘩もなく過ごしていて、結構幸せだと思う。ただ、正直に言うとお互いに浮気していないまでも、気になる存在がいたことがないと言えば嘘になると思う。ただ、今社会人デビューして彼女だけを思えるようになったのは確かだった。きっと3ヶ月間の研修の間、離れて暮らすからなのかもしれない。週に1度帰ってきては彼女と過ごした。たまに会える友達との時間も心地よかった。
そんな生活が1ヶ月経った頃、元バイト先の店長が仕事を辞めた。理由は「違うことに挑戦したかった」かららしい。でも、別に僕らの関係に何か支障が出るわけでもなかった。相変わらず飲みに行って同じような話をして、語っていた。そして夏を迎え僕は帰ってきた。
帰ってきた部屋はまた1人暮らし。でも何か誇らしかった。そして楽しみだった。これからまた元の生活圏で過ごせることが何より嬉しかった。