バッドエンドストーリー
閲覧ありがとうございます。
今回、少しだけ残酷描写が見受けられるかもしれません。
苦手な方はお気をつけください。
アッシュ様の目がヤバイ。
本気でアルを殺そうとしている。
直感的にそう感じた。
これには流石の兵士達も驚いて止めに入いる。
……、彼らは正気に戻ったの?
「アッシュ様、お待ち下さい!殿下の目の前で処刑などいけません!」
「そうです!殿下の部屋が血に染まります!」
「うるさい!黙れっ!」
アッシュ様は兵士を蹴散らす。
最早誰が敵か味方かもわからない。
「死ねえ!アルフィードォっ!!」
アルに向かってアッシュ様は剣を振り下ろした。
「やめてぇぇ!!」
私の叫び声が部屋に響き、アルが私の目の前で切られ、血が噴水の如く吹き出る。
「嘘……」
声にならない声を出し、私は涙を流す。
誰か嘘だと言って……。
「はははは、遂にやったぞ。遂にこいつの命を消してやった!!」
「アッシューっ!!」
クラウド様近くの兵士から剣を奪い、アッシュ様の胸と突き刺した。
「はははは、無駄だ!無駄だ!」
アッシュ様の不気味な声が響き渡る。
ねえ、私はどこで間違えたの?
どこで狂ったの?
私は自問自答するけれど、答えが出ない。
アルが倒れる。
無残な姿となって……。
私の目の前は真っ暗な闇に引き込まれた――。
『game over』
――。
――。
赤い血が垂れた様な文字が浮かび上がる。
ああ、そうか……。
終わったのだ。
私は生まれ変わってもこうなる運命だったんだ……。
『continue?』
突然そんな字が見える。
バカ言わないでもう沢山よ。
このまま終わって……――。
本気でそう思った。
すると突然ガクンと落ちた様な感覚になり、辺りが急に明るくなった。
「こ、小娘……、貴様……」
見るとアッシュ様が急所を押さえて悶えている。
「何、これ……」
これってさっき聞いたわよね……。
私が呆然と立ち尽くしていると、視界の中にアルが入ってくる。
「シル、逃げろ!」
アルが生きてる。
よかった無事だったんだ。
私は嬉しくてアルに駆け寄ろうとした。
「させるかあ!!」
アッシュ様が剣を抜き、アルを切ろうとする。
「やめてぇぇ!」
私はアッシュ様の前に立ちはだかる。
まるでスローモーションかのような動きで剣が振り下ろされるのがわかった。
それでも思うことは一つ。
アルを殺させはしない。
さっき見たような光景を二度も見たくない。
さっきのが現実でなく夢なのだとしたら、今度こそアルを死なせたりはしない!
「やめろぉぉっ!!」
アルの悲痛な声が聞こえるのと同時に私の身体に剣が食い込む。
ヌルリと暖かいものが体を流れ、熱いものが身体中を駆け巡った。
けれどこれが痛いのかはわからない。
目の前には目を見開いたアッシュ様がいて、そんなアッシュ様をクラウド様が横から刺していた。
次に見えたのはアルの顔。
何かを言っているけれど、聞こえない。
目が早さに追い付かず、唇の動きが読めない。
ポタポタと温かい水が私の顔へと落ちてきて、それでもアルが無事ならいいやと笑って見せる。
安心させる為にアルの頬に触れたいけど腕が動かず、ああ私はもうダメだと悟る。
薄れ行くアルの顔、その後ろに黒い影を見た。
これには見覚えがある。
『闇落ち』だ――。
ダメ……。
アルが闇落ちなどしてしまったら魔力が暴走し、何もかも吹き飛ばしてしまうかもしれない。
そう思うけど、もう私は動くことができない。
そして世界は闇へと落ちていく……――。
『game over』
――。
――。
また同じ文字。
一体何だと言うのだろう。
私にこんなものを見せて何になるの。
『Find the difference』
『continue?』
「何よ……。それ……」
私が絶望するかのようにため息をつくと、また辺りが明るくなった。
「こ、小娘……、貴様……」
アッシュ様がまた悶えている。
もういい。
やめて。
これ以上は見たくない。
私はよろめき、自分の身体に触れる。
血は流れていない。
確かに切られたのに、戻ってる……。
『Find the difference』
頭にさっきの文字が浮かぶ。
「何よ……、違い?探せ?」
私は顔を押さえながら目の前にいるアッシュ様を見る。
何も変わらない。
何も……。
そしてアッシュ様は剣を抜こうとする。
「アッシュ様、何をなさるのですか!お止めください!」
一人の兵士がアッシュを止めに入った。
ああ、あの人は正気に戻ったんだ。
でもここは私が止めに入ったところだ。
「うるさいっ!」
アッシュ様が兵士を振りほどき、改めて剣を抜く。
そう、ここで言うのよ。
「もういい。ここで処刑してやる」
予想通りアッシュ様は同じ事を言った。
そしてまた違う兵士達が止めに入ってくる。
同じ。
同じ。
全部同じ。
何も違わない。
だってこの後、アッシュ様はアルを切ろうとするのだ。
そしてアルが死ぬか、私が死ぬか、選択肢は二つしかない。
「うるさい!黙れっ!」
アッシュ様が止めに入る兵士達を振り払っていく。
でも、ダメだよね……。
このままじゃまた同じ結末になって、また苦しい想いをして、つらくて、悲しい。
変わらないなら、変えてしまおう。
私の中で何が燃える。
あの人の苦しむ顔は見たくない。
あの人の悲しそうな顔は見たくない。
シル、考えるのよ。
大切な人を守るために、大好きな人を苦しめないために……。
「アッシュ、やめろ!正気に戻れ!」
クラウド様が叫んだ。
初めて聞く言葉。
さっきとは違う展開。
そう言えば初めアッシュ様はアルの事をアルフィードと呼んでいた。
何故?
アッシュ様はアルの正体を知っているの?
そんな事はない。
バレるはずがない。
本当に?
……。
そう言えば昨日アルの正体を知っている人がいた。
その人も最初は違う人の姿だった。
私はハッとしてアッシュ様に向かって魔法陣を放った。
シルの中にある、ありったけの魔力を使って……――。
読んで頂きありがとうございます。
ゲームと言えば失敗した時にやる同じところからの『やり直し』だと思ってます。
ってなわけで今回はそれを強くイメージして書きました。
自分でも突っ込みたいところがなくもないですが、何とか入ってよかったです。
では、次回、良ければ再びお付き合いください。