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隠しキャラ転生物語  作者: 瀬田 彰
三章
72/122

流される

更新できず、すみません。

体調を崩していました。

アルとシルのイチャつきが原因かもしれません。

冗談はさておき、暑いので水分補給大事です。

喉が渇いていなくてもしっかり飲みましょう。


 クラウド様に言われ別室に連れてこられた私はメイド達の着せ替え人形と化そうとしていた。


「やはりシル様はこの肩出しドレスがよろしいかと思いますわ!」

「いえいえ、品がよろしいのでこういう大人しいドレスの方がお似合いです!」


 さっきからこの繰り返しでない色々合わせられては、メイド達が言い合いをしている。

 マリエッタなら即決で「お嬢様にはこちからが似合います」と素早く出してくれるんだろうな。とか思ってしまう。

  

「えっと……、あまり目立たないシンプルなもので結構ですよ?」


 私が苦笑いをしながらメイド達に声をかけると「いけません!」と即却下された。

 私の言葉が原因なのか、メイド達はヒートアップしてドレスを選びはじめた。

 私はため息をついて頬に手を当て近くの椅子に座った。

 頬がまだ熱い。

 原因はさっきのアルとのやり取りだ。

 駄目。恥ずかしい……。


「あらあら、まるで茹でダコみたいですよ」

 

 ぽっちゃりしたおばさんメイドがお茶を片手に笑顔で話しかけてきた。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


 そう言って受けとるけれど飲む気にはなれない。

 そう思った時、私を見る視線に気がついた。顔を上げるとおばさんメイドが私をジッと見ていた。


「何か?」

「いえ、意外だと思いましてね」

「意外?」  

「あの貴族嫌いで有名なシルちゃんがこんなところに来られて、しかも恋人を連れてとか……。ああ、昔の私(・・・)なら今頃町を駆け巡っているんでしょうね」


 おばさんメイドは残念と言わんばかりにため息をついた。


「あの、私が貴族が嫌いってそんなに有名なんですか?」


 王宮まで広まってるとかどんなだと冷や汗もので聞いてみた。

 するとおばさんメイドは私の背中を笑いながらバシバシと叩く。


「やだよ、シルちゃん。そんな町の話しなんてこんな場所にまで知れ渡るわけないじゃかいか!」


 笑うおばさんを見て私は若干怒りを覚えた。

 

「やだよ。睨まないでおくれよ。私とあんたの仲じゃないか」

「いえ、私は貴女を知りませんし……」

「私だよ?わ・た・し!」

 

 だから、誰?


 必死に訴えてくるけれど見覚えなどない。

 おばさんはガックリと項垂れた。


「やっぱりこの姿だから分からないのかね?『ミートのパン屋の隣のカフェの主、噂好きのマール』とは私のことなんだけどね……」

「マールさん?貴女が?」


 私は首を捻った。

 私の知るマールさんはこの人じゃない。

 まさか隠れた姉妹?

 いやいや、マールさんは独り暮らしだ。姉妹がいたとか聞いたことなどない。


「外見は違うけどね。私は正真正銘マールだよ」

「でも……」

「私は知ってるんだよ。誰がミートを刺したのか、そして何故マックスが犯人にされたのかをね。だからマール()は殺されたんだよ」 


 それを聞いた私は勢いよく立ち上がった。

 ガタッと椅子が倒れお茶が溢れる。

 その音を聞いてドレスを選んでいたメイド達の動きが止まり私達を見た。


「シル様、どうかされました?」

「何でもないよ。私の入れたお茶が熱かっただけさ」


 自称マールさんを名乗るおばさんメイドがにこやかに答え私を再び椅子に座らせた。

 一方メイド達は「またですかー?」と何事もなかったかのようにドレス選びに戻ってしまう。  


「貴女、一体何者?」

「噂好きのマールだよ。前世がね(・・・・)

「信じられません」


 マールさんは死んだ。そしてそのお葬式を協会で行っている時に毒ガスを投げられ大勢の人が犠牲になったのだ。

 でもこの人はミートさんもマックスも知っている。

 どう言うこと?本当にこの人はマールさんなの?


「信じるも信じないもあんたの自由さ。でもこれだけは覚えておいで。私は二度目も同じ失敗はしない。少しでも私を信じるなら明日の晩、夜の鐘が鳴る時間に東の塔の最上階においで。私の知ってる事を教えてあげるよ」


 そう言うとおばさんメイドはコップを片付け私から離れて行った。

 私が呆然としているとドレスを選んでいたメイド達が近づいてきた。


「お待たせしました」

「シル様、どうかされましたか?」


 メイド達の問いかけに私は「何でもないです」と慌てて答えた。


「あ!床が濡れたままだわ!マシャールったら相変わらず抜けてるんだから!」

「マシャール?」


 私が聞くとメイド達の目の色が変わった。

 あ、これ話が長くなるやつだ。

 私はそう直感で感じた。

  

「マシャールとはさっきのメイドの名前ですわ!」

「どんくさいんですのよ。あのおばさん」


 それを皮切りにメイド達の口が止まらなくなっていく。

 止めようとしても止められない。

  

「でもあのおばさんクラリス様には気に入られているから不思議よね」

「あのおばさん色々知ってるからクラリス様が一目置いてるんですって」

「それどこ情報よ」

「そんなの私が知らないわよ。私も誰かが話してるのを聞いただけよ」

「でもさ、別にあのおばさんクラリス様の言いなりになっているわけじゃないわよね?」

「そうよ。あの人も一応選ばれた人だもの!」


 完全に置いてけぼりだった私だけど、『選ばれた人』と言う言葉は気になった。

 気になったけどどこで突っ込めばいいのかわからない。

 話が途切れないのだ。

 

「この間行われた陛下の誕生日の舞踏会からクラリス様がおかしいでしょ?」

「そう?元から少しおかしいでしょ」

「そうよね。何か被害妄想が激しいって言うか」

「不気味よね~」

「話してもいない本人の過去や好きな物を知ってるのよ。勿論男限定で!」

「クラウド様も最初は好意的だったけど、それが原因で段々冷たくなっていったものね」

「ええ。特に友人のアルフィード様が来られてからはクラリス様自身が目の色を変えてアタックしてたとか」

「アルフィード様は婚約者がいるって知った時のお顔は鬼の形相だったんでしょ?」

「お相手のお方に斬りかかったと私は耳にしたわよ」

「やだ、こわーい」


 いや、怖いのは貴女達の会話よ。

 人の事を無視してポンポン話していくその姿。

 一体これは何だというのだろう。

  

「城中の男達や貴族令嬢を味方にするだけでは飽きたらず、その上を望むとか恐ろしい限りよね」

「だから私達がいるんでしょ?」

「そうなんだけどね」 

「舞踏会の日からよね、クラウド様が町でもどこでも男女庶民貴族関係なく目に止まった人間を連れてくるようになったのは……」


 あ、やっと話が戻ってきたと私は胸を撫で下ろした。

 けれど私が蚊帳の外なのには変わらない。

 

「確か魅了魔法(チャーム)?でしたっけ?それに耐性があるのが条件とか……」

「そう!その能力を持っている人のみクラウド様直々にお声をかけてもらえるのよね!」

「私達は昔からいる組だから関係ないけどね」

「まあね」


 そう言ってメイド達は笑だした。

 とりあえず『選ばれた人』というのはクラウド様により魅了魔法(チャーム)に耐性があると判断されて捕まえて……じゃない、連れて来られた人のとこなんだ。

 

「スピティカルの国の者ならばこうして王宮のメイドに召し抱えていただけたり、兵士になったりするから皆悪く言わないわよね」

「ほんとほんと!」


 ここで話が完全に途切れた。

 私はチャンスとばかりに声を出す。

 

「じゃあ、私も貴女方と同じメイドになるならドレスは必要ないのでは?」


 するとメイド達は一斉に私の方を見て口を揃えて「それはあり得ません!」と答えた。

 

「シル様とシル様の殿方は婚前旅行前のジャイル国の人間ですよ?他国のお方をメイド等にするなどスピティカル国の恥にございます!」

「そうです!シル様はクラウド様の命により、クラリス様のお側に仕えるという重大な役目を負うのです!」

「その様な方を私達と同じ立場などあり得ませんわ!」

「は、はあ……」


 良くわからないけど、彼女達にとってはお客様を持て成すようなものなのだろうだろうけど……。


「今クラウド様には味方が一人でも多く必要にございます。他国の人とはいえ、どうかシル様のお力をお貸しくださいませ」 

「これはクラウド様だけでなく、スピティカル国の民全員のお願いにございます!」

「クラウド様の力となり、クラリス様を『光の使者』様を目覚めさせてください!」


 迫るメイド達の圧力に私は力なく笑うしかなかった。

 そしてこれはもう断れるものじゃない。 


「できる限りのことは、します……」


 私がそう答えるとメイド達は「キャー!」と声をあげ、目が光った。

 怖いと思う前に服を脱がされていく。


「あら……」 


 一人のメイドが私を見てメイド達は動きを止めた。

 今度は何?


「あらあら」

「まあ!」

「これはこれは」


 皆が声をあげていく。

 だから何?

 私が半泣きになっていると、他のメイドがニコニコしながら鏡を持ってきた。

 何で鏡なんているんだろうと思っていると、私が映し出される。

 何がしたいのか分からずとりあえず見てみると、首から鎖骨に数ヵ所と胸元に赤いアザが見えた。


「何……これ」


 思わず声を出すと、メイドが「印ですね」と答えをくれる。


「本当見事に印ですわね」

「これは他の殿方の目に触れさせる訳にはいきませんわ」

「そうですわね。シル様とあの殿方とはアツアツの恋人ですもの。このくらい(・・・・・)で驚いてはいけませんわ。そうでしょう?皆さん!」


 鏡を持ったメイドが声をあげると「はい!」と残りのメイド達が声を揃えて答えた。

 いや、驚いていいから。

 私が一番今驚いてるから寧ろ私の為に驚いて?

 そういう淡い期待は見事に潰され、結果的に首元からきっちりしたドレスを着せられた。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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