黒檀の翼・さよなら
「黒檀の翼」
コンクリの山
電線の枝
其れを自らの城に変え
悠々と舞う黒き影
迷いなどとうに消え
戸惑いなどは見せず
郷愁などは遂になく
ただあることを良しとする
広げた両翼の幅に見合うもの
ただそれだけを望んで──
その嘴を研ぎ
何を思うか黒檀の翼
眼下の哀れに列をなす
人型どもの姿見て
その爪を研ぎ
何を憂うか黒檀の翼
一度たりとてその羽を
広げることなき姿見て
「さよなら」
もういいでしょう、
捨ててしまって。
構わないでしょう、
殺してしまって。
僕は堕ちてゆくのだし、
あなたは朽ちていくのだから。