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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
三章
74/122

クラウド様の狙い

お待たせしました。

やっとこさ、更新です。


 私達が付き人になった理由はクラリス様に選ばれたって……、どういうこと?

 予想していなかったクラウド様の言葉に私とアルは互いに顔を見合せ首を傾げた。

 もし、クラリス様が私達のことを知って選んだと言うことならば、かなり状況が変わってくる。

 『シル』の状態でクラウド様と出会うなど、狙ってできるものじゃない。

 そもそもあの場にいたのはロジュアを追いかけたからであって、クラウド様が通るのを知っていたわけじゃない。

 それにクラウド様が私達をここに連れてきたのは偶然であり、クラリス様が指示できるはずがない。

 万が一それができるとするならば……。


「誤解するな。俺はクラリスの魅了魔法(チャーム)にかかってなどいない」


 クラウド様が私の表情から察したのだろう。心外と言わんばかりの顔で私達に迫ってきた。


「仮にだ。俺が魅了魔法(チャーム)にかかっていたとするならば、わざわざ俺が外に出なくともクラリスの条件に合う人間を集めさせ面接でもした方が早い」


 そう言えばこの人この国の王子様だった。

 人を探すのに自分で出迎えなくても他人に命令すれば簡単な話なのだ。

 あまりにもフランクに話しすぎていて忘れていた。


「おい、俺が王子だと忘れていたような顔をするな!」


 バレた。

 私は誤魔化す様にアルの後ろに隠れる。

 アルはそんな私を微笑ましく見ていたけれど、クラウド様には真顔になり問い始めた。


「それで?クラリス様が付き人に俺達を選んだというのはどういうことですか?俺達は貴方にやってくれと言われてここに来たはずですが?」

「まあ、そうだな。今の流れで疑問に思うのは無理はない。俺がお前達の『耐性』に目をつけてクラリスの付き人にしようとしたのは紛れもない事実だ。そして、クラリスがお前達を選んだというのもまた事実。何故ならお前の腕を治したあの神官が何よりの証拠だ」


 アルはそれを聞いて眉間にシワを寄せた。


「俺がお前の腕を治療するように呼んだ神官は俺の息のかかった人間のはずだった。それなのに来たのはクラリスの魅了魔法(チャーム)がかかった神官。それがどういう事か、お前なら大体わかるだろう?」


 クラウド様に言われアルは小さく舌打ちをする。

 私もそれで気がついた。

 今のクラウド様とクラリス様は外から見るとあまり関係がよくない。そんな状態でクラリス様に魅了された人が現れたら、怪しむのは確かだ。

 でもそれがどうしてクラリス様が選んだ理由になるんだろう?


「理由は『奴隷の烙印』ですか?」


 アルの言葉にクラウド様は「そうだ」と頷いた。


「都合が悪いだけなら『奴隷の烙印』などつけなくても難癖つけて追い出せばいい。それをせず敢えて『奴隷』にしようとしたのは何故だ?それは言うことを聞かせたい。無理矢理でも自分の手元に置きたいという表れだ」

「成る程。だからクラリス様が選んだと言われたわけですか」

「その通りだ。俺としてはお前達をクラリスのそばに置き、行動を監視させるのが目的だった。国外の人間だし、魅了魔法(チャーム)は効かない。まさにうってつけだ」


 クラウド様は鼻高々に言う。


「しかし、あの神官が現れてクラウド様の狙いが変わったと?」  

「流石だな。その読みはまるでアルフィードの様だ」


 満足そうに言うクラウド様とは対象的にアルの顔は曇った。

 嬉しくない。まさにそんな顔だ。

  

「知っていると思うがクラリスはジャイル国の第二王子アルフィードに固執している」


 アルの顔が完全に『無』になった。私は苦笑いを浮かべるしかない。

 クラウド様は気がついていないのか淡々と話し続ける。 


「今やクラリスはアルフィードと結ばれる為には手段を選ばないというような勢いさえ感じる。魅了魔法(チャーム)にかかった者を使って町にも噂を流し始めているくらいだ」


 私は町で女の人が呟いていた事を思い出した。

 

『ジャイル国の王子様とも婚約したって話よ』  


 あの時、知っている人と知らない人に別れていた。まだ流して間もない証拠なのだろう。でももしこれが皆が周知する事態になったら……。

 私は考えただけでゾッとした。

 人の噂は怖い。

 嘘でも大勢が信じてしまったら本当の扱いになってしまうことだってある。


「別に俺はアルフィードのことなどどうでもいい」


 クラウド様の突然の発言に私は我に返った。

 なんて事を言うんだと反発する前にクラウド様は続ける。


「アイツなら何とかすると俺は信じているからな」


 それを聞いて友情からくる言葉なのかと感動した。

 何だかんだいいながらクラウド様はアルフィード様を心配しているのだ。

 それなのにアルは相変わらず無表情でクラウド様を見ている。

 何でだろうと思っていると、私の視線に気がついたアルがクラウド様に聞こえない様に耳打ちした。


「ああ言っているが、面倒事を俺に押し付けるつもりなだけだよ」


 意外にもアルフィード様とクラウド様の友情って複雑なようだった。     

    

「そういえば、クラウド様に一つお聞きしたかったことがございます」


 アルの質問に「何だ?」とクラウド様は答えた。

  

「馬車の中でジャイル国の滞在城にスパイが潜んでいる仰っていましたが、それは誰ですか?」

「突然何かと思えば……。そんなこと、教えられるわけがないだろ」


 そりゃそうだ。誰がスパイだとバラしてしまえばその者は滞在城で働けなくなる。

 それにもし私とアルがこの事を世間に公表してしまったら国と国との信用問題に発展してしまうのだから。

 というか、この流れで突然アルは何を言い出すんだろうと私はアルの顔を見た。


「これは極めて重要な事です。俺達は庶民なので貴方が協力しろと言うなれば協力します。ですが、俺達はジャイル国の人間です。祖国を裏切ることはできません」


 アルの強い眼差しがクラウドを真っ直ぐに捉えた。

 クラウド様は笑みを浮かべる。

  

「成る程、スパイがいると知って黙ってるわけにはいかないわけだな?」

「そんなところです。今いるのが第三王子でしたら自業自得でしょう。私達がどうこういうつもりはありません。ですが今滞在城にいるのは第二王子とその婚約者の侯爵令嬢であるとか。いくら国が了承したとは言えど、クラウド様のその行動は庶民の私から見て、いいものではないと判断いたします」


 そう言ってアルは頭を下げた。

 クラウド様は頬杖をつき「ふむ……」と考える。

 

「わかった。今回は特別に教えてやろう」


 アルは「ありがとうございます」とお礼を言った。

 するとクラウド様は次の瞬間、耳を疑いたくなるような言葉を言った。

 

「そいつはもう滞在城にいないからな」


 いない?

 私とアルは顔は見合せないけれど、互いに身体が強ばったのが気配でわかった。

 滞在城から消えたのはリリィ達だ。やっぱり彼女達に関係があるのかもしれない。

 私とアルは息を飲んでクラウド様の言葉を待った。

  

「だが、タダでは教えられん。その者の名を教える前にお前達には会ってもらいたい人物がいる」 

読んでいただきありがとうございました。

良ければ次もお付き合いください。

また、ブックマークありがとうございます。

読んでくれるだけで嬉しいです。

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