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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
四章
94/122

困惑と答え

閲覧ありがとうございます。

気がつけばまた期間があいてしまいました。

ごめんなさい。

今回はシルの視点です。


 アルが拳に力を入れている時、私の頭の中はフル回転をしていた。

 それが逆に冷静に見えたのかもしれない。

 でも実際は違う。

 発狂しそうなくらいパニックだった。

 クラリス様が陛下と関係を持っていた?!

 しかも妊娠?!

 挙げ句の果てに黒薔薇のカードまで出てくる始末。

 本当にここは『ときめき♡きっと見つかる私だけの王子(プリンス)様』の世界なのだろうか?

 そもそもこのゲームってこんなヘビーな内容だった?

 確かに攻略対象者は多い。

 選んだ相手によってストーリーも変わると曖昧ながらも記憶にある。

 けどこれはあまりにもぶっ飛んでいる気がしてならない。

 それに私の記憶では『陛下』は攻略対象として入っていない。

 攻略対象じゃない人を攻略してるからこういうハチャメチャなストーリーになっているってこと?

 それほどまでにクラリス様は陛下を想っているの?

 それなら仕方がない。

 人の好みは様々だもの、クラリス様がそれを選んだのなら周りは全力で応援するべきだ。

 

 でも……、本当にそうなのかしら?

 

 クラリス様はこの世界の『知識』がある。

 それがどのくらいかはわからない。

 けど魅了魔法(チャーム)を意図的に使ったり、『シル()』との出会いを『登場』と言ったり、初めて会ったはずなのに『シルヴィア()』を『ベールの女』と知っている様な素振りを見せてたということは、私よりも遥かに知識があるはずだ。

 でもそんな人があんなお粗末な断罪イベントを起こす?

 あれはどちからと言えば切羽詰まった感じがした。

 だから内容もお粗末だったし、私はあの場で悪役令嬢を回避できたわけだけど……。

 そしてその代償というかのようにクラリス様はアルフィード様とクラウド様からの好感度を下げてしまった。

 クラリス様は本当にそれを望んでいたのかしら?

 そもそも本当に陛下を愛しているならクラウド様の婚約者候補になる必要はなかったわけだし、アルフィード様に近づく意味もないわけで……。

 それなのに関係を結ぼうとしたのは『逆ハーレム』を狙っていたとか?

 ダメね。それはどう考えても陛下だけ浮いてしまうし、現実的じゃないわ。

 ならばクラリス様が求めているのは何?

 陛下の子を身籠ったのは何故?

 その時、頭に黒薔薇のカードが浮かんだ。

 前世の記憶に全くない『黒薔薇のカード』。

 それは対象者のアルフィード様、クラウド様に届いていた。

 それぞれの気配は全く別だったけど、主人公(ヒロイン)に関わる人に届いてるってことは何か重要なアイテムと思った方がいいのかもしれない。

 前世の私がこのことを忘れているだけならいいけど、それを親友の姿を思い出せないのは何故だろう。

 言葉にできないような不安が私の胸を締め付ける。


「シル?」


 アルが私の異変に気がついた様で小声で聞いてきた。


「何でもないよ。それよりちょっと確かめたいことがあるの。少し付き合ってくれる?」


 アルは一瞬止めるような素振りを見せるけど押し留まった。

 そして「わかった」と頷いてくれる。

 真っ向から否定するんじゃなくて私の事を考えて返事をしてくれるのはとても嬉しい。

 だからこそ私はアルの力になりたいと思う。

 私のモヤモヤは後回しだ。

 今は出来るだけの情報収集をしよう。

 そう強く決意して私はクラウド様に声をかける。

  

「もう一度、先程見せて頂いた黒薔薇のカードを拝見したいのですが……」

「ああ、かまわないが?どうした急に?」

「少々気になることがありまして……」

「気になること?」


 クラウド様は首を傾げながらも黒薔薇のカードを出してくれる。

 悪趣味だけどやはり普通のカードだ。

 さっきは私を拒絶している感じがして触れなかった。

 でも今は何も感じない。

 もしかしたらアルが触ってくれたからかもしれない。

 これなら平気だ。


「シルは触らない方がいい」


 アルに止められて私は慌てて手を引っ込めた。

 それを見たクラウド様が呆れ顔になる。


「おいおい、そこまで過敏にならなくてもいいんじゃないか?幼子じゃあるまいし」

「念のためっていうやつですよ」


 そう言ってアルがカードを手に取り、字が書いてある面を私に見せてくれる。 


『『光の使者』を守る為にはジャイル国の女性を娶るべし。さすれば闇の力は打ち切られ、間違った子は消えるであろう』


 一件予言の様なこのカード。

 単純に読み取れば『光の使者』はクラリス様。

 ジャイル国の女は『シルヴィア()』と読み解くだろう。

 多分アルもクラウド様も同じ事を考えたはず。

 でもそれこそが引っかけな気がする。


「クラウド様」

「何だ?」

「このカードが届いたのはいつですか?」

「舞踏会の次の日だ」


 やっぱり。

 私と会ってから送られて来たんだ……。


「いたずらにしては悪趣味だろ?事が済んだら犯人を見つけてやろうと置いてたんだ」

「では最初からシルヴィア様を狙ったわけでも、このカードを信じていたわけでもないんですね?」

「それ色々と俺に対して失礼だからな?」

「はははは、すみません……」

「まあいい、はっきり言おう。こんな物を簡単に信じる馬鹿はいない」


 クラウド様の言葉にアルが強く頷く。

 

「予言モドキを行い、取り入ろうとする愚か者はどの国にも存在します。それをイチイチ信じて確認していたらその間に国が滅んでしまいますからね」


 まるで見てきたかのように穏やかに話すアル。

 

「それはジャイル国の誕生前の話だな?」 

「ええ。流石スピティカル国の王子様ですね」

「常識だからな」


 そう言えば私も勉強したと思い出した。

 四大国に属さない均等の国ジャイル国。その歴史は四大国と比べまだ数百年と浅い。

 その理由はまだ国に名前が存在しない頃まで遡る。

 その国は『予言』に振り回されていた。

 『予言』を当てた者が『王』として君臨するとなっていたからだ。

 だから四大国も欲を出して我こそはと『予言者』を国に送りこんだ。

 だが全てを言い当てれる『王』など存在しない。

 コロコロ変わる王に民は怒り、耐えられなくなった。

 そしてその国は滅んだのだ。

 

「だからジャイル国はどの国にも属さない。そして四大国も同じことを繰り返さない為に『老師』や『元帥』を置いている。彼らは一番『預言者』に近いからな」

「ですが所詮は人の言葉。実際は助言程度で近年ではあまり相手にされていません」

「……、詳しいな」


 感心するクラウド様にアルは 「博識なので」とニッコリ笑う。

 間髪入れずに「自分で言うなよ」と突っ込まれてるけどアルはニコニコしているだけだった。


「まあそれはともかく、正直なところ色々な事が起こりすぎてこのカードのことなどお前達に出会った日まですっかり忘れていた」

「忘れていた?」

「ああ。王宮の事件や、アルフィードの婚約解消もそうだが、それ以上にクラリスの懐妊の方が問題だったからな」


 クラウド様の立場ならそうかもしれない。


「王宮の事件など放っておいても容疑者は捕らえてあるし、アルフィードとは後日に話せばいい。だが、クラリスの事だけは早急に対策が必要だった」


 険しい顔をするクラウド様に、クラリス様が光の使者だからだと理解する。


「どうにもこうにも悩んでいる時にそのカードが俺の視界に入った」


 そう言って黒薔薇のカードを指差す。


「それは変ですね」


 アルが神妙な顔をしながら黒薔薇のカードを置く。

 クラウド様は「何が変なんだよ」と不機嫌そうな顔になる。

  

「たまたま視界に入ったとのことですが、この部屋のどこにそんな場所があるんですか?」


 そう言ってアルは部屋を見渡した。

 私達の周りには何もないから気がつかなかった。

 よく見てみると壁の辺りには山積みとなった本や紙、いつくらいから使ってないのか聞きたくなるくらいの書類の束がある。

 クラウド様は「ええい、あまりジロジロ見るな!」と赤くなりなから私達の視界を遮る。

 けれど別に恥ずかしいことじゃない。

 通常の貴族ましてや王族の書斎はこんなものだ。

 なにもない書斎など書斎とは言わない。

 それは書斎と言う名のついた応接室だ。

 でも他国の人間に見せるべき部屋ではないわよね……。

 クラウド様は人を信じし過ぎる気がする。

 そこが長所なんだろうけど……。


「クラウド様はこのカードを目立つ場所に飾っていたのですか?」

「馬鹿言うな。そんな不気味なカードはここにほったらかしに……。あ……」


 クラウド様は何か察したらしい。

 そう、書類は忙しくても暇でも日々増えるものだ。

 カードが届いてからクラリス様の懐妊を知るまでの期間、避けておかない限り埋もれていくことは確実だ。

 

「つまり誰かがクラウド様がカードに目がいくように仕向けた可能性があります」


 アルは真剣な顔で呟いた。

  

「誰かって、誰だよ」

「それを私に求めないでください。私がここの管理など知るわけないでしょう?」

「薄情者め!」


 そう言われても……と、アルは肩を浮かせる。

 

「クラウド様、クラリス様のお身体を調べられたのはどちら様ですか?」


 簡単に信じないと言っていたクラウド様をカードに従ってみたらどうなるかと思わせたきっかけはそれだ。

 アルフィード様もそうだ。

 アルフィード様だってリューク様の事がなければまた違った動きをしていたはずだ。

 人はきっかけ一つでどちらにも傾く。

 それは強い思いや大切なものであればあるほどだ。

 私の中で思いは強くなる。

 例えこの行為が主人公と敵対することとなり、悪役令嬢と呼ばれることになったとしても私は全てを明らかにしなければならないのだと。

 それが私の『役割』なのだと……――。

読んでいただき、ありがとうございます。

毎回更新が遅くなり申し訳ありません。


それでもブックマークをしてくださっている方、通りすがりでも目を通してくださる方。

何となく入っちゃったという方。

それでもこの作品を見て、読んでくださってありがとうございます。

これからも頑張っていきますので、また次回良ければお付き合いよろしくお願いします。

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